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 サッカーのある風景 04/02/18 (水) <前へ次へindexへ>

 スケジュール表と睨めっこ。


 文/西森彰
 とうとう、今日からワールドカップドイツ大会へ向けた長い予選が始まる。最初の対戦相手はフランス大会と同じオマーン、ゲンの良い相手ではある。あの時は小村徳男の挙げた1点を守りきって、アウェーながら勝ち点3を奪った。その後も快進撃を続けた日本は最終戦で圧倒的なゴールディファレンスを手にして、国立霞ヶ丘陸上競技場でオマーンと再戦。1−1のドローでブーイングを浴びながら、最終予選へと向かって行った・・・。

 その後の戦いについては、中倉編集長がアップし続けている過去のレポートに譲ることにする。



 さて、1次予選のスケジュール表を見直すと、今更ながら「どうにかならなかったのか」という思いを禁じえない。試合の開催日ではなく、対戦順である。ひとつの取りこぼしが命取りになるこの1次予選。今回のグループ内で最も力関係が近いのは、このオマーンである。プレッシャーのかかる相手とのホームゲームが、国内リーグのシーズンイン前に組まれているのだ。

 オマーンはサウジアラビア、クウェートなど湾岸7カ国が集まる定例大会・ガルフカップに参加し、12月から1月にかけて6試合消化している。日本も東アジア選手権の3試合を12月に行なった。ただその後でオフシーズンを挟んでいる。決して万全の状態ではない。そんな条件下で臨む今日のゲームが、どんな大会でも特別重要な初戦。日本に競り負けたショックを引きずり、ズルズルと得失点差を広げられていった7年前のオマーンの姿が浮かぶ。

 日本サッカー協会は、この1次予選のスケジュールについて、ポーズでも良いから、クレームをつけるなり、ゴネるなりしなかったのだろうか?



 これだけ小さなことに拘るのも、前回の最終予選で「嵌められた」トラウマなのかもしれない。グループBの試合開催日には、日本を徹底マークする韓国の図式が滲み出ていた。最終戦が1日ズレて行なわれ、日本対カザフスタンが土曜日、UAE対韓国が翌日の日曜日。「UAEと韓国には紳士協定を結べる余地があった」のは有名な話だが、実はそれよりも大きなカギが隠されていた。

【日本代表スケジュール】 【韓国代表スケジュール】
9/07  H  ウズベキスタン 9/06  H  カザフスタン
<1週抜け番> 9/12  H  ウズベキスタン
9/19  A  UAE <1週抜け番>
9/28  H  韓国 9/28  A  日本
10/04  A  カザフスタン 10/04  H  UAE
10/11  A  ウズベキスタン 10/11  A  カザフスタン
<1週抜け番> 10/18  A  ウズベキスタン
10/26  H  UAE <1週抜け番>
11/01  A  韓国 11/01  H  日本
11/08  H カザフスタン 11/09  A  UAE

 一目瞭然だろう。韓国は日本戦の前に必ず抜け番を確保して、直接対決に備えている。しかも国立開催の9月28日の試合前は体調を崩さぬよう、ホームゲームのみ2試合。日本は1週前にUAEとのアウェーゲームを行なっている(しかもこのアウェー戦に備えて直前合宿まで張った)。酷暑と長旅に襲われた日本にとって、この韓国とのゲームは実質的にアウェー戦だった。

 韓国は国立での日本戦の後、次のUAE戦もホームで戦った。前半4試合のスタートダッシュで勝負を賭ける。そして実際にそのプラン通り、2試合を残してフランス行きの切符を得ている。短期決戦では「勢い」が最も大事なことを知り尽くした設定。そしてきちんとそれを果たす遂行能力。残念ながら7年前の時点では、韓国との間にサッカー力で大差が開いていたと言わざるを得ない。



 上に挙げたのは短期戦での有利、不利だが、似たような例は長期戦でも見られる。ここではドイツ、イングランドというワールドカップ優勝国同士が同居した、日韓ワールドカップの欧州予選グループ9を挙げよう。

【ドイツ代表スケジュール】 【イングランド代表スケジュール】
9/02  H  ギリシャ
10/07  A  イングランド 10/07  H  ドイツ
10/11  A  フィンランド(連戦)
3/24  H  アルバニア 3/24  H  フィンランド
3/28  A  ギリシャ(連戦) 3/28  A  アルバニア(連戦)
6/02  A  フィンランド
 6/06  A  アルバニア(連戦) 6/06  A  ギリシャ
9/01  H  イングランド 9/01  A  ドイツ
9/05  H  アルバニア(連戦)
10/06  H  フィンランド 10/06  H  ギリシャ

 国内リーグの過密日程によって代表にスケジュールを空けられないイングランドの苦しさが、3回の連戦に見られる。また10月7日のロンドンでの直接対決は、ホームでギリシャを叩いた余勢を駆るドイツに対し、イングランドはプレッシャーのかかる初戦。先ほどの国立の直接対決同様、ホームチームに厳しい条件であることもご理解いただけるはずだ。

 対するドイツ代表はイングランド戦の1週前はブンデスリーガの開催を行なわず、ミニ合宿を行なって大一番に備えていた。しかもホームゲームを開催したのは公式戦3勝2分と負け知らずであり、イングランド代表を破ったこともあるミュンヘンのオリンピア・シュタディオンだった。皆さんが選べるならイングランドとドイツ、どちらのスケジュールで戦いたいですか?



 もちろんサッカーだから、最終的にモノを言うのはカレンダーのような紙っぺらではなく、ボールを扱うテクニックであり、戦術理解能力であり、勝負根性である。イングランドは、苦しい日程にも関わらず、ケガ人続出のドイツ、そしてディック・ヨル主審からプレゼントされたフリーキックに助けられ、1位抜けを果たした。7年前の日本も韓国には大差をつけられたもののグループ2位突破を経て、アジア第3代表の座を手に入れている。

 開催日時に不満を残すとは言え、マレーシア、イラクとテーマを持ったマッチメークを行ない、このオマーン戦に向けた直前の努力は評価できる。試合結果や内容の細部については、問い詰めたい箇所も残っている。しかし、大一番を控えたトレーニングマッチでは、タイ代表に負けたり、大学生のチームに苦戦したりすることもある。それに比べれば、今回はまだマシなほうだ。

 何より、対戦相手のオマーンから「ワールドカップ予選を突破したい」という気持ちが伝わってこない。直前の調整試合の相手に「一度やられた相手に倍返し」が基本姿勢になっている韓国をピックアップするのは非常識。本大会を前にぶっ壊されたフランスの例もあるし、0−5のスコアを鵜呑みにはできないが、この臨戦過程にはクエスチョンマークが残る。これがマチャラ監督の狙いなら、すでに1人の日本人を騙すのに成功しているが・・・。



 どうも、民放が謳うキャッチコピーにある「絶対に譲れない戦い」ではなさそうだ。いわゆる国を挙げての「サッカー力」の争いでなく、単純に「サッカーの上手い、下手」を競うだけなら事故はないだろう。プリントアウトしたスケジュール表との睨めっこを終わりにして、日本代表に良い意味での驚きを期待することにしよう。
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