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 サッカーのある風景 04/10/29 (金) <前へ次へindexへ>

 チームには、ベクトルというやつが必要なのだ


 文/竹井義彦
 今年のレッズは、まさに無敵といっていいほどの強さを発揮している。シーズンでは快調に首位を走り、ナビスコカップには2年連続で決勝に進出。向かうところ敵なしといってもいいだろう。

 レッズといえば、真っ先に頭に浮かぶのがスタンドを埋め尽くす赤い人並みだ。ホームはもちろん、アウェイでもサポーターたちがスタンドを赤く染め、大きな声でピッチにいる選手に声援をおくる。「We are REDS」の掛け声が、大きな波となって選手たちに勇気を与えつづけている。わたしは真っ赤に染まったスタンドにいったことはないが、きっとあの中にいたら、その声援の力強さに鳥肌が立つほど感動するに違いない。

 いまのレッズの強さは、ピッチ上を走り回る選手たちのパフォーマンスだけが作り上げたものではないとわたしは思っている。もちろん、選手たちはすばらしい活躍をしている。そのプレイが勝利をたぐり寄せていることは確かだ。だが、それだけではないなにかが、ここまで勝利を重ねてきた大きな要因になっているとわたしは思っているのだ。

 それは、絶対に勝利を掴むんだ、優勝するんだという気持ちだ。ピッチに立つ選手はもちろんのこと、すべてのレッズの選手が心をひとつにしているはずだ。それに、スタッフやフロントの思いが重なっている。そして、サポーターやファンの熱烈な応援。レッズを取り巻く多くの人たちの、勝利や優勝を目指す気持ちが同じベクトルを形成しているのだ。これは決してバカにできない大きな力となる。

 もちろん、まだレッズの優勝が決まったわけではない。だが、この勢いを消すチームがあるとすれば、そのチームはレッズ以上の大きなベクトル、それもサポーターやファンはもちろん、ふだん熱心に応援はしていないけどテレビで観戦している人たちまでも巻き込むような、そんな大きなベクトルを形成し得たチームだけなんだと思う。

 たとえば去年完全制覇したマリノスのように。そう、優勝に一番近く、圧倒的に有利だったジュビロのベクトルを上回ったのが、去年のセカンドステージで直接対決を制して優勝したマリノスだった。このベクトルを創りあげていく仕事は、一選手にできるものではない。優勝への大きな流れを作り、気持ちをひとつにまとめ上げていくのは監督とベンチの大きな役目なのだ。



 なぜ、こんな話をするのかというと、今月おこなわれた第36回横浜国際チビッ子サッカー大会の予選で、わたしがコーチしている駒林サッカークラブが負けてしまったからである。負けてしまってこういうのはなんだが、決してチームとしての力が劣っていたわけではなかった。いや、チーム力だけ見れば勝てたはずの試合がほとんどだった。贔屓目はあるかもしれない。が、引き分けた試合のほとんどは先制していたし、中には逆転された試合を再度ひっくり返した試合もある。なのに、2敗4分という成績だった。1勝もできなかったのだ。これはショックだった。

 決勝に進むチームが決まったのは、わたしたちの最後の試合が終わってからという大混戦のリーグだった。それほど各チームの実力は拮抗していた。それでも勝ったチームと、わたしたちのチームのように勝てなかったチームがくっきり分かれてしまった。そこに「差」があったはずなのだ。負けたわたしは、頭を抱えながら真剣に考えた。そして、さんざん悩んだ末に辿り着いたひとつの答えがこの「ベクトル」というやつだった。

子どもたちはもちろん、ベンチいるコーチたちや応援に来ていたお父さん、お母さんがひとつにまとまって勝つことを信じていただろうか?
ただ勝つことだけを願っていただろうか?
わたしの心のどこかに、勝利を望む気持ちのどこかに、隙はなかっただろうか?
子どもたちがゴールを決めた瞬間、ベンチをあげて喜んだりせずに、当然だというような冷静なそぶりをしていなかっただろうか?
どこかに照れがあり、本気で熱くなっていなかったのではないだろうか?
子どもたちの勝利に対する想いを、しっかりと受け止めていなかったのではないだろうか?

 ベクトルをひとつにまとめ上げるのは、もちろんコーチの仕事である。このベンチワークができていなくて、今回の大会は負けてしまったのだ。いまわたしは真剣にそう確信している。



 小学4年生の子どもたちにとって最後の大きな大会が、来年早々におこなわれる県大会だ。この県大会ではきっちりと結果を出してあげたいと思っている。チームの今年の目標でもあったし、子どもたちの願いでもある。これからわたしは単にサッカーの技術だったり、戦術を教えていくだけでなく、この気持ちをひとつの方向へとまとめ上げることにも力を注ぐつもりだ。県大会までに、区大会や招待試合がいくつか予定されている。この期間、ちょっと今までとは違ったやり方で試合に臨みことになるだろう。どんな風に準備して試合に臨むのか、試合のときにはどうしたのか、といったことはいずれここに書くつもりでいる。

 ともかく、今日からはチームをひとつの方向にまとめ上げることの大切さを改めて考え直して、練習や試合に取り組むにしたい。勝つことを、試合に出る子どもたちだけではなく、ベンチにいる選手はもちろん、コーチや応援に来ているお父さん、お母さんみんなで願う。そんなベクトルをまとめ上げるのに、もしわたし自身が邪魔であれば、さっさと身を引いてもいいと真剣に考えているぐらいなのである。
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