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 福岡通信 03/09/08 (月) <前へ次へindexへ>

 鮮やかなVゴール。福教大が2度目の天皇杯へ。


 文/中倉一志
 最大にして最古の大会、天皇杯。「元旦の国立」はサッカーを愛する者ならば誰でもがあこがれる舞台だ。その福岡県代表を決定する「第7回福岡県サッカー選手権」が、6月7日から8月31日の日程で行われた。参加チームは前回大会ベスト4に加え、平成14年度の成績をもとに、kyuリーグ上位1チーム、九州大学リーグ上位4チーム、高校推薦2チーム、クラブ推薦1チーム、社会人推薦1チームの合計13チーム。一発勝負のトーナメント戦で全国への道を争った。

 1996年度に天皇杯が完全オープン化されて以来、福岡県の代表は福岡大学(以下、福大)5回、九州産業大学(以下、九産大)1回、福岡教育大学(以下、福教大)1回と全て大学勢が独占してきた。そして今年もその勢力図は変わらない。決勝戦に駒を進めてきたのは前回大会優勝の福教大と、2年ぶりの出場を目指す福大の大学勢。ともに九州大学サッカー界を牽引する両雄の戦いとなった。

 昨年、決勝戦で九産大を破って天皇杯初出場を果たした福教大は、2回戦で北筑高校、3回戦では東福岡高校を下しての決勝戦進出。昨年、1年生ながら九州大学リーグで得点王を獲得した木下(きした)、1年生FWの中島、同じく1年生のMF神崎と若い力が攻撃の中心。今年の春の九州大学サッカー選手権大会準決勝で敗れた福大に雪辱を期す。やや下がった位置からスペースへ飛び出す木下と、軽快な動きを見せる中島の2トップで福大DFに挑む。

 対する福大は、北九州ニューウェーブ、九産大、第一経済大を破っての決勝戦進出。今年の総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントで3位に入賞しているように、その実力は全国レベル。九州の大学サッカー界では1つ抜けている存在と言える。Jリーグ特別指定選手のFW田代(大分トリニータ)、GK杉山をユニバーシアードのため欠いているが選手層は厚い。九州大学サッカー界を牽引し続ける福大にとって、2年連続で福岡県代表の座を譲ることは出来ない注文だ。



 まるで真夏のような暑さと強い日差しの中、福教大のキックオフで試合が始まった。試合開始早々からペースを握ったのは福教大。コンパクトなゾーンを敷いて中盤を支配すると、軽快なリズムでパスをつないでゲームを組み立てる。攻撃の中心は右サイド。1年生MF神崎が前評判通りの活躍を見せ、その横をSBの西村がオーバーラップしていく。前線では木下が巧みなポジショニングとスペースへの飛び出しで福大DF陣を翻弄している。

 対する福大はボランチ川田のボール捌きから両サイドを使いたいところだが、福教大の鋭い出足の前に川田を封じられてゲームが作れない。少ないチャンスを攻守の切り替えの速さでものにしようと試みるが、どうしてもボールの動く範囲が狭くなり福教大DFに跳ね返される展開が続く。守っても、福教大の2トップを捕まえきれないままだ。たまりかねた乾監督(福大)がベンチを飛び出して大声で檄を飛ばすシーンが目立つ。

 最初の決定機は13分、福教大に生まれる。直接FKのチャンスから右へ展開、走りこんできた神崎がクロスボールを折り返す。待っていたのは木下。巧みにDFを振り切ってヘディングシュートを放つ。GKの逆を突いたシュートはボールひとつ分だけポストの右へ外れたが、福大を慌てさせるには十分なシーンだった。そして17分、中盤でボールを受けた中島が挟み込んできた2人の間を巧みにすり抜けて右足を一閃。ボールがゴールマウス左隅に吸い込まれた。

 しかし、30分を過ぎたあたりから試合の流れが変わり始めた。厳しい暑さが福教大から運動量を奪ったのだ。中盤での自由を得て一気に反撃に出る福大。32分にFW高橋が決定的なシュートを放ったのを皮切りに、次々と決定機を演出していく。しかし、高橋が放ったシュートはどれもわずかにゴールに嫌われ、そして福教大GK真子がスーパーセーブを連発。福大は後一歩のところでゴールを奪えない。結局1−0の福教大リードのまま試合はハーフタイムを迎えた。



「まだ戦いきっていない。思い存分攻撃に出ろ」。乾監督は、そう言って選手たちをピッチに送り出した。狙いは両サイドをワイドに使った攻撃。そして、福大イレブンは狙い通りに試合を組み立て、流れを自分たちに引き寄せた。福大のサイド攻撃の前にDFラインがルーズになっていく福教大。福大は決定機の山を築いていく。ゴールが生まれるのは時間の問題かと思われた。しかし、そんな展開の中、福教大GK真子が孤軍奮闘。前半同様、スーパーセーブを連発してしてゴールマウスを守る。

 福大が攻めあぐねていたわけではない。GK真子が素晴らしすぎた。それでも42分、福大の衛藤が起死回生の同点ゴールを奪うと、一気呵成に福教大に襲い掛かる。「1点取れば一気に変わる」(乾監督)。その言葉通り、ゲームの流れは完全に福大が掌握した。そして89分、途中出場の白木がシュートを放つ。決勝ゴール、誰もがそう思った。しかし次の瞬間、真子の両手がボールをゴールマウスの外へはじき出した。またしてもゴールを阻まれた福大。試合は延長戦へともつれ込んだ。

 延長戦前の5分間のインターバル。両監督は選手に支持を与え、選手たちは疲労のたまりきった身体をマッサージでほぐしていく。20分間を限度とするVゴール方式の延長戦。流れは福大、後半のようにサイド攻撃を仕掛ければ確実にゴールチャンスは訪れる。しかし、福教大も真子の健闘は無駄にするわけにはいかない。時間がかかれば体力を消耗する。早い時間帯でのワンチャンスに全てをかける。

 そして、勝利の女神は福教大に微笑んだ。福大の何気ないクリアボールをカットした福教大は、9本のショートパスをつないで右サイドを突破。ラストパスは一度はカットされたが、それを拾った河村が再びゴール前へ。つめてきた神崎がシュートを空振りしたものの、その後ろに待ち構えていた近藤が右足インサイドで強振。「ドン!」という音とともに目にも留まらぬスピードでボールがゴールネットに突き刺さった。92分のことだった。



「時間をかけずに攻めろ。シュートまで時間をかけるな」。三本松監督(福教大)の指示通り、わずかなチャンスを見逃さず、ダイレクトパスを織り交ぜて右サイドを崩した見事な福教大の攻撃だった。福大にしてみれば悔やみきれない失点。後半、あれだけ福教大を追い詰めながら、この一連のプレーだけ何気なくボールを追ってしまった。しかし、猛暑の中で90分間戦ったあと。彼らがボールを見てしまったことを攻めることは出来ない。

 Vゴールを決めた途中出場の近藤のシュートも見事だった。インサイドで捉えたとは思えないキャノンシュート。見るからにフィジカルが強いことが窺がえる選手だが、その特徴を発揮したVゴールだった。「途中出場なので一番元気がいいので、決めて来いと言って送り出した」という三本松監督の起用が見事に当たった。早い時間帯でワンチャンスを素早く攻めて決めるという、福教大の狙い通りのゴール。会心の決勝ゴールだった。

 しかし、最大の立役者を挙げるのなら、やはりGKの真子。決まってもおかしくないシュートを数え切れないほど弾き返した活躍は、押されっぱなしだった福教大にとって、これほど力強く感じられたものはなかったはずだ。真子は「最後の15分間は苦しかった。とにかく失点をしなければいいかなと思って頑張った」と試合を振り返ったが、その頑張りがVゴールにつながったことは間違いない。スタンド最前列に陣取った福教大サポーターからは「ゴマ!ゴマ!」といつまでも声援が送られていた。

 天皇杯初出場の昨年は1回戦で敗れた福教大。昨年の経験をもとに今年は初戦突破、さらには、その先を目指す。「夏やってきた練習が実った。もう一度一から作り直して頑張りたい。去年はふがいない結果だったので、今年は福岡県の代表として恥ずかしくない戦いがしたい」とは三本松監督。「Jに当たるまでは頑張りたい」と真子も決意を新たにする。今年の1回戦は11月30日。天皇杯本大会での福教大の活躍を祈りたい。


(福岡教育大学) (福岡大学)
GK: 真子秀徳 GK: 赤星拓
DF: 久野純治 西村康隆 森下和哉 久留貴昭(53分/蓑田英樹) DF: 加藤秀典 長野聡 登尾顕徳 井上星童(吉田慎一郎)
MF: 荒巻昇一(73分/河村旬記) 石田順也 神崎大輔 川上健悟(近藤宏之) MF: 川田和宏 衛藤裕 小井出翔太(65分/白木千吉) 和泉徹也
FW: 木下健生 中島雄大 FW: 高橋大輔 林幹貴(83分/相良浩二)
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