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 福岡通信 04/01/10 (土) <前へ次へindexへ>

 サッカー三昧の日々


 文/中倉一志
 私にとって年末年始ほど密度の濃い時期はない。天皇杯に始まって高校選手権へ。その間には高円宮杯の決勝戦やJクラブユースの決勝戦も行われる。加えて、当2002world.comの読者による関西オフミ、関東オフミに出席させていただいた。さらには私のサッカー仲間の忘年会を行ったこともあって、毎日が朝から晩までサッカー三昧。27日からの8日間で10試合を観戦し、3回の飲み会。まさに至福の時を過ごした。しかし、それでもまだ物足りない気がするのだから、サッカーの魔力は恐ろしい。

 長居スタジアムで行われた天皇杯準決勝後に行われた関西オフミには、常連の方をはじめ、準決勝観戦がてらわざわざ東京から来て下さった方、中には、オフミの出席だけのために東京から駆けつけてくれた方もいらっしゃって、実に盛況な集まりになった。取材の関係で一次会には大幅に遅刻してしまったが、オフミは2次会、3次会と続き、気が付けば午前4:00。いつもながらに濃すぎるオフミだった。本当にみんなサッカーが好きだ。

 関東オフミは29日。さすがに年末ということもあって出席者は少ないと思っていたのだが、それでも常連の方を中心に20名近い方たちが集まってくれた。私が関東オフミに参加するのは2年振りのこと。仲間たちと久しぶりに酒を飲み交わし、初めて会う方ともサッカー話にのめりこんでいく。サッカーが大好きと公言する方たちの集まりとあって、その内容は豊富だ。サッカーを書くことを生業にしている私にも教えられることは多い。

 いつも思うことなのだが、サッカーという共通言語はあらゆる壁を瞬時のうちに取り除いてくれるものだ。立場も、年齢も、性別も関係なく、一人の人間として対等のコミュニケーションが成立する。自分の意見を語り、そして相手の主張も尊重する。話題も千差万別。ミーハー話から、思わず唸ってしまう程の専門的な話まで飛び出す。しかし、あらゆる内容を互いが吸収していく。サッカーは何でもあり。その内容に貴賎などあるはずもない。



 さて、元旦は天皇杯の決勝戦。中には凡戦と評する人もいたが、私にとっては非常に面白い試合だった。サッカーをプレーする選手たちにとっては「元旦の国立」は聖地そのもの。そして、私にとっても特別な試合。特別な日の特別な試合でどんなプレーが見られるのだろう、そう考えただけで既に面白い。もちろん、自分が応援するチームが出場するに越したことはないのだが、どこのチームがやってこようと特別なことに変わりはない。

 年間順位で9位と下位に甘んじたC大阪が今大会に選択した戦術は攻撃的に行くこと。失点数で12位という守備の修正に力と時間を裂くよりも、J1トップクラスの攻撃力を生かして攻め抜こうというものだった。その結果、出入りの激しいサッカーをしながらも辿り着いた決勝戦。負けたら全てが終わるトーナメントを勝ち上がるためには、現時点で最もチームに適した選択だった。勝つために選択したスタイルは、決勝戦でも変わらなかった。

 そんなC大阪に対し、磐田も攻撃的な姿勢を選択した。成長著しい前田が前線で存在感を示し、西が切れのある動きで中盤を切り裂く。中盤の底でピンチの芽を摘む服部はいぶし銀のような働きを見せ、名波は全体のバランスを保つように緩急をつけたパスを出す。そして中山だ。ピッチに立った瞬間、明らかにスタジアムの空気が変わり、そして決勝点を演出した。もちろん、戦術の変更や投入のタイミング等が絡み合ってのゴールだったのだが、中山の持つ説明のつかないオーラのようなものを記者席で感じたのも事実だった。

 互いの特徴を思う存分に発揮して攻め合う試合が面白くないわけはない。確かに両チームにとって違う戦い方もあっただろう。だが、この日の両チームの選択と戦い方に文句をいうのは単なる結果論でしかない。チーム力が劣っていても、自分たちの特徴を生かしきれば優勝に手が届くところまで辿り着けることをC大阪は証明した。しかし、最後の壁を乗り越えるには、地力が必要なことも明らかになった。それもまた、スポーツの面白さだ。



 そして翌日は三ツ沢球技場に。この日は筑陽学園が初めて全国のピッチに立つ記念すべき日。初めての舞台で彼らがどんな姿を見せてくれるのか、それが気になって朝早くから家を出た。対戦相手が地元桐蔭学園ということもあってゴール裏を除けばほぼ満員。当然といえば当然だが、そのほとんどが桐蔭学園ファン。神奈川県の名門・桐蔭学園は前年度のベスト4。スタンドは、全国的には知名度の低い筑陽学園との対戦に余裕の雰囲気が漂う。

 そんな観衆の、そして桐蔭学園イレブンを黙らせるゴールが11分に生まれる。仁科から桑原へ。その折り返しを再び受けた仁科が左サイドへはたく。オーバーラップしてきた久光がクロスを入れると中央で待つ西野が決めた。4本のパスを鮮やかなダイレクトプレーでつないでのゴール。その流れるようなプレーにスタンドから思わずどよめきが起こる。これを皮切りに奪ったゴールは4。結局4−1で見事に初戦を突破した。試合後の監督の囲み取材の時、地元記者は思わず「レベルが高い」とつぶやいた。

 県予選とは全く違うチームだった。いや、県予選でもポテンシャルの高さは十分に知ることが出来たのだが、どこか硬さが取れないというか、わりと堅実なチームだったような印象を持っていた。しかし、全国の舞台に立った選手たちは何かに解き放たれたかのように伸び伸びとプレーしている。そのことが選手たちが自分の持つポテンシャルをフルに発揮することにつながっている。「いけるんじゃないか」。彼らのプレーを見て、かなりの確信をもった。

 翌日の3回戦の丸岡戦は、先制された後に、逆転、また逆転の実にスリリングな展開。最後まで諦めない粘りを見せる筑陽学園は、川瀬選手の終了間際の決勝弾でベスト8を決めた。この日も筑陽学園イレブンはプレッシャーとは無縁のはつらつとしたプレーを披露。そして、まずはチャレンジしようという姿勢にスタンドの観客も引き込まれたようだ。メインスタンドには筑陽学園に声援を送る地元サッカーファンの方がいらっしゃったが、前日には見られなかった光景だ。



 筑陽学園の魅力は積極果敢に仕掛けて行くドリブルにある。しかし、彼らを支えているのはドリブルだけではない。攻守にわたって豊富な運動量で貢献するトレスボランチ。高い位置を保って守備を固める最終ライン。ドリブルで切り裂いた後に出来るスペースの使い方のうまさ。チームとしてのバランスの良さと、チームのために献身的に動き回る11人の組織力が快進撃の大きな要因だ。相手のシュートのほとんどがGKの正面に飛ぶのも、組織としてディフェンスをしていることの現われと言える。

 筑陽学園は、準決勝でも同じ九州勢の鹿児島実業を下して決勝進出を果たした。初出場で決勝へ進出するのは第65回大会以来2度目。実に17年ぶりの快挙になる。優勝を争うのは高校サッカー界の雄・国見高校。手強い相手だ。しかし、筑陽学園はいつものサッカーで頂点を目指す。「これって番狂わせじゃない。筑陽学園のほうが強いよ」。準々決勝が行われた柏の葉公園総合競技場のスタンドでサッカーファンの呟きが聞こえた。筑陽学園はもはやダークホースではない。決勝戦が楽しみだ。

 もちろん、サッカー三昧の日々を送る見返りとしてレポート作成に追われる日々が続いている。年末に取材した方々のレポートもまだ完成していない。入れ代わり、立ち代わりパソコンの前にやって来てはじゃれついてくる我が家の3匹の猫を追い払いながら、キーボードと格闘する毎日が続く。しかしそれも、このサイトを通して多くのサッカーファンとのつながりができ、仲間たちとサッカーを語り合う喜びに比べればたいしたことではない。

 高校サッカー選手権と入れ替わるようにして、11日からは25代目の女王を決める全日本女子サッカー選手権が始まる。こちらは西日本を中心に各会場で試合が行われ、24日に西が丘サッカー場で準決勝が、そして25日には国立競技場で決勝戦が行われる。そして2月には、いよいよ2006年W杯予選が始まる。シーズンオフのないサッカーというスポーツ。サッカー三昧の日々も途切れることなく続いて行く。そんなサッカーシーンを少しでも多く伝えていきたい。それが私の、そして編集部の願いでもある。そんな私たちに今年もお付き合いいただきますよう、みなさん、よろしくお願いします。
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