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 サッカーのある風景 04/07/24 (金) <前へ次へindexへ>

 きっと糧になるその涙


 文/竹井義彦
 勝つことと、楽しくサッカーをすること。
 どうも少年サッカーが目指すべき対局の目標なのかもしれない。少年サッカーについて記述してある本などを読むと必ず出てくるのが、勝つためのサッカーを子どもたちに押しつけてはいけない、などという表現だ。もちろん、勝つことと楽しむことのバランスが、それこそ定規で測ったように取れればなんの問題もないのだろう。

 しかし、現実はそう簡単にはいかない。
 7月17日と19日、私たち駒林サッカークラブの4年生チームは横浜市港北区大会の決勝トーナメントに出場した。前回にもちょっと触れたが、この大会は勝つことを意識して試合に取り組んできた。もちろん、メンバー全員が試合に出られるように工夫しながら、予選リーグを戦い抜いてきた。が、さすがに決勝トーナメントを勝ち抜くためには、そうもいっていられない状況だった。

 17日の準決勝から出場した私たちのチームは、先制を許しながら後半に追いつき、延長戦を戦い抜いて、PK戦で決勝へと駒を進めた。19日の決勝では、押し込みながら得点を奪うことができず、逆にPK戦で負けてしまった。
 結果は準優勝。満足はしていないが納得のできる大会だったといえるかもしれない。勝ちきることはできなかったが、負けた試合は最後のPK戦負けだけだ。全試合を通じての得点は「25」、失点は「2」。ディフェンスはしっかりとしていたし、いろいろなパターンから点を獲ることができた。しかし、最後の最後で勝ちきれなかったのは、僅かなチャンスをものにすることができなかったからだろう。



 今回の区大会で、私は子どもたちへの指示を少し変えた。具体的にいうと「勝つ」という言葉を試合前に多く使うようになっていた。そんな中で子どもたちの記憶に残ったのは「コーチは君たちが勝つことしか考えていないよ」という言葉だったらしい。決勝戦の前に話をしたときに子どもたちが口にしていた。
「予選リーグの次の試合に負けたら決勝トーナメントに進める?」ということを子どもたちが聞いてきたときも「全部勝つから、余計なことは考えなくていいよ」といっていたほどだ。

 ハーフタイムの指示も変えた。
 今までだったら、相手チームとの関係もさることながら、力を出し切れていないときにはちょっと強めの口調でしっかりと戦うようにというような内容の指示を出すことが多かった。が、この大会から、勝っている試合では注意事項をきちんと強めに、それ以外の時には試合内容を誉めるようにした。もちろん勝つためのコーチングである。

 試合をしているのは子どもたちだ。点が獲れなかったりリードされているときに、一番不安なのは子どもたちのはず。だから、いいプレイをするために、ではなく、試合に勝つために私は指示の内容を変えた。おかしな話だが、勝つための指示の方が、内容はぐっとソフトになっている。しかし、効果は抜群だ。後半、得点を奪って勝った試合もあるし、リードされていたのに追いついた試合は2つもある。準決勝など、前半は緊張からかまったくボールが足に着かない状態だったが、後半きっちりと追いつくことができた。

 大会が終わった瞬間、私は次の練習のことを考えていた。秋の市大会、そして冬にある県大会を勝ち上がっていくためには、どんなことを課題にして、なにを学んでいかなければいけないのか。もちろん、区大会で対戦する相手は凌駕するぐらい力をつけるつもりで、練習していかなければ、勝ち抜いていくのは難しいはずだ。どこのチームだってこれからさらに練習詰んで、より強くなっているだろうから。
 でも、それでサッカーを楽しむことができるんだろうか?



 サドンデスまでもつれた決勝のPK戦。
 決着がついたあと、挨拶を終えて戻ってきた子どもたちの目には悔し涙があふれていた。それは、精一杯戦って、しかしなお勝つことができなかった悔し涙だった。
 優勝を目指した今回の大会で、子どもたちが得たものは、決して少なくないはずだ。そして、この悔し涙はきっと明日のための糧になるに違いない。その涙を見たとき、私は素直にそう思った。

 勝つこととサッカーを楽しむこと。確かに、両立させるのは難しいかもしれない。けれど、どっちつかずで臨むことが、もしかしたら一番いけないことなのかもしれない。
 今週末には招待試合がある。夏休み中には合宿はもちろん、いろいろな試合の予定が入っている。優勝を目指して戦う試合はしっかりと勝つことを意識して、そうでない試合は、ひとつひとつ目標を持って臨む。

 いまの私には、そういう形でしかバランスを取ることができないかもしれない。そんな活動を通じて子どもたちがサッカーをもっともっと大好きになってくれればいい。そう考えて、この夏は子どもたちと一緒に過ごそうと思う。


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