topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 サッカーのある風景 04/05/20 (木) <前へ次へindexへ>

 滅多にない体験だった


 文/竹井義彦
 4月の末から、市大会が行われた。第31回横浜市春季少年サッカー大会だ。4月25日、29日、5月2日の3日間、7チームがリーグ戦をおこない、決勝トーナメントに進出する上位2チームが決まった。残念ながら駒林サッカークラブは3位ということで、決勝進出を逃してしまった。
 私たち駒林サッカークラブの4年生チームが幹事チームとしてグラウンドを提供、運営した今回の大会では、申し合わせにより今までとは違う大会になった。そのひとつが応援席の設置だった。

 ご存じのようにJリーグなど普通の試合は、ピッチ横にベンチがあり、観客は観客席で観戦することになる。ところが、小学校のグラウンドや公園などを利用する大会の場合、ベンチは設置できても観客席までは用意できない。ここで、一つの問題が生じる。ベンチ以外の場所でのコーチングである。

 通常であればお父さんやお母さんたちはベンチの近くにひとかたまりになって応援していることが多いのだが、中には、まったく別の場所に椅子をおいて観戦する人もいる。ただ、黙って試合を見ていれば問題はないのだが、自分の子どもに声援を送るのではなく、指示を送る場合がある。それもこれも親心からの行為なんだろうが、前回の大会では問題になったらしい。きっと目に余ることがあったのだろう。

 そんなことから、基本的にはベンチとは反対側に応援席を設けることになった。私たちが大会に使った駒林小学校はピッチ以外のスペースがほとんどなかったので、ベンチの後ろに応援席のスペースを設けることにして対処した。
 それだけでなく、サイドコーチ人数の徹底に関しても指摘があり、複数のコーチが同時にコーチングすることは禁止であることが確認された。おまけに配布された用紙には、審判への暴言に対する注意や、保護者のマナーについても言及されていた。ここまで細かなことを指示されることはいままでにないことだった。



 ベンチに関することだけでなく、子どもたちの用具などについても注意があった。
 選手の確認や用具のチェックは当たり前のことだが、ミサンガやネックレス、ストッキング止めなどについて、身体の外側に出るものの着用が禁止された。さすがにこれは初めてのことである。
 大会最初の試合の主審は私が務めたが、その際に、副審がストッキング止めが外に出ないように子どもたちきちんと指示してくれたので、大会を通じてこの注意に関する混乱はなかった。

 ただ、ミサンガをしている子どもたちは私たちのチームにもいて、試合前にテープを巻いて隠しているのを見ると、ちょっとここまでやる必要が本当にあるのかどうか、疑問には思ったことは確かだ。金属がついていて、転倒したときにそれで傷つかないようにという配慮からだろうが、金属物の確認だけでもよかったかもしれない。

 初めての注意事項は他にもある。ボールの空気圧に関しても「0.65〜0.75が標準であるが、審判の裁量によって決定」という一文があった。ルールでは空気圧は「海面の高さで0.6〜1.1気圧」と定められている。中学校の大会では、審判の方がボールプレッシャーゲージで空気圧を測っているのを見たことはあったが、小学生のジュニアの大会で測るのを見たことはない。私自身、審判をやる際に、ボールの確認をしてから試合を始めるものの、空気圧の0.6がどの程度の堅さなのか、実際に認識していたわけではなかった。

いい機会かもしれないということでゲージを購入して、家にあるボールの空気圧を測ってみた。0.7の空気圧のボールの硬さは想像以上だった。ヘディングしたらちょっと痛いだろう。試しにもっと空気圧を高くして硬さを確認したが、1.1の空気圧のボールを使ったら、私は絶対にヘディングしないだろう。それほど硬かった。

 さらに注意は続く。審判への注意やグラウンドの注意、そして最後にスポーツめがねを認める文章で注意事項の補足は終わっていた。
 審判の質の問題は相変わらず続いているようだ。いろいろなところで耳にする。前回も私たちは審判報告書を作成して、サインしてもらうようにしたのだが、今回も同じようにしてもらった。確かに、細かなことをいえばいろいろあったかもしれないが、著しく試合運営に影響を及ぼすことはなかったと思う。
 いったいどんな大会になるのか、実は開催前は少し不安だったのだが、実際に行ってみるとたいした混乱もなく終了することができた。私たちの予選リーグで闘った他のチームの協力があったからである。



 こんな大会だったが、試合でも初めての体験をすることになった。
 初日の一試合目は、無事に勝つことができた。ゴールキーパーの子はまったくといっていいほどボールを触ることもなく、ほぼ完勝だったと思う。その後の2試合目のことだ。その試合も立ち上がりから相手陣内に攻め込み、ほぼ試合を支配することができた。3・4年が戦う「LL」クラスの試合時間は前後半それぞれ15分だ。その試合時間30分間ほとんど攻めっぱなしだった。ゴールキーパーがボールに触ったのは3回だけ。それも、相手のゴールキーパーが蹴ったジャンボキックがこぼれてきたものを処理しただけ。ゴールキックもゼロ。

 そこまで攻めて、しかしシュートがゴールを割ることがなかった。枠に飛べばキーパーや相手ディフェンダーに当たり、ギリギリのコースのボールはゴールポストやゴールバーが綺麗に跳ね返してくれた。選手を交代して、さらに攻撃的に攻めた。が、攻めれば攻めるほどなぜか点が入らない。絶好のチャンスにボールは枠を外れ、ゴールキーパーの正面をつく。残り時間あとわずかというときにゴールをようやく割った。が、無情にもオフサイドの判定。

 ついに30分攻めっぱなしで無得点のまま試合は終了。痛い引き分けとなった。その後、この試合の後遺症が尾を引くような形で大会は終了。私たちのチームが負けたのは1試合だけ。それも相手フォワードとゴールキーパーが交錯してこぼれたボールのクリアがオウンゴールとなって負けた試合であった。試合を圧倒的に支配しているのに点が獲れない。攻め込みすぎてスペースがなくなり点が獲れない。どこかで聞いたようなジレンマに陥ってしまった。



 サッカーに判定勝ちはない。ゴールの数を競うゲームだからだ。どうやって点を獲るのか。それをもっともっと工夫してできるようにしなければ、試合は支配するけれど点が獲れないチームになってしまう。

 第31回横浜市春季少年サッカー大会で私は滅多にない体験をすることができた。もしかすると、これがこのチームにとって大きな転機となるかもしれない。それほどの体験だったし、こんな体験はもう2度とないだろう。チームをどうやって一歩前進させるのか。来月、行われる区大会までにチームをもう一度作り直す必要があるかもしれない。初めての体験は、大きな課題を私にもたらした。どうやって解決するのか、じっくりと腰を据えて考えなければいけないようだ。
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送