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 福岡通信 03/08/01 (金) <前へ次へindexへ>

 目指せ未来のJリーガー


 文/中倉一志
 少々長かった今年の梅雨もようやく終わりを告げた。じっとしているだけで火傷してしまいそうな強い日差しと、朝から鳴り響く蝉の声。福岡に本格的な夏が訪れた。意外に思われるかもしれないが、この福岡の夏は北国育ちの私のお気に入り。暑さに強いわけではないのだが、強い日差しの中で流す汗が学生時代に打ち込んだテニスの夏合宿を思い出させてくれるからだ。やはりスポーツは燦燦と降り注ぐ太陽の光の下でやるのが最高だ。

 さて、そんな中、地下鉄とバスを乗り継いで今津運動公園までやって来た。もちろん目的はサッカーの取材。この日は「J-COM Broadband杯 第2回ジュニア・サッカー大会」が行われる日。未来のJリーガーたちのプレーが見たくて朝早くから家を飛び出した。参加するのは福岡市内の小学生年代のトレセンの選手たち。中央区と城南区が1チームずつ、その他の区は2チームずつ選抜チームを編成し、合計12チームで優勝を争う。

 大会期間は2日間。初日に3チームずつ4グループの予選リーグを行い、2日目に決勝トーナメントを実施して優勝チームを決める。決勝トーナメントに進出するのは各グループの1位。2位以下は同順位同士でトーナメント戦を行って順位を決定する。なお、試合は20分ハーフで行われる。タイトルをかけて競い合うことが一番の目的だが、試合の中で多くの経験を積めるよう、どのチームも2日間で4試合ずつ戦えるように工夫されている。

 試合開始前、主催者であるJ-COM Broadband 福岡の平田誠一マネージャーにお話を伺った。「福岡という地域を中心に活動させてもらっているので、地域に還元できるもの、子供たちに何か貢献できるものということで、昨年、福岡市サッカー協会さんに相談しました。スポーツへの夢を持ってもらうことでスポーツ文化も発展するでしょうし、子供たちの成長をサポート出来るということで開催させてもらっています」。タイトルのかかった公式大会が少ないこの年代の子供たちにとって何よりのプレゼントだ。



 試合のほうはさすがに選抜チームということもあって、個々のレベルは非常に高い。個人の技術を育成することを第一義的にしている年代であるため、目を見張るような組織力を兼ね備えているわけではないが、それでも予選リーグを勝ち抜くチームになると組織的にもまとまっている。個人を生かそうとすれば組織力が必要になるのは当然。子供たちは個人技を伸ばしていく中で自然と一定レベルの組織力を身に着けていっているようだ。

 さて、初日の予選リーグをトップで通過したのは、第1回大会優勝チームの東区選抜のほか、早良区(さわらく)選抜、城南トレセン、西区Aの4チーム。どのチームも個人技と組織力をかね合わせたチームだ。中でも目を引いたのが東区選抜。選抜チームにありながら互いのフォローの意識は他のチームの1枚も、2枚も上を行っている。そしてもう1チームが早良区選抜。一見して小柄な子供が多いが、労をいとわず走り回る姿に好感が持てた。

 試合の内容にも触れておこう。まずは、惜しくも準決勝で敗れた城南トレセンと早良区選抜の3位決定戦。試合は開始3分に城南トレセンが早々とゴールを上げてリードを奪う。FKに合わせてDFの裏側に抜け出した選手が決めるという見事なゴールだった。しかし、試合の主導権は早良区選抜が握る。予選リーグ同様、汗かきプレーをいとわないイレブンは、ピッチの上を走り回ってルーズボールを拾い、城南トレセンをハーフコートに押し込んだ。

 早良区選抜の同点ゴールは14分。さらに17分には豪快なミドルシュートを決めて逆転に成功する。そして後半の3分、ロングレンジのFKを直接決めてリードを2点に広げた。だが、ここから城南トレセンが反撃を開始。ボールサイドに人数をかけてくる早良区選抜に対し、左右に大きくボールを動かしてプレスを交わして攻撃に転じた。今度は城南トレセンが攻め込むシーンが目立ち始める。しかし後半13分、早良区選抜がゴール前でルーズになったボールを押し込んで4点目をゲット。見事3位の座を獲得した。



 さて、決勝戦に駒を進めたのは、予選リーグを通して安定した戦いぶりを披露してきた東区選抜と、こちらも個人技、組織力を兼ね備えた西区A。予選リーグの戦い方から見て順当な対戦となった。先制点は西区A。前半の3分に、右からのCKを直接ゴールに叩き込むという見事なゴールだった。しかし個人技なら、「うちは個人のスキルというか、能力のところを重視してゲームをさせている」(小松監督)という東区も負けてはいない。先制ゴールから1分後、こちらは直接FKでゴールネットを揺さぶった。

 さすがは決勝戦。高い技術と集中を切らさない緊迫した中で一進一退の攻防が繰り広げられる。互いに相手に思うようにプレーさせず、しかし、一瞬の隙をついてチャンスを作る。どちらかというと、やや押しているのは西区Aか。「相手が触る前にボールに触ればゲームはやられないよ」という中嶋監督の指示通り、素早い出足でボールを奪っていく。しかし2点目は東区選抜。時間は14分、押されながらもCKのチャンスを生かして貴重な勝ち越しゴールを奪った。

「ゴール前で勝負していないよ」とコーチに指摘されてピッチに出る西区A。「もう少し丁寧にやろう。東区選抜のみんななら出来るはず。丁寧にやれば勝てる」。そう声をかけるのは小松監督。勝負は次の1点、前半戦にも増してピッチは緊張感に包まれた。そして後半3分、東区選抜が左サイドのドリブル突破からビッグチャンスを演出すると、そこからのクロスボールをゴール前から押し込んで、事実上の決勝ゴールを挙げることに成功した。さらに17分、東区選抜は4点目を決めて大会2連覇に花を添えた。

「よくぞここまで子供たちがやってくれたと思う。予選では歯車があわない部分もあったが、2日目にして、子供たちのコミュニケーションが出来て、互いの連携に進歩があった。個人技と進歩した部分が噛みあったことで、いい結果が出たかなと思う」と小松監督は大会を振り返ってくれた。それにしても東区は大会を通して優勝にふさわしい戦いぶりを見せた。攻めあがる味方には必ず1人がフォローについて、突破できないと見るやフォローの選手にボールを預けて二次攻撃を仕掛ける。この分厚い攻撃が大会を制した最大の要因だった。



 炎天下の中で2日間戦った子供たち。そのボールを追いかける真剣なまなざしと、技術レベルの高さは私を引き込んだ。おかげで両手両足は真っ赤に晴れ上がってヒリヒリしているが、そんな状況になっていることすら気づかなかった。どんなカテゴリーであれ、純粋な気持ちで戦う真剣勝負は人の心を夢中にさせるもの。そんなことを改めて感じさせられた2日間だった。取材でありながら、面白く、楽しい2日間であった。

 子供たちにとっても、ピッチの上での4試合の真剣勝負は貴重な経験になったはずだ。中には、残念ながら大敗を喫してしまったチームもあったが、それも貴重な経験のうち。勝たなければ分からないこともあれば、負けたからこそ分かることもある。喜びや、悔しさを糧にして、また夢に向かってチャレンジしていって欲しい。そして、何年か後に博多の森でプレーする姿を見せてもらいたい。その時は真っ先に声をかけよう。

 ところで、東区選抜の優勝が決まった瞬間、子供たちは満面の笑みを浮かべ、口々に「やった!焼肉、焼肉だー!!」と叫びながら大騒ぎ。どうやら、優勝のご褒美は焼肉パーティだったようだ。そして、優勝の感想を尋ねるJ-COMのカメラの前で喜びを爆発させた後、再び「焼肉!、焼肉!」とおおはしゃぎ。誰も「優勝したぞ!」と騒がないのが、なんとも子供らしい。大人顔負けのプレーと、その無邪気な素顔のギャップに顔を緩めながら、今津運動公園を後にした。
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