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 福岡通信 03/09/25 (木) <前へ次へindexへ>
 見事優勝を飾ったアビスパ福岡U-15の面々

 目指せ!全国の舞台 〜第15回福岡県ユース(U-15)サッカー選手権大会
 

 文/中倉一志
 少々古い話になってしまって恐縮だが、今週は9月7日に行われたJAカップ第15回福岡県ユース(U-15)サッカー選手権の決勝戦の様子を・・・。

 朝から強い日差しが降り注いでくる。いくら南国とはいえもう9月。多少は秋らしくなってもよさそうなものなのだが、今年の福岡は夏の終わりになって暑さがぶり返してきた。冷夏だった分、残暑が厳しいのだそうだ。それにしても暑い。JAカップ第15回福岡県ユース(U-15)サッカー選手権決勝戦のキックオフは午前10:00なのだが、既に30度以上はあると思われる暑さ。ピッチの上で写真を撮る私のシャツには汗が滲み出している。

 この大会は、福岡県下の各支部中学委員会から選出された14チームに、福岡県サッカー協会中学委員会と、同クラブ委員会から推薦されたそれぞれ1チームを加えた16チームがトーナメント方式で優勝を争う。中学校年代ということを考慮して、交代枠は9名まで認められ、先発メンバーを含めた20名内では何度でも交代することが可能だ。試合時間は10分間のハーフタイムを挟んでの30分ハーフ。時間内に勝敗が決しない場合は、10分ハーフのVゴール方式の延長戦、さらにPK戦が用意されている。

 さて決勝戦に駒を進めてきたのはアビスパ福岡U-15と「わかばFC」。アビスパは2年連続4回目の、「わかばFC」は初優勝を狙う。第11回大会で初優勝を飾って以来、トップチームとして、このカテゴリーを牽引するアビスパだが、1回戦ではFC花鶴に思わぬ大苦戦。試合は1−1のまま決着がつかず、かろうじてPK戦で勝ち上がった。しかし、その後の戦いぶりは順調そのもの。2回戦、準決勝通算で7得点1失点と、他を寄せ付けない強さを発揮している。

 一方、「わかばFC」は福岡県下では最も歴史が古いチーム。まだ優勝経験がないというのは、少し意外な感じを受ける。ここまでの勝ち上がりを振り返ると、こちらも1回戦では香月中学校と2−1の接戦を繰り広げたが、2回戦では淺川中学を3−0、準決勝の二瀬中学を3−1と順調に下して決勝戦に進んできた。下馬評ではアビスパが有利とされているが、せっかく巡ってきた初優勝のチャンス。簡単には引き下がるわけにはいかない。



 ボールを追う目は真剣そのもの。目指すは全国大会だ
 先にリズムを掴んだのは「わかばFC」。「パターンとしては(立ち上がりは)少し押し込まれる」(橋川監督・アビスパU-15)というアビスパの立ち上がりを突いた。高い位置から積極的にプレスを仕掛け、奪ったボールはシンプルにDFラインの裏へ。そこへFWが飛び込んでいく。手数をかけないシンプルな攻撃だが効果的な戦術だ。個人技では優るアビスパだが、ラインを下げさせられ、セカンドボールも拾えず、苦しい展開が続く。

 たまらずベンチから飛び出す橋川監督。怖がらずにラインを上げることで中盤のバランスを修正するように指示を送る。セカンドボールの奪い合いで引けを取らなければ、裏への飛び出しも怖くはない。その指示が届いたのか、アビスパは徐々に落ち着きを取り戻す。ボールを回しながら自分たちのリズムを作るのはいつものパターンだ。しかし、「わかばFC」にとっても、ここが勝負の分かれ目。激しくボールを追ってアビスパにリズムを渡さない。

 アビスパがジワジワとリズムを掴みかけたかに思われた13分、一瞬の隙をついて「わかばFC」が先制点を挙げた。中盤からDFラインの裏側にボールが出る。それを追うFWの大月選手。しかしボールがやや長すぎた。ゆっくりと前に出てきたアビスパGKがキープするかに思えた。そこへ猛然とプレスをかけていく大月選手。一瞬、GKがキャッチングを躊躇し少し下がった。その動きを大月選手は見逃さない。巧みにボールをキープすると、ほとんど角度のない位置から絶妙にゴールマウスの中へ流し込んだ。

 アビスパがリズムを掴みかけたところでの「わかばFC」の先制点。「わかばFC」にとっては願ってもない、アビスパにとっては嫌な得点だった。再び思うようにボールを運べなくなるアビスパ。「わかばFC」は狙い通りに試合を進めていく。しかし24分、アビスパは直接FKのチャンスに蛯原選手選手が頭で合わせて同点に追いつく。これで流れが変わった。落ち着きを取り戻したアビスパは右サイドを中心にして「わかばFC」を圧倒し始めた。



 嫌な時間帯を凌いで同点に追いついたアビスパ。リズムさえ掴めば自慢の攻撃が生きてくる。後半は立ち上がりから前に出て「わかばFC」を押し込んだ。得意のパターンは、右SBの井手口選手、右MFの長谷川選手を中心とする右サイドの攻撃。フィニッシュはFW蛯原選手が受け持つ。対する「わかばFC」はFW大月選手にボールを集めて活路を見出す。背筋をぴんと伸ばし、常に周りを見渡す大月選手は、巧みにボールをキープして虎視眈々と一瞬の隙を狙っている。

 しかし、時間の経過とともにアビスパのゲーム支配は強まっていく。そして後半の10分、均衡を破るゴールがアビスパに生まれた。左に流れてボールをキープする本田選手が反対サイドに視線を送る。そこへオーバーラップしてくるアビスパの選手に全員の注意引き付けられた。ところが次の瞬間、スルーパスが縦へ。それに反応した大月選手。鋭く飛び出してシュートコースを消すGK。しかし、大月選手の放ったシュートはGKの右側を通ると、見事なカーブを描いてサイドネットを揺らした。

 アビスパの3点目は後半21分、またも蛯原選手のゴールだった。ロングフィードを受けて左サイドに抜け出した蛯原選手が、そのままドリブルで持ち込んでGKと1対1に。またもや果敢に飛び出すGK。飛び出しのタイミング、シュートコースを消すポジショニング、どちらも2点目同様、完璧と思えるものだった。しかし、GKがボールを抑えようとした瞬間、大月選手は右足でボールに軽くタッチ。ふわりと浮き上がったボールは。GKが飛び出して無人になったゴールマウスに吸い込まれた。

 事実上の勝負はこの3点目で決まった。しかし、アビスパは攻撃の手を緩めない。後半27分、28分と決定的なシュートを放つ。そして残りわずかとなった29分、ボランチの石田選手が蛯原選手とのワンツーでゴール前へ飛び出して右足を一閃。駄目押しの4点目がアビスパに生まれた。そして、ここで試合終了のホイッスル。立ち上がりの悪いアビスパに先制攻撃を仕掛けた「わかばFC」。その攻撃を凌いで自慢の攻撃力を発揮したアビスパ。見所の多い試合だった。



 メダルを受け取るわかばFC。アビスパ相手に健闘が光った
 「わかばFC」にとって悔やまれるのは、先制点を挙げてから同点に追いつかれるまでの10分間の攻防だった。がっぷり四つに組めば「わかばFC」の不利は否めない。中盤でパスをつないでくるアビスパにプレッシャーをかけて、高い位置で奪ってDFの裏へという戦術こそアビスパに対する最も効果的な戦術。これが見事にはまっていた。しかし、あと一歩、及ばなかった。この時間帯で「わかばFC」が追加点を奪っていたら、展開は全く別なものになったことだろう。

 選手の中で抜群の存在感を示したのが、U-15日本代表の蛯原選手(アビスパ福岡)。中学3年生で既に177センチの身長は一際目立つ。まだ成長過程にあるため華奢な印象があるが、足元の技術は群を抜いており、さすがはブラジル帰りだ。「わかばFC」では大月選手の活躍が目立った。背筋を伸ばし、首を振りながらスペースを確認するプレースタイルは視野の広さを窺がわせる。技術も高くキープ力もある。まだ2年生、これからが楽しみな選手だ。

 さて、優勝したアビスパ福岡U-15は、10月11・12日に大分で開催される「高円宮杯第15回全日本ユース(U-15)サッカー選手権九州大会」に出場する。九州・沖縄各県の代表で争われる九州大会で全国への切符を手にするのは2チーム。目指すはもちろん全国だ。「全国のクラブの大会で予選リーグ敗退だったので、目標は同じ予選リーグを戦って勝ち上がること」と橋川監督は日本クラブユースサッカー選手権大会(U-15)のリベンジを期す。そのためには、まず九州大会を勝ち抜くこと。アビスパは万全の準備を整えて九州大会に臨む。
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