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 福岡通信 04/06/11 (金) <前へ次へindexへ>

 ここが正念場。抜け出すのは俺たちだ。


 文/中倉一志
 今から1ヶ月前、5月9日に行われた川崎F戦は首位攻防戦にふさわしい密度の濃い試合だった。結果は0−1で敗れたが、その差はまさに紙一重。攻守に渡って、福岡がJ1昇格候補の有力チームであることを改めて示した試合でもあった。だからこそ、敗戦と言う結果は悔しかったが、それでも第2クール以降の戦いに手応えを感じたことも事実だった。第2クールは本来の力を発揮できるはず。少なくとも私はそう感じていた。

 ところが・・・。第2クールの初戦で京都に引き分けると、そのまま3連続引き分け。第15節の甲府戦では今シーズン4敗目を喫し、続く16節の水戸戦では5試合ぶりの勝利を手にしたものの、課題は整理されないまま。順位こそ2位につけているが、川崎との勝点差は18にまで開き、9位までが勝点差4の中にひしめき合うという混戦に飲み込まれたままだ。第16節の水戸戦後、「この勝利は大きい」としながらも、憮然としたまま会見を終えた松田監督の表情からは今後に向けての手応えは感じられなかった。

 福岡が混戦を抜け出せない原因の一つには、J2全体の底上げという側面がある。かつては上位チームと下位チームとの間にハッキリとした力の差が感じられたJ2だが、そのレベルは年々向上し、特に守備面においては徹底したマークとカバーリングに安定感を見せるチームが多くなっている。ちなみに2位から9位までの8チームのうち、京都と仙台を除いた6チームの第16節終了時点の総失点は104点。これは前年同期比で57点もの減少にあたる。

 一方で、この6チームの同時期の得点をみると、前年の117点に対し今年の115点とほとんど変わらない。この傾向は当然のように引分け数の増加という結果を招いている。J2全体で引分け数は総試合数の約35%を占めているが(第16節終了時)、上記6チームの合計でみると、前年度は20試合だった引分けが39試合と倍増している。勝ちきれないのか、粘り強く戦っているのか、それは個々のチーム事情により判断が異なるところではあるが、どのチームも抜け出すだけの力は持たず、混戦模様はしばらく続きそうな気配を見せている。



 さて、福岡に目を移せば、やはり決定力不足という言葉が一番に浮かんでくる。決定機がないわけではなく、シュートが打てないわけでもない。むしろ、シーズン前の予想以上に守りを固めてくる相手に対して、良く崩していると言ってもいいかもしれない。しかし、ここぞと言うときにゴールが奪えない。効果的にゴールを重ねられたのは、第2節の鳥栖戦と、6節の京都戦くらいではなかったろうか。総得点21は前年同時期と同じ数字だ。

「ゲームを支配して進めるという試合が増えてくるだろう。その中で、こじ開けて点を取るということに関しては、攻撃陣のシャープさとか、研ぎ澄まされた感覚というものが必要になってくる。そこがなかったら点はなかなか奪えない。最初から貪欲に取りに行くということをやらないと思わぬところで勝ち点を失うことになる」。トレーニングキャンプ中の松田監督の言葉だが、残念ながら、この課題が解決しきれないでいる。

 もうひとつ、実は福岡は守備面でも課題を抱えている。ここまで14失点は数字の上では十分に合格点と言えるが、内容を見ると決して安定感があるとは言い切れない。自分たちのリズムで戦っていながら、何の前触れもなく簡単に決定機を作られるシーンが多いのだ。これまでの失点も、あっけなくゴールネットを揺さぶられていることが多い。しかも、そういう悪いパターンが連続することで守備に追われ、いつの間にか相手のペースにはまってしまう。

「後半の最後まで、ほとんど攻められていなかったし、その部分はすごく良かった。ところが、時間帯、時間帯でぱっと攻められる回数が増える。そういう時間は簡単にボールを出されている。足で軽く行っていたり・・・。そこでスルスルっと上がられて、後手、後手になってしまう」。無失点に抑えた水戸戦後の千代反田の言葉だ。ほんの一瞬の隙、いわゆる軽いプレーをしてボールを奪われていることが気にかかる。



 全体的には上手く戦えている。しかし、肝心なところでほころびが出る。それがここまでの福岡だと言える。決して手を抜いているわけでも、慢心しているわけでもない。これまでの勝ちきれないという流れが、微妙にプレーに影響を与え、それが繰り返されるという悪循環に陥っているように見える。この悪循環を断ち切るには、戦術的な微修正も必要かもしれないが、自分たちが準備してきたことを信じきる強さと、どんな相手にもぶつかっていくチャレンジャー精神が何よりも求められることになる。

 そういう中で迎える第17節の鳥栖戦は、今後を占う意味で大切な試合になるだろう。鳥栖戦後はアウェイゲームで2連戦、しかも梅雨時に1週間で3試合消化するというハードなスケジュールが待ち構えている。悪循環を断ち切り、6月後半のスケジュールを勢いに乗って突破するためには、水戸戦で得た勝ち点3という結果をしっかりとつなげておかなければならない。まだ慌てる時期ではないが、ここで足踏みをするようだと、いよいよ混戦の中に飲み込まれたままになってしまう。

 注意しなければならないのは立ち上がり。おそらく鳥栖はマンマークのアグレッシブな守備をベースに、攻守の切り替えの早いサッカーで向かってくるはず。攻めの中心はスペースに飛び出す竹村と、スピードある突破を見せる中村がいる左サイド。2列目からは伊藤が前線に飛び出し、右サイドの小石は、やや守備に重点を置くことになるだろう。この布陣で最初から飛ばしてくる鳥栖の攻撃を真正面から封じ込めること。受けて立っては後手を踏む。

 鍵を握るのは両サイドの攻防だ。サイドで2対1の状況を作り出して3バックの両側のスペースを突けるかどうかが勝敗を分ける。もちろん、鳥栖も福岡の両サイドが駆け上がった後ろのスペースを狙いの一つにしているはず。最終ラインとボランチの連携で磐石な守備体制を敷いておくことも忘れてはならない。要するに、今までの自分たちのスタイルを貫き通すことだ。準備してきたものに間違いはない。それを90分間通して実現し続けること、そしてチャレンジすること。それさえ出来れば、結果はおのずとついてくる。



 アレックスを怪我で欠き、藏田と千代反田の両CBが累積警告で出場停止の福岡は先発メンバーの変更を強いられている。しかし、誰がどのポジションで出場するかが問題なのではない。誰が出ても11人で戦うのが福岡のスタイル。それぞれが自分の長所をぶつけてチャレンジし、それぞれの欠点を全員でカバーする気持ちがあれば何の問題もない。鳥栖は侮れないチームだが、謙虚に、相手を尊重し、そして自信を持ってぶつかればいい。

 福岡では台風の影響で週末の天候が危ぶまれている。それでも、選手たちが必死になって戦うことを信じて、目の前にある勝ちきれないという壁を破ってくれることを願って、サポーターは、いつものように博多の森に足を運ぶ。そして、少しでも選手たちの力になろうと、いつもと変らぬ熱い声援を送るはずだ。J1昇格の戦いは選手やチーム、フロントだけの戦いではない。それはまた、サポーターたちにとっての戦いでもあるからだ。

 だが、ゴールを破るための最後の力、ゴールを守るための粘り強さは、選手たちが自分の手で掴み取らなければ誰にも与えることはできない。それは、自分たちの積み重ねてきたものを全て発揮したときに初めて手に入れられるものだからだ。これまで失った多くの勝ち点、戦いの中から得た教訓、敗戦の悔しさ、そしてサポーターの熱い思い、それらの全てを力に変えて鳥栖戦を迎えて欲しい。その先に勝利の喜びと勝ち点3がある。

 J1昇格への道が平坦ではないのは分かっていたこと。44試合を戦うリーグ戦の中では、必ず苦しいときがあるのも承知していたはず。そんな戦いの中で、一喜一憂せずに、自分の力を信じてコンスタントにチャレンジし続けたチームだけにJ1昇格のゴールが見える。苦しい今が正念場。現在の勝ち点24は予想外だったかもしれないが、逆に言えば、それでも2位につけていられるのは運がある証拠だ。ここらで本領発揮と行こう。サポーターは、ただそれだけを願っている。
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