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 サッカーのある風景 05/11/01 (火) <前へ次へindexへ>

 サッカーしねま! 第6回 「パトリオットゲーム」


 文/文/砂畑 恵
 98年W杯フランス大会の折、私は幸運にもチケット騒動を間逃れ、現地観戦をすることが出来ました。利用した観戦ツアーの旅程はフランスへの直行ではなく、行きも帰りもイギリスのヒースロー空港を経由するものでした。乗り継ぎ便の関係上、ヒースロー空港でわりと待ち時間があったと記憶していますが、空港内での一時解散の際、添乗員から「搭乗口はギリギリまで判りませんので、みなさんも搭乗案内のボードや放送に注意を払って下さい」と申し渡されました。日本であれば何時までに○○搭乗ゲートに集合というのが一般的です。しかしイギリスでは当時、IRAとの包括的和平合意に至っていたとはいえ、テロに対する警戒から、イギリスの空港は直前まで搭乗ゲート明かさないのだということを、添乗員の方は教えて下さいました。

 ところで話は突然、飛びますが、そのイギリス出身の有名な映画監督と言いますとアルフレッド・ヒチコックがいます。いずれ彼の作品についてお話しする機会を持ちたいと思いますが、この監督はいわゆる「巻き込まれ型」という手法を使った、つまり主人公がこれから起こる事件の被害者や犯人と偶然に乗り物などで知り合ってしまったとか、たまたま犯行現場に居合わせてしまい、否応なしに事件に巻き込まれて犯人を追うはめになるというパターンを最も得意とし、サスペンス映画を一大ジャンルに仕立てた巨匠です。

 ヒチコック監督はイギリスから後にハリウッドへと活躍の舞台を移し、そこでも様々な作品を世に送り出すわけですが、現在のハリウッド映画となれば、アメリカの先端の軍事機器や戦略を絡めたスペクタクルな社会派サスペンスへと変貌を遂げます。しかし王道と言うべき「巻き込まれ型」という作風は健在で、今回ご紹介する「パトリオットゲーム」の主人公・ジャック・ライアンもまた事件に翻弄されていきます。

 さて「パトリオットゲーム」の原作者はトム・クランシーで、先ほど出てきたジャック・ライアンが登場する作品はシリーズ本となっており、今作品はその中で映画化された3本の内の第2弾であります。1作目の「レッドオクトーバーを追え」では主人公のジャックをアレックス・ボールドウィンが務めてましたが、この作品からハリソン・フォードが演じています。尚、3作目は「今そこにある危機」。個人的にはショーン・コネリーの渋さが光る「レッドオクトーバーを追え」がお勧めで、併せてご鑑賞下さいませませ。

【ストーリー】
 CIAを辞職し、海軍学校の教官となったジャック・ライアン(ハリソン・フォード)は、眼科医の妻・キャシー(アン・アーチャー)と一人娘のサリー(ソーラ・バーチ)を同伴し、仕事も兼ねた休暇旅行のためにロンドンを訪れる。イギリス海軍大学での仕事を終えたジャックは、妻子の待つバッキンガム宮殿近くで、武装したIRA過激派に襲われる車と遭遇。車に乗っていたのはイギリス皇太后の従弟・ホームズ卿で、ジャックは持ち前の正義感からテロリストと立ち向かう。ホームズ卿は無事救出され、犯人のショーン・ミラー(ショーン・ビーン)も逮捕に至ったが、ジャックは銃撃戦となった際に一人の若きテロリストを射殺してしまう。そしてその相手がショーンの弟だったことから、ジャックはショーンにとって遺恨の対象となっていく…


 アイルランドは長閑な国ではありますが、イギリス領である北アイルランドでは宗教と民族問題の入り交じった紛争の火種を抱えていした。「マスター・キートン」という漫画でも、イギリスの特殊空挺任務部隊(SAS)とIRAの抗争について描かれているチャプターがあります。特に武装闘争をするIRAに対し、イギリス政府がSASなどの軍隊を駐留させたベルファストではテロとそれに対する報復が横行し、多数の人命が失われています。

 そのベルファストがこの映画に登場するサッカーの風景に関係しています。空き地では子供達がボールを蹴って遊んでおり、その向いの建物にはIRAのアジトでは時限爆弾を製造しながらサッカーを語らう人々いる。

 前にロンドンに赴任したアメリカ人サラリーマンを主人公とした「ウィークエンド・ラブという映画を見たとき、何故か公園でソフトボール興じる場面があり、アメリカ人の話とはいえ、ちょっとイギリスの日常からは遠いような違和感を覚えたことがあります。やはりヨーロッパを色濃くの演出するにはサッカーは欠かせないとオーストラリア人のフィリップ・ノリス監督は考えたのかもしれませんね。

 この作品が出来た頃のイギリス事情は、映画のストーリーようにIRAから内部分裂した過激派グループによるテロが起きていた時期と微妙に重なり、94年に停戦宣言を交わしたにも拘らず遅々として進まない和平への道は頓挫するのではと危ぶまれました。しかし01年のアメリカ同時多発テロにより、アメリカ国内はもとより、IRAを支持していたアイルランド系アメリカ人もテロに対する見方が非常に厳しくなり、その年の10月ついにIRAは武装解除を始めることを表明します。しかし今年の7月、新たな火の粉がロンドンを襲う事になってしまいました。

 テロに反対の気持ちはもちろんありますが、民族紛争の当事者である一方が悪で、もう一方を善とすることに、正直なところ私は困惑します。なぜならどちらが正しいのではなく、世界中で起こっている紛争は報復に次ぐ報復で、血で血を洗うといったことを繰り返す負の連鎖であって、誰にとっても幸せではありません。いつか私達人類が強い意志でそれを断ち切る日が来ることを信じたいものです。

「パトリオットゲーム」(1992年・アメリカ作品)
原題: PATRIOT GAMES
監督: フィリップ・ノイス
出演: ハリソン・フォード、アン・アーチャー
パトリック・バージン、リチャード・ハリス
時間: 117分
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