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 サッカーのある風景 04/12/03 (金) <前へ次へindexへ>

 いまだからいえること


 文/竹井義彦
 謝らなければいけないことがある。
 相手は、きっとこの原稿を読むことはないだろう妻と子どもたちだ。

 私はただの飲んだくれで、実はほんの数年前まで週末はいつも二日酔い状態、昼前にのっそりと起きると、家族サービスなんぞどこ吹く風で、仕事をするふりをしたり、だらだらとテレビを見て時間を潰したりして、日が暮れるとまた飲み始めるという、不届き千万な生活をしていたのである。

 いまの家に引っ越してきたとき、長男は同級生のお母さんの勧めもあって駒林サッカークラブに入った。が、私は飲んだくれのままで、試合に出かける長男を目覚まし役よろしくたたき起こすと、そのまま布団に戻って二度寝をしていたのである。当時勤めていた会社が、どちらかというとかなり柔らかい業種の会社で、午後出社して、帰宅するのは夜中という生活が続いていたせいでもあるが、はっきりいって最低の夫だったろうし、最低の父親であったことは確かだ。



 そんな生活が一変したのは、1999年のことである。その年、横浜FCが誕生した。そう、きっかけはサッカーであった。しかも横浜 FCである。合併反対の署名もしたし、フリューゲルス再建基金にもお金を振り込んだ私は、横浜FCができるとソシオとなり、この年、県内あっちこっちの試合会場まで駆けつけ、ほぼすべてのホームゲームを見るようになっていた。実は、息子がサッカークラブに入ったというのに、練習を見学することはおろか、試合の応援などにも見向きもしなかったのだが、横浜FCの試合を見に行くようになって、すべてが変わってしまったのだった。

 ひとつのチームを追いかけて試合を見に行くようになって、それまでのサッカー感とはまったく違う感情を抱くようになった私は、練習着を買うと、子どもの練習に付き合うようになっていた。もっとも、練習にちょっと付き合ったからといって、少年サッカーのなんたるかなどは解ろうはずもない。が、クラブの事情で長男が6年生になったとき、そのチームの練習を見るお父さんコーチがいなくなり、出しゃばりの私が練習の面倒を見るようになった。次男も遅れて同じクラブに入っていて、この年から自分の子どもがいるチームのコーチをすることになったのである。

 いま、私は自分の子どもがいないのに、コーチとして練習メニューを考え、チーム作りをしている。まったくのボランティアだが、子どもたちがお世話になった恩返しだと思っている。お陰で私の子どもたちは、頭の中身は遺伝だから仕方がないとしても、人としては、まぁ、まともに育ってくれていると思っている。高校に入った長男は、サッカー部ではなくラグビー部に入部したが、毎日ボールを抱えて走っているらしい。次男は、中学3年生。すでにサッカー部は引退している。高校に入ったらどんな部活を選択するのか、よくわからないが、ともかくまっとうな少年ではある。

 どこまでがサッカークラブに入っていたお陰かわからないが、人と挨拶ができたりと、そういった基本的な部分はやはり体育会系に所属していたからだろうと、私は思っている。私が中学や高校のときには、共通の話題などまったくなく、親父はただただ煙たい存在でしかなかったが、自分の子どもたちとは、それなりに会話が成り立っているので、その辺りも、私が土日いっしょにサッカーをやったことが少しは役に立っているんだろうと思っている。



 ただ、こうしてコーチを何年もやっていると、子どもとのつき合い方といったものが身に付き、当然サッカーに対するさまざまな知識も得ることができ、なによりもいろいろな人たちといい意味でのつき合いができるようになっていることに気がつく。

 子どもたちのコーチをしていて、ときおりふっと自分の子どもに教えていたときのことを考えることがある。その時はまだ本当に新米のコーチで、子どもたちとの接し方はおろか、サッカーのこともまるで解っちゃいなかったのだ。そんなことに思い至る。もちろん、いまならなんだって解っているというわけではない。いまでも日々いろいろなことに気づかされているし、反省している。だが、その当時に比べれば、ちょっぴりだとは思うけど進歩はしているはずだ。

 特に、サッカーに対する考え方は、格段の差があるだろう。だからこそなんだが、もっともっと早く自分の子どもと一緒にサッカーをやればよかったと、実は後悔しているのである。父親として子どもたちと同じ時間を共有することの大切さが、いまならよく判るからこそ、謝りたいのだ。私自身の言葉でサッカー教えてやることができたら、きっと子どもたちも、サッカーをもっと楽しんでくれただろうな、と考えてしまうのだ。

 もし、あなたに子どもがいて、そしていっしょに過ごす時間を持つことができるなら、ボールを蹴りあってみてはどうだろう。いきなりサッカークラブに入れとはいわない。ただ親子でボールを蹴りあうだけでもいい。きっと互いの思いをボールに込めてパスを出し合うことができるはずだ。

 どこかのチームにあなたの子どもが入るということになれば、ぜひ、お父さんも一緒に練習についていってあげて欲しい。子どもといっしょにクラブに参加すれば、あっという間にサッカーのことを学ぶことができる。しかも、子どもといっしょに楽しい時間を過ごすことができるだけでなく、子どものことをより深く理解することができるようになる。

 そして、自分自身が実は違う一面を持っているんだということを発見することもできるに違いない。ただの飲んだくれだった私が、休日になると、早朝にもかかわらず起き出してサッカーのために出かけるようになるぐらいだから。
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