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 福岡通信 04/03/09 (火) <前へ次へindexへ>
試合当日はあいにくの空模様。しかし、福岡イレブンは熱く戦った。

 目指すは頂点。戦う気持ちを研ぎ澄ませ!


 文/中倉一志
 松田体制で臨む2年目のシーズン。福岡の狙いはJ1昇格しかない。ここまで去年の戦術をベースにチーム力の向上を図ってきた福岡は、3月3日から島原で短期合宿を行った。目的は最後の仕上げ。「開幕に向けてチームが一丸となって気持ちを高めていくことが一番大切」と松田監督は狙いを語っていたが、あいにくの悪天候にも拘わらず、怪我人も無く、シーズン前の最後の合宿は狙いどおりに終えられたようだ。

 キャンプ最終日の6日は、サテライトvs.国見高校、トップチームvs.大分トリニータの試合が行われた。真冬に戻ったような気温と強風、時折、横殴りの雪が吹き付けるという最悪のコンディションだったが、中村強化部長、松田監督のほか、塚本、木藤、中村北斗らの長崎県出身者が多く在籍していることもあって、観客席には地元関係者が多数訪れた。また、開幕前最後の試合ということもあり、福岡からはバス3台でサポーターが駆けつけた。これもJ1昇格への期待が大きいからだろう。

 さて、第1試合の国見高校との試合は、キャンプを誘致してくれた島原との親善試合の意味合いが強い試合だったが、シーズン前の最後のアピールの場ということもあって選手たちの気合は十分。プロの違いを見せつけて国見高校を8−0と圧倒した。戦術もトップの戦い方がしっかりと浸透しており、また、期待の田中と有光が、ともにハットトリックを達成してアピールしてみせる等、確実にチームの層が厚くなっていることを感じさせる試合だった。

 第2試合は、福岡の仕上がり具合を確認するには絶好の機会。蔚山現代を除けば、どちらかというと厳しい相手との試合が出来なかっただけに、J1のトップチーム相手にどれだけの戦い方が出来るのかサポーターの注目度も高い。先発メンバーは、GKに水谷。最終ラインは右から川島、千代反田、藏田、アレックスの4人。ダブルボランチには米田とホベルトが並び、両サイドのアタッカーは宮崎と古賀。そして、ベンチーニョ、林の2トップ。開幕戦のシミュレーションを兼ねての戦いだった。



 雪の中、ピッチに整列する国見高校の生徒と、島原のちびっ子
 プレーヤーたち。あいにくの天候だったが、プロの選手とのふれあい
 は、最高の思い出になった。
 結論から言えば、前半は福岡の一方的な試合だった。大分の狙いはボールをビチュへに集めて、そこから両サイドに展開。1トップのマグノアウベスと高い位置に張り出した吉田、原田の突破を武器に攻撃を仕掛けようとするもの。しかし、福岡は高い位置からの激しいプレスで全くといっていいほど大分に形を作らせない。そして、奪ったボールを素早く回してサイドから何度もいい形を作り出した。全員で守って、全員で攻めるという福岡の形が随所に見られた。

 先制点は15分、右からのCKのボールがファーサイドら流れたところを、宮崎が拾って再びセンタリング。これに川島が頭で合わせた。その後もゲームの主導権を握る福岡は、サイドから面白いように大分を崩していく。ただ、物足りなかったのはフィニッシュの部分。一方的に攻めた割にはシュート3本と最後の形が作れなかった。ゴール前までの組み立ては出来上がっているが、この部分は依然として課題として残っているようだ。

「多くの選手を試したかった」(松田監督)という福岡は、後半に入ると、塚本、増川、平島、篠田、福島、太田ら6人を投入。前半とはがらりと違った布陣になった。しかし、それでも優位は動かない。基本となる戦術は前半と変わらず。メンバーが入れ替わってもチームの戦い方が換わらないところを見せた。これも「昨シーズンからの継続性」をポイントにあげる福岡の強みだ。早いプレスで相手に前を向かせず、奪ったボールは2〜3本のパスをつないであっという間にゴールに迫る。

 60分を過ぎたあたりから中途半端なミスが続き大分に押し込まれる場面が続いたが、この時間帯をしのいで、27分には太田が、29分には福島が決定的なチャンスを作り出す。悪いリズムを落ち着いて自分たちのペースに戻せるところにも福岡が順調な準備を進めていることが窺えた。ところが30分、大分のロングフィードが風に乗ってDFの後ろにこぼれたところを木島に走りこまれて失点。内容とは裏腹に試合は1−1で引き分けた。「前後半とも2点目が入っていれば勝利も見えた」(松田監督)というように、決めるべきときに決められなかった付けが回った試合でもあった。



 しかし、仕上がり具合は悪くない。「悪天候の中で、自分たちの中の基準みたいなところは変えないようにという指示は守ってくれた」(松田監督)。それは、昨シーズンに積み上げたものをしっかりと自分たちの身体に覚えこませているということでもある。高い位置からのプレス。ボールを奪ってからリズミカルにボールをつなぐ中盤。宮崎、古賀のサイドアタックと、両SBのオーバーラップ。すっかりお馴染みになったスタイルは今年も健在。米田選手が高めの位置に出るようになる等、レベルアップも図られている。

 課題は前述の通り、ゴールに結びつかないこと。「気持ちを研ぎ澄ましていく、戦闘モードに入っていくという部分が足りなかったことが追加点を取れなかったことにつながっている。それは依然として課題」と松田監督も振り返る。特に林が無得点というのも気になるところだ。まだ、昨年見せた動きには戻っていない。「それはすでに去年にクリアしている問題」と語る松田監督の真意は「やって当たり前」という信頼と激と捉えたい。開幕までは1週間。目の色を変えて最後の調整に臨んでもらいたい。

 ところで、元オランダU-23代表監督であるハン・ベルガー氏を監督に招聘し、「攻撃的なチーム」への転身を目指す大分は、不安を残す内容になった。真冬の悪天候のような気象条件と、サンドロの不在を考慮する必要はあるが、福岡の激しいプレスの前にチームの連動性をたたれ、ほとんど攻撃の形を作ることができなかった。また、守備面でも、DFラインの裏のスペースに出されるパスの処理に対して不安を残し、ビチュへが前目に位置したときに、その後ろのバイタルエリアをつかれるシーンも目立っていた。

「特別にフォーメーションだとか、誰がそのポジションに入るだとかは重要だと思っていない」と語ったハン・ベルガー監督。開幕戦のメンバーこそ固まりつつあるが、キャンプ中も様々なシステムを試していた影響からか、まだチームとしての完成度が低いと言わざるを得ない。「監督の言うことは理解している。あとはどう表現するかだけ」という選手たちが、どこまで表現できるかにかかっている。



市役所前広場の上空に広がる青い空。アビスパの挑戦を応援している
かのようだ
 福岡は1月20日に合同自主トレを開始して以来、J1昇格を目指して準備を進めてきた。残る準備期間は後4日。いよいよ全てをかけて戦うシーズンが13日に開幕する。44試合が絶え間なく続くJ2では、シーズン中の建て直しの期間はほとんどないといっていい。泣いても、笑っても、残り4日間の準備で今シーズンの大半が決まるといっても過言ではない。準備はほぼ計画通り。松田監督が言うように後は戦う姿勢を研ぎ澄ますだけ。最後まで気を引き締めて、きっちりと仕上げてもらいたいものだ。

 そんなチームにサポーターやファンの期待は高まるばかり。島原キャンプを打ち上げた翌日の7日、クラブによる「ファンの集い」が催されたが、会場である市役所前広場には昨年を上回る2200人もの観衆が集まった。あちらこちらに見知った仲間の顔が見える。どちらからともなく声をかけて始まるサッカー談義は、どれも明るいものばかり。そして誰もが「今年が勝負の年」と口をそろえる。

 クラブフロントの意気込みも例年になく強く感じられる。サポーターやファンが集まる場所には必ず社長、専務をはじめフロント役員が顔を出して福岡をアピールすることを忘れない。「ファンの集い」では、役員が自らがプラカードを持ってサインを待つ列の整理に当たった。様々なところで、クラブが一体となってチームを盛り上げようという雰囲気が伝わってくる。何をするにしても一体感がある集団ほど強いものはない。福岡はチームの力も、バックアップ体制もJ1昇格を狙えるクラブになった。

 順調すぎるくらい順調に進んできた福岡のキャンプ。それは2年越しの努力の賜物だ。しかし、何が起こるかわからないのがサッカー。自分たちの力に慢心せず、順調な準備におごることなく、しかし、自信を持って、積み重ねてきたことを信じて戦いに臨みたい。謙虚に、そして自信を持って。それこそが44試合を勝ち抜く力だ。フロントも、選手も、サポーターも、そしてメディアも。みんなが同じ気持ちで開幕戦を迎えたい。その先にJ1のゴールがある。
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