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 サッカーのある風景 04/09/19 (日) <前へ次へindexへ>

 それにしても悩ましいのはオフサイド


 文/竹井義彦
 毎年といっていいだろう、夏になると四級審判の資格更新研修会がある。
 新たに改正された規則の説明や、間違いやすいポイントなどの講習があり、その後ペーパーテストをすることになっている。いつもなら、同じクラブのコーチたちと連れだって行くところだが、今年は研修会の案内がいつまで経っても来ない。

 今年から新しい試みということで、システムが少し変わったらしい。
 今まではそれぞれが所属している地区での研修ということになっていた。私が所属しているのは横浜一区で、いつも8月に研修がおこなわれていた。それが、今年から全県一斉に受け付けるということになった。申し込みも原則としてメールで、ということになっている。

 どうしてこういうことになったのか、実は定かではない。いろいろな噂が耳に入ってきたのだが、来年からは全国でどこでも自由に受けられることになり、今年はその準備期間というか、移行期間ということで全県規模ということになったらしい。あくまでも「らしい」なんだけどね。



 駒林サッカークラブの中だけではなく、たとえば中学校の試合などを見に行ったりすると、今年の研修はどうやらいつもと違うらしいという話題があるためか、今まで会話を交わしたことのない他の中学の先生や、審判をされている方と話をする機会が増え、いろいろと聞くことができた。どうやら都道府県によって審判資格取得に際しても差があるらしく、神奈川は比較的真面目にというよりは厳しい部類に入るようだ。お隣では、ペーパーテストはやっても体力検査はやらないらしいという話まで聞こえてきた。もちろん、真偽のほどは定かではない。念のため。

 どこでも話は今年の研修にはじまって、やがて審判の質へと自然と移っていく。いろいろな審判がいるが、やはりその質が如実に出るのが、オフサイドの判定ということになるだろうか。話題に事欠かないようだ。

 公式戦での出来事だが、試合を決した唯一の得点がオフサイドだったらしい。負けたチームのベンチはもちろん、その試合を運営していた本部もオフサイドだと指摘したが、その判定をした副審は最後まで、オフサイドではないと言い張ったとか。まさかとは思ったが、実際いろいろな人がいるということだろう。

 ハーフウェイラインから飛び出したのに、オフサイドを取られた話も聞いた。相手チームの選手よりも前にいたとしても、この場合オフサイドラインはハーフウェイラインであって、相手の選手の後方より二人目の位置ではない。なのに、ボールに合わせて飛びだした瞬間、旗が上がったということもあったらしい。

 微妙な判定ならまだしも、あきらかにオフサイドラインよりも後ろから飛び出しているのに、パスを受けた位置だけで判断されることもよくある。あと、ドリブルで抜け出したのに、なにを勘違いしたのか旗を上げられたことがあるという話を聞いたこともある。



 今までいろいろなところで試合をしてきたが、そりゃないだろうと、思わずグラウンドを蹴り飛ばしたくなるような判定をされることもある。こういうとき、一番の被害者は当の選手である子どもたちということになる。

 だから、怪しい判定の時、私は必ず本人に聞くことにしている。その大半の場合、子どもたちはしっかりと位置を確認していて、タイミングをみて飛び出している。そういうときには、気にしなくていいよ、と子どもたちに声をかけるようにしている。間違いかもしれない判定で、前に出ることができなくなることが一番の問題だからだ。時には、あきらかなオフサイドでも狙いがあっての飛び出しのときには、試合中でも「OK、OK」と大声で誉めることすらある。

 私も経験があるんだが、副審がベンチの目の前でとんでもない判定をしたときには、さすがにベンチ全員が騒然となることがある。これはプレッシャーだ。もちろん自信を持って上げているときでも、応援しているチームの子がオフサイドを取られたら、ベンチはもちろん観戦している父母の席から大きな声が上がることがある。さすがにこういうときにはムッと来る。こっちはしっかり見ているんだぞ、といいたくなるが、まさか面と向かっていえないので、心の内で叫ぶようにしている。



 白状するが、副審をやっていて見逃したりすることがあるのは、やはりオフサイドだったりする。それは事実だ。以前にも書いたことがあると思うが、確かに判定は難しい。いや、難しいケースが多々ある。それも、プレイしている選手の年齢に比例して難しくなっていく。

 相手をオフサイドにかけるために、やたらに複雑な動きをすることがあるからだ。ディフェンスの底のいる選手が、細かく上下動するだけならいいのだが、これが二人、三人と複数のディフェンダーに動かれると、頭が混乱してくる。さらに、フォワードがわざとオフサイドポジションにいたり、ふっと戻ってみたりしていると、私の頭の混乱ぶりに拍車がかかる。そういうときに限って、いいボールが出てくるのだ。そのとき、オフサイドだったか、オフサイドではないのか、瞬間的に判断できなくなってしまう。ディフェンスは手を挙げながら「オフサイド〜」と叫ぶし、フォワードはゴール前に突っ込んでいくし。

 人間不思議なもので、旗を上げずにボールといっしょに走り出してしまうと、その途中で旗を上げることができにくくなってしまうのだ。そして、そのままプレイが続くと、私は心の中で叫ぶのである。「お願いだから、ゴールが決まらないでくれ」と。きちんと判定できなかったプレイの流れで点が入ってしまうと、それはそれでとても責任を感じてしまうからだ。

 キーパーがボールをセーブしてくれれば、私はホッと胸をなで下ろし、再びオフサイドラインをキープできるポジションに移動することになる。もし点が決まってしまうと、ともかく自分に言い訳をしながら、胸ポケットから得点カードを取り出し、記録をつけることになる。

 幸いなことに、オフサイドを見逃して点が入ったことはない。逆に、オフサイドの旗を上げて、得点を取り消したことは何度かある。もちろん、自信を持って旗を上げているのだが、これはこれでやはりなんとなく気まずい。点を獲られたと思っていた方は明らかにラッキーという顔をしているし、点を獲り消された方は、私に対して明らかに不審な目を向けるからだ。



 ともかく、オフサイドは実際にプレイしている選手にとって、とても悩ましい判定になることに違いない。もちろん審判にとっても、悩ましい存在だ。自信をもって笛を吹き、旗を上げられるように、もっともっと経験を積まなければいけないのかもしれない。そのためにも、四級審判の資格更新研修会を今年も受けなければ。
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