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 サッカーのある風景 04/08/21 (土) <前へ次へindexへ>

 その存在をどう考えればいいんだろう


 文/竹井義彦
 夏休みに入り、駒林サッカークラブ4年生チームの子どもたちは招待試合の後、合宿を経験し、お盆休みを挟んで、今週末からまた練習を再開することになっている。合宿は、ほぼ恒例となっている富士川のグラウンドでおこなわれるサッカー大会に泊まりがけで参加するものだ。以前は二泊三日の合宿だったが、今年は日程が変更になったらしく一泊ということになった。
 私はどうしてもはずせない用事があったために参加できず、今週末、久しぶりに子どもたちと会うことになる。

 今年の夏は、アジアカップに、ヨーロッパの強豪チームとのスペシャルマッチ、そしてオリンピックとサッカーの試合にいつにも増して多かった。
 アジアカップは、ご存じの通り劇的な勝利を繰り返し、そして優勝した。メダルを期待していたオリンピックだが、初戦敗戦のショックからか連敗を喫し、最終戦には勝ったものの予選敗退となってしまった。私は帰省していたこともあり、オリンピックの試合はまともに観ることができなかったが、その他の試合は可能な限り、テレビ観戦してきた。
 子どもたちの多くも、いろいろな試合をテレビで観戦したり、スタジアムで観戦したようだ。今週の土曜日には、みんなで三ツ沢へ行き、横浜FC vs 川崎フロンターレの試合を見に行くことになっている。

 スタジアムで試合を観戦するということは子どもたちにとって、いい経験になると思う。特に三ツ沢はピッチと観客席とが近いので、迫力あるプレイを目の当たりにすることができる。
 以前、横浜FCができたばかりの年、県内の競技場での試合をいろいろと観て回ったことがある。初戦こそ横浜国際総合競技場だったが、それ以外はあっちこっちの競技場での試合がほとんどだった。中には、観客席がまともにないところもあり、ピッチとは2mほどの距離のところにロープが張ってあり、そこから外が観客スペースになっているところもあった。
 ピッチとの近さは三ツ沢の比ではない。一緒についてきた次男が公文選手のコーナーキックをそれこそ目と鼻の先の距離で観て、そのボールの軌道の美しさに感動していたことがあった。間近で観るプレイは子どもに強烈な印象を与えてくれる。



 みんながみんなということではないが、多くの子がテレビを通して見たJリーガーや世界のトッププレイヤーの技を学ぼうとしている。
 もちろん、私も練習メニューを説明するときに、テレビで観た試合の得点シーンなどを取り上げることがある。
 7月最後の日曜日、パスを出した後そこで動作を止めるのではなく、別の選手たちがパスを回している間にバイタルエリアまで走り、最後にパスを受けてシュートする練習をやらせた。

 これは私自身が観た試合の得点シーンを参考にしている。
 この週、アジアカップのイラン戦とヨルダン戦、それにオリンピック代表の壮行試合があった。練習前に、テレビで試合を観たかどうかを子どもたちに聞いたところ、土曜日の決勝トーナメント初戦の川口のスーパーセーブのことを口々に話し始めた。
 が、私が参考にしたのは残念だが日本のフル代表のプレイでも、オリンピック代表のプレイでもなかった。
 ジェフと対戦したレアル・マドリードのグティのプレイがヒントになっている。マルキーニョスのFKで先制されたレアルだったが、グティがハーフウェイライン辺りでボールをバスすると、そのまま前線まで走りきりシュートしたプレイが参考になっている。

「パスを出したら、それでプレイが終わりじゃないんだよ。パスを出したら、動くことが大切なんだよ。それをこの練習で身につけよう」
 こう子どもたちに話して練習をさせた。もちろん、その前にレアル・マドリードの一点目のプレイを観た人はいるかな、と尋ねてからだ。



 こういう話をここですることが適当かどうかちょっと迷うところなんだが、実は子どもたちの参考になるプレイを、いまのフル代表の試合で観ることができないということに、私自身ちょっとした不安を覚えている。
 パスを出したら走ろう、とか、スペースへパスを出して受け手を走らせてあげよう、とか、ボールが動いたらいっしょに走ろう、といった実に基本的なプレイがほとんどといっていいほど、いまの日本代表には観られない。
 先日のキリンカップでは、パス&ムーブだったり、スペースの活用だったり、第三の動きやフリーランニングが数多く観られた。けれど、それはすべて対戦相手のアルゼンチンの選手のプレイだった。

 代表チームのプレイは、その国のサッカーの指標にもなりうると考えている私にしてみれば、あまりにもその存在からかけ離れているいまのフル代表というチームが、子どもたちや、その他大きな広がりを見せている裾野のプレイヤーたちにどんな影響を与えるのか、不安を覚えてしまうのだ。
 結果がすべてだから勝てばいいんだろうか。私は、フル代表はやはり日本が進むべきサッカーの方向性をきちんと示すべき存在だと思っているんだが、さて、どう考えたらいいんだろう。
 私にとって大きな夏休みの宿題になりそうだ。
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