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 福岡通信 04/05/31 (月) <前へ次へindexへ>
福岡女学院F.C.アンクラスのエース、河島美絵選手(左)。その存在感
は、九州女子サッカー界で群を抜いている。(写真は、昨年の九州女子
サッカー選手権決勝戦から)

 7代目の女王を目指して


 文/中倉一志
 第7回九州女子サッカーリーグが4月25日から、九州各地で行われている。参加しているのは、福岡女学院F.C.アンクラス、福岡ファーストレディイレブン、福岡大学サッカー部女子、ニューウェーブ北九州ガールズ(以上福岡県)、熊本ユナイテッドSCフローラ(熊本県)、K.F.C.アサヒナ(鹿児島県)、島原商業女子サッカー部(長崎県)、中津FCポマト(大分県)の8チーム。40分ハーフ、2回戦総当り制で行われ、11月28日に全ての日程を終了する。

 リーグ戦の本命は福岡女学院F.C.アンクラス(以下、福岡女学院)。初参加となった第2回から現在まで5連勝中と女王の名を欲しいままにしている。過去5年間のリーグ戦で敗戦を喫したのは、延長後のPK戦による2回だけ。そのほかの大会も含めて、1シーズンを無敗で過ごすのが当たり前で、敗れたとしても、せいぜい1回だけと驚異的な強さを誇る。今シーズン開幕となった第16回九州オールレディ大会でも優勝を飾っており、その実力は今年も健在だ。

 対抗と見られているのが熊本ユナイテッドSCフローラ(以下、熊本USC)。ジュニアユースからトップチームまで、九州はもとより全国大会でも数々の好成績を収めているクラブで、九州女子サッカーリーグには第3回大会から参加。現在まで4年連続準優勝の成績を残している。昨シーズンのリーグ戦での福岡女学院との対戦成績は1分1敗(2−2、1−2)。先に行われた九州オールレディ大会決勝では福岡女学院に1−2で敗れたものの、延長戦まで持ち込む大接戦を演じている。福岡女学院との直接対決に注目が集まる。

 この2チームに続くのが福岡大学サッカー部女子(以下、福岡大)。昨シーズンは、リーグ戦初参戦ながら6勝4分4敗の4位と検討。今シーズンはさらなる上位を目指してリーグ戦に臨んでいる。自主性を重んじた運営方針と豊富な練習量でリーグ戦を戦う福岡大学。2強の間に割って入ることが出来れば、九州女子サッカーのレベルアップにもつながることとなり、今シーズンの戦いぶりが注目されている。



鮮やかなカウンターから、ポマトが試合を決める2点目を奪った。
 さて、それでは23日に福岡女学院で行われた第3節の模様をお伝えしよう。まず、第1試合では、前年度3位の福岡ファーストレディイレブン(以下、F.F.L.11)と、前年度8位の中津FCポマト(以下、ポマト)が対戦した。F.F.L.11の布陣は3−6−1。中盤はダブルボランチと、2人のサイドアタッカー。そして1トップをフォローする形で2列目に2人のMFが並ぶ。対するポマトは4−3−3。スイーパーの前に3人のDFが並び、中盤はワンボランチと両ウイング。前線ではターゲット役の選手を2人のシャドーストライカーがフォローする。

 試合はポマト優勢の展開で進んでいく。良く走ることと、スペースを意識してボールを運んでいるのが印象的なチームだ。やや下がった位置から前線のスーペースへ飛び込んでいくFW瀬口選手と、FW熊谷選手の活躍が目立つ。一方、F.F.L.11も堅い守りでポマトに対抗する。ストッパーを務めるキャプテン前園選手が大きな声を出してチームバランスを統率し、中盤では、ボランチの三保選手が走り回ってポマトのチャンスの芽を潰していく。そして0−0のまま前半が終了した。

 後半に入るとポマトがさらに攻撃の意識を強くして前に出る。攻め込んでは大きく右のスペースへボールを展開、熊谷選手の縦への突破でゴールを目指す。そんなポマトの先制点は56分、ゴール前にこぼれたボールを熊谷選手が押し込んだ。反撃を試みるF.F.L.11は三保選手が積極的に前に出て行くが周りとの連携が上手く取れずゴールは遠い。そして71分、ポマトはカウンター攻撃を仕掛け、左サイドに飛び出した松原選手がゴールを決めて試合に終止符を打った。

 ポマトは今シーズン初勝利。初戦の福岡女学院に0−11、続く熊本USCフローラには0−13と大敗していただけに嬉しい勝利となった。とにかく良く走る好感の持てるチーム。昨年度は入れ替え戦に回ったが、今シーズンはひとつ上のレベルを目指して戦うことになる。一方のF.F.L.11は3連敗。選手の入れ替えで経験の浅い選手が増えたことで、まだチームとしての完成度が低いようだ。今は辛抱のとき。試合数を重ねながらコンビネーションを作っていく時期だろう。



圧倒的な強さを見せる福岡女学院F.C.アンクラス(オレンジ)。今年も実
力は健在だ。
 第2試合では女王の名を欲しいののにする福岡女学院がK.F.C.アサヒナ(以下、アサヒナ)の挑戦を受ける形になった。福岡女学院はダブルボランチを置く3−5−2。トップ下は元L・リーガーで日本代表候補にも選出された経験のある河島選手が務める。一方のアサヒナもボランチは2人。3−4−3のシステムで福岡女学院に挑む。高い技術を誇る福岡女学院に対してマンツーマンでついている。

 非常にスピーディな試合展開だ。福岡女学院の一方的な展開が予想されたが、アサヒナはぴったりと張り付くように身体を寄せ、福岡女学院に負けない速さで対抗する。奪ったボールは中盤での勝負を避けて一気に前へ。立ち上がりは互角の展開を見せた。しかし、4分、福岡女学院の川村選手が一瞬の隙を突いてDF3人の間をすり抜けてゴールを決めると、ここからは福岡女学院の一方的なペースになっていく。

 その中心は、やはり河島選手。存在感が他を圧倒。卓越した技術と、判断の速いプレーで福岡女学院を引っ張っていく。ボールを不用意に持つことはほとんどなく、わずかにボールに触れただけで相手の守備を切り裂いていく。その周りを惜しむことなく走り回ってチャンスを広げるチームメイトの運動量に、アサヒナは時間の経過とともに付いていけなくなった。そして22分、さらにロスタイムとゴールを重ねた福岡女学院は、前半だけで勝負を決めた。

 後半開始直後の44分、福岡女学院は4点目を決めてだめを押す。しかし、アサヒナのチャレンジ精神も衰えない。後半から河島選手がベンチに下がったため、攻撃の手が緩んだ福岡女学院に対して猛然と攻め込み始めた。左サイドにボールを集めてから、大きく右に展開。ほとんどの時間帯を福岡女学院陣内で過ごす。だが、最後のところでは個人技にまさる福岡女学院を崩しきれない展開が続く。そして66分、福岡女学院に5点目を奪われたところで力尽きた。



リーグ戦の発展は、女子サッカーの普及と強化につながる。頑張れ、
九州女子サッカーリーグ。
 さて、他会場の結果と第3節を終えての成績は以下の通り。福岡大と熊本USCが順当に勝ち点3を獲得した。

福岡大学  2−0  島原商業高校
熊本USC  1−0  ニューウェーブ北九州ガールズ

チーム名
福岡女学院 23 23
福岡大
熊本USC 15 14
K.F.Cアサヒナ −1
北九州ガールズ −1
ポマト 24 −22
島原商業高校 11 −11
F.F.L.11 −9

 九州女子サッカーリーグ全体を見渡すと、残念ながら、上位、中堅、下位の間には、それぞれ大きな壁が存在している。女子サッカーを巡る環境の悪さは、ここ九州も例外ではない。指導者不足、練習場不足、選手数の不足というのが女子サッカーの最大の問題点だが、特に選手数の不足は深刻な問題で、私が観戦したチームでは、福岡女学院を除けば、どのチームも控選手が1人しか登録出来ない状況だった。そうした状況がクラブ間格差を生んでいる大きな要因となっている。

 しかし、U-12レベルの実力は高く、また選手数も増えていると聞く。実際、今年の3月に行われた第1回ミッションズカップ(於、福岡女学院グラウンド)に参加した女子U-12トレセンの選手たちのプレーは男子プレーヤーと比較しても全く遜色のないもので、将来が嘱望される選手も多かった。環境が整わないという事実は厳然と女子サッカー界に立ちはだかっているが、明るい材料も確実に育っていることも、また事実だ。

 中学校の部活動自体が問題を抱えている現在、女子サッカー選手の活動場所を中学校に求めるのは現実的ではない。彼女たちを指導・育成していくためには、どうしてもクラブチームの存在が不可欠だ。そういう意味では、九州女子サッカーリーグのレベルアップは、女子サッカーの普及だけにとどまらず、育成・強化にも大きな意味を持つことになる。サッカーを愛する情熱だけを頼りに運営を続ける九州女子サッカーリーグだが、今後とも、九州女子サッカー界の大きな牽引力となることを期待したい。
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