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 福岡通信 04/07/17 (土) <前へ次へindexへ>

 勝負はこれから。気迫を持って戦え!!


 文/中倉一志
 9勝7分6敗の4位。前半戦を終えた時点での福岡の成績は、シーズン前には予想すらしないものだった。ホベルトをブラジルから補強したとは言え、いわゆる大型補強はせずに、昨年の継続性を重視して調整してきたチームは、完成度という点においては、J2でもトップクラスだと判断していたからだ。各チーム関係者の福岡に対する評価も高く、シーズン前から、かなり警戒されていたのも事実だった。心配だったのはキャンプ中の決定力不足。それも、シーズンに入り、試合を重ねることで解消すると考えていた。

 だが、立ち上がりの5試合を1勝3分1敗の成績で終えスタートダッシュに失敗。第6節の京都戦に圧勝すると、第7節からは3勝1敗と勢いに乗るかと思われたが、第1クール最終戦の川策Fとの対戦で惜敗すると、第2クール序盤では3分1敗と再び失速した。第16節の水戸戦で心もとないながらも勝利を収めたのをきっかけに、チーム状態は徐々に手応えを感じさせるものになり4連勝。ところが、第20節に川崎との直接対決で再び敗れると、続く仙台戦で引分け。さらに前期最終戦では1勝しか挙げていなかった札幌に3ヵ月半振りの勝利をプレゼントしてしまった。

 とにかく勝ちきれない試合が続く。その原因が決定力不足にあることは改めて説明する必要はないだろう。22試合のほとんどで主導権を握って戦い、毎試合、決定的なチャンスをいくつも作り出した。しかし、欲しいときに欲しいゴールが生まれなかった。無得点試合が9(4分5敗)、1点試合が3(1勝2分)、2点以上ゴールしたのが10試合(8勝1分1敗)という成績は、その内容とは余りにもかけ離れている。

「勝ち点は、あと10点以上はあった」(松田監督・第22節札幌戦終了後のコメント)。その言葉通り、勝てなかったどの試合も福岡が勝てる試合だった。1点を取っていれば、あるいは2点目を挙げていれば、順位も戦績も全く違うものになっていたはずだ。しかし、22試合を消化してなおゴールが奪えない現実は、運の悪さや、相手のファインプレーに説明が求められるものではない。「これが力かなということも受け止めなければいけない」(松田監督)。現実を正面から受け止めてやり直すしかない。



「自分の役割のところはもっと意識をシビアに持って、自分の持ち場のところを突き詰めてやることがチームの結果につながる」。第1クールを終えた時点で、松田監督は本来の力が結果に結びつかない選手たちに、そう指示を与えた。やっているサッカーは間違っていない。取り立ててどこが悪いというほどの修正点もない。あとは最後のところのちょっとした部分を踏ん張れるかどうかだけ。だからこそ、より以上突き詰めることを求めた。

 DF面を見れば、かなり安定感が増したと言える。第1クールの11失点を8失点に減らし、完封試合も2試合から5試合に増やした。序盤戦では、一方的に試合をコントロールしながら、何気なくボールを奪われ、突如として決定機を作られるシーンが気になったが、そういうシーンは見られなくなっている。第20節の川崎戦での1失点は交通事故のようなもの。札幌戦での失点も相手をほめるべきもので、DF事態は十分に計算が出来ると言っていいだろう。

 やはり問題は攻撃面。数字で見ると、第1クールの18得点に対し、第2クールは11得点。無得点試合は3から6に増えた。中盤でシンプルにボールをつないでサイドへ展開するという基本的なやり方は何も変っていない。その結果、チャンスや決定機については、第1クール同様、数多く作れている。昨シーズンの後半のように、裏へ抜け出すチャンスは減っている印象があるが、対戦相手が徹底的に守備重視できていることを考えれば、それも許容範囲だ。

「最後は気持ちの問題」。これも松田監督が22試合を通して言い続けてきたことであるが、やはり、ゴールをこじ開ける気迫のようなものが、まだまだ薄い。ゴール前でボールをもらう選手も、クロスを送り込む選手も、ここ一番の集中力に欠ける印象がある。そして、ゴールが生まれない現実が、いらぬプレッシャーとなり、それが悪循環しているかのようだ。対戦相手はゴールを死守することに全精力を注いでいる。そんな相手に対し、技術・戦術だけで立ち向かっても結果は出ない。



 そんなチーム状態を象徴するような試合が第2クールには2つあった。まずは第12節の京都戦だ。その前の第11節に行われた川崎Fとの対戦で、福岡はその時点で最高のパフォーマンスを見せた。それはチームの力が本物であり、その力をようやく発揮できる体制になったことを意味していた。残念ながら試合には敗れたが、一気に混戦模様のJ2から抜けだすきっかけを掴んだ試合でもあった。

 そういう中で迎えた京都との対戦は、調子の出ないJ1昇格のライバルを蹴落とし、反転上昇するターニングポイントでもあった。サポーターも気持ちは同じ。博多の森には今シーズン最高となる14,239人が駆けつけた。ところが、そこで福岡が見せたサッカーは、とても、ここ一番にかけるメンタリティを持ち合わせたものではなかった。「0−0で勝ち点1というのは大きいかなという印象のほうが強い」。松田監督の表情に悔しさが滲んだ。

 そして、もうひとつは第22節の札幌との対戦。ホームで迎える前期最終戦。J1自動昇格圏内である2位確保がかかる試合。そして、13,255人の観衆の声援を浴びてのプレー。この試合も、福岡にとっては大きな意味を持つ試合だった。しかし、蓋を開けてみれば気迫に欠く立ち上がり。不器用ながら必死に戦う札幌とは対照的だった。確かに試合の主導権は握った。しかし、勝利に対する気持ちが表に出せないチームが勝てるほどプロの世界は甘くない。

 極論すれば、この2試合はどんなことをしてでも勝たなければいけない試合だった。チームの置かれた状況を考えれば、単なる1勝ではないことは容易に理解できたはず。その重要な試合で、相手を押し込む気迫を見せられず、いつもと同じような戦い方で勝ち点を失った。結果はもちろん、そのメンタリティが残念だった。「平均年齢が一番若いチームと言ってしまえばそれまでかもしれませんけれど、それはもう受け止めてやるしかない」。松田監督は選手をかばったが、それを克服しなければJ1のゴールは見えてこない。



 確かに福岡は力を持っている。J1昇格争いの主役になる資格があることは変らない。対戦相手のチーム関係者は、いまも福岡を最も警戒していることだろう。しかし、福岡には怖さとか、強さが足りない。相手をギリギリまで追い詰めながら、最後の一押しをする気迫が薄いからだ。もちろん、決定力不足ということが大きいのだが、それ以外でも、どこかで相手に反撃の糸口を与えている。それが勝ちきれない状況を生み出す一因にもなっている。最後まであきらめない相手ほど厄介な敵はいない。

 その解決の方策として、福岡は契約満了に伴い退団したベンチーニョに代えて、攻撃系のエジウソン・ジョゼ・ダ・シウバを獲得した。もちろん、決定力不足の解消を最大に考えた結果の補強だ。しかし、それだけでは状況は変らない。「現有戦力でもっと決定力を上げるということを一人一人が取り組んでいくことが大事」(松田監督)。全員が強い気持ちを持って勝負に挑んでこそ、この補強が生きる。

 幸いなことに、これだけ不本意な戦いを続けても順位は4位。2位の大宮との勝ち点差は1しかない。スタートダッシュで抜け出すというもくろみは外れたが、J1昇格の可能性は、いまもまだ十分すぎるほど残されている。これまで積み重ねてきたことに対し、サッカーの神様が与えてくれた最大のプレゼントだ。逆を返せば、「(決定力不足という)その辺が解決できれば、J1昇格というものが現実のものになるという気がした前半戦」(松田監督)。勝負はまさしくこれから始まる。

 サポーターもファンも、そしてメディアも腹はくくっている。今年は、ただ勝利だけを信じて出来るだけのサポートをする気持ちは固まっている。札幌戦終了後に起こったブーイングも、そんな気持ちの裏返しだ。チームも、選手も、サポーターも、メディアも、みんな発展途上の集まり。だからこそ、怖がらずに、受けて立たずに、真正面からみんなでチャレンジするのが福岡のスタイルだ。そのスタイルを相手に思い切りぶつけよう!その先にJ1のゴールがあることを信じて。さあ、そろそろ本領発揮と行こう!!
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