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 サッカーのある風景 05/07/30 (金) <前へ次へindexへ>

 サッカーしねま! 第3回 「暗黒街の二人」


 文/砂畑 恵
 近頃の劇場公開といえばハリウッド映画が花盛りで、 CGを使ったダイナミックな映像を臨場感溢れる音響設備の整ったシアターで見ることはそれはそれで興奮するわけですが、心の機微を丹念に捉えた秀作の多いフランス映画やイタリア映画と出逢う機会が少なくなっているという点では、とても残念に思っています。

 そこで今回は1970年代にフィルム・ノアール(暗黒街もの)で一斉を風靡したフランス映画の「暗黒街の二人」をご紹介したいと思います。DVD化はしているようですが、もしかすると古くからあるレンタルショップでも、この作品と巡り逢うことはなかなかないかもしれません。どちらかというとBS放送などの名画放映の方がチャンスはあるかもっていった感じでしょうか。

 主演はフランス映画界の重鎮とも言えるジャン・ギャバンと当代きっての2枚目スターであるアラン・ドロン。この2人とっては「地下室のメロディー」(個人的にお勧めです)、「シシリアン」に続き、3度目の共演作です。

 この作品が遺作となったジャン・ギャバンですが、「望郷」のペペルモコ役が有名で、この人に渋みのある臈長けたギャング役をやらせたら出色です。またナチスを真っ向から批判したドイツ人女優、マレーネ・デートリッヒとの恋は有名な話でもあります。ちょっと余談になりますが、「ペペルモコ」を検索してみたらレストランや靴店が多く、更に枚方フットボールクラブのHPにまで辿り付いたのはちょっと驚きでした。

 ところでもう一方の主役、アラン・ドロンを一躍トップスターに押し上げたのは、やはり「太陽がいっぱい」でしょう。その2枚目たるや衝撃的です。ちなみにその映画をテレビで見た早熟な小学生だった私は、一挙に目がハートになりました(笑)。近年、「リプリー」というタトルでリメイクされましたが、まったく別の作品と思って楽しんで欲しいというのが、正直な気持ち。アラン・ドロンは日本でダーバンという服飾メーカーCMにも出演し、「レッドサン」では三船敏郎とも競演するなど人気を博しました。美形が先行したところもありますが、40歳前後の作品(例えば「ブーメランのように」など)になると年を重ねた分、役に深みが出ているように思います。

 そう言えば、現在、フランスの人気俳優であり「グリーンカード」にも出演しているジェラール・ドパルデューがちょい役で出ていました。

 さて、この2人の共演作である先の2本はギャングの登場や鮮やかな手口の犯行といったフィルム・ノアールの本道をいくものですが、この「暗黒街の二人」は少し異色作で、投獄も経験しているジョバンニ監督がフランス政府へ問題提起した作品でもあります。

【ストーリー】
 銀行強盗の罪により12年の刑に服していたジーノ(アラン・ドロン)は、保護司ジェルマン(ジャン・ギャバン)の尽力もあって仮釈放となった。出所を待っていた優しい妻と過ごす穏やかな時間にジーノは幸せを見出すが、自身が起こした自動車事故で妻はこの世を去ってしまう。自らを責め自棄を起こしそうになりながらも、ジェルマンやその家族の暖かい助けもあり、運命と抗うジーノ。新天地に居を移し、小さな印刷所で真面目に働くジーノに再び幸せが舞い込むかにみえたが、かつてジーノの事件を手掛けた警部が居住地に赴任してきたことから、ジーノの人生の歯車は思わぬ方向に回り始めていく・・・。

 前科者であるジーノに対し、ジェルマン家の人々は家族同様に付き合います。感情の起伏の激しい彼が身を委ねられるささやかなコミュニティー。ジェルマンの子供達と恋人を伴って出掛けたピクニックで、ボールと戯れるジーノにとってのサッカーのある風景は、心の安住を象徴していました。

 人間とは時に愚かしい行動を取ります。人が許されざる罪を犯してしまった時、私たちはどのように向き合えばいいのでしょうか。もし自分がその被害者になったとしたならば、このラストシーンは当然の報いと受け止めるに違いないと感じつつ、私の目からジーノを哀れむ涙が止めどなく流れました。皆さんにもこの映画を観て頂き、ジーノの罪と罰に付いて心に問い掛けて欲しいと思います。


「暗黒街の二人」(1973年フランス/イタリア合作)
原題 Deux hommes dans la ville
監督 ジョゼ・ジョバンニ(原作・脚本も同じ)
キャスト ジャン・ギャバン、アラン・ドロン
時間 100分
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