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 福岡通信 04/08/31 (火) <前へ次へindexへ>
何が何でもJ1へ。サポーターは熱い思いで選手の背中を押す。

 一喜一憂しても始まらない。勝負はここからだ。
 2004Jリーグ ディビジョン2 第31節 アビスパ福岡vs.モンテディオ山形

 文/中倉一志
2004年8月29日(日)19:00キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆:7,904人 天候:曇
試合結果/アビスパ福岡0−1モンテディオ山形(前0−0、後0−1)
得点経過/[山形]大島(89分)


 バックスタンドに陣取るサポーターの声援に合わせて、メインスタンドから手拍子が起こる。残り時間は5分足らず。その声援と手拍子は選手たちを後押しし、ピッチの上のイレブンは最後の力を振り絞って山形ゴールを目指す。山形がゴール前に作る最後の厚い壁を全員の力で突き破ろう。そんな空気が博多の森を包み込む。ゴールが奪えるかもしれない。記者席でそんなことを感じていた。しかし、予想もしない結末が用意されていた。

 提示されたロスタイムは3分。そのロスタイムも2分を経過しようとしていた時だった。林晃平(山形)から永井にボールが渡る。独特の間合いで永井がドリブルで仕掛ける。福岡の最終ラインは人数がそろっている。十分対応できるかと思われた。しかし、一瞬の躊躇が後手を踏んだ。ペナルティエリアに入り込む永井。永井に身体をぶつけることができず、ズルズルと下がる福岡。そして永井はゴール前へラストパス。あとはフリーになっていた大島がゴールに流し込むだけでよかった。



スタンドに広げられた紙製のマフラーは選手とともに戦う意思表示だ。
 試合は、予想通りの展開だった。抜け出すというよりも、サバイバルレースの感が強い2位争い。負けられないという気持ちが両者に働いたのは仕方のないことだった。しかも松田浩(福岡)監督も、鈴木淳監督(山形)も、まずは安定した守備をベースに戦いを仕掛けるタイプ。試合が我慢比べになるのは覚悟の上のことだったろう。互いに高い最終ラインを敷いてコンパクトなゾーンを形成。プレスを掛け合い相手の良さを潰す展開が続く。

 チームバランスの良さなら、J2で1、2を争う福岡と山形。そんな両チームがリスクを抑えて戦えば、ともにチャンスを作ることは容易ではない。集中力を高めて相手の攻撃を潰し、そして僅かな隙も見逃すまいと神経を張り巡らす。どちらかが攻めれば、そのためにできたスペースを使って、もう片方が攻め返す。不用意な仕掛けは命取りになりかねないギリギリの中での攻防は7,094人の観衆の目を引き付けていく。そして、0−0のまま前半が終了した。

 高度なレベルでの膠着状態が続く。しかし、どちらのチームにも必要なのは勝ち点3。どちらが、いつ仕掛けるのか。それが後半の見所だった。試合を決するのは1点。仕掛けどころを間違えれば、それは、そのまま敗戦に結びつく。両監督にとって難しい選択だった。そんな中、松田監督が動く。時間は47分、松田監督のファーストチョイスはエジウソンだった。林祐征に代えての投入は、エジウソンのキープ力と打開力を期待してのものだった。

 だが、試合の流れは山形に傾く。「中盤でボールが回るようになってきて、サイドからの攻撃を何とかしかけられるようになってきた。若干、中盤のところでうちの運動量が優っていた」(鈴木監督)。少ないタッチでボールを回す山形は大島にボールが納まりだす。それに呼応して右サイドが積極的に押し上げていく。そして56分、根本に代えて林晃平を投入。トップ下を豊富な運動量で動き回り、刻み始めたリズムを大切にしながら攻撃をフォローする。膠着状態だった試合が初めて動き出した。



スタンドに駆けつけた全ての人が福岡の勝利を願う。
 しかし、ここは俗に言う「危険な時間帯」。福岡の選手たちは細心の注意を払ってゴールを守る。そして試合が再び膠着状態に陥った61分、福岡は宮崎を下げて山形恭平をピッチに送り出す。フレッシュな足を入れて主導権を奪いに行く狙いだ。しかし、山形の守備は崩れない。さらに72分、福岡は最後のカードを切って勝負に出る。米田をベンチに下げてワンボランチに。宮本をCBに、藏田に代わってCBを務めていた増川をFWの位置に動かして、アレックスを左SBに入れた。エジウソンは2列目からチャンスを窺う。8月に入ってから「とにかく無失点で行くことが大きな目標」と口にしてきた松田監督が、敢えてリスクを負って勝負に出た。

 点を取りに行く姿勢を鮮明に打ち出した福岡。しかし、山形は予想以上に粘り強い。松田監督の積極的な采配にもかかわらず、事態は好転しない。打ち破れない膠着状態。我慢比べは延々と続いていく。79分、山形は大塚に代えて秋葉を投入。中盤の運動量を維持してバランスを整える。さらに88分には宮沢に代えて川崎健太郎。こちらも疲れの見える中盤に活力を与えるための交代だった。それでも動かないゲーム。両チームのサポーターの頭の中には、「引き分け」という文字が、ちらつきはじめた。

 そんな中、永井の動きが変化していた。この時間帯まで、攻撃的という意味では、ほとんど仕事をしていなかった永井だが、秋葉の投入後、中盤の底から前に上がってくることが増えたのだ。「残り時間が少なかったし、どっちが先に点を取るかという展開だったし、今日は勝ちたかったし。」(永井)。記者席から見ていると気になる動きだった。だが、福岡の対応もしっかりしている。大袈裟なことにはならないだろうと思ったのだが・・・。

 バックスタンドに陣取るサポーターの声援と、それに合わせてメインスタンドから自然発生的に起こった手拍子に後押しされて福岡が最後の気力を振り絞って攻めているときだった。示されたロスタイムは3分。スタジアムが一体となってゴールを目指しているときだった。スローインが林から永井へ。そして待ち受ける福岡DFの間をすり抜けてペナルティエリア内に入り込んだ。この時点で勝負はあった。手元のストップウォッチは92分6秒を刻んでいた。



下を向く必要はひとつもない。勝負はこれからだ。
 この日の福岡は藏田が累積警告で出場停止のため増川をCBで起用したが、増川は、その代役を見事に果たした。増川が中央で堅固な壁を築いたことで、山形の攻撃が機能しなかったといっても過言ではない。その反面、増川が外れた攻撃面では、太田、林の2トップがボールをキープすることが出来ず、それが、両サイドからの攻撃を仕掛けられなかった原因にもなっていた。今シーズンの福岡における増川の重要性が改めて浮き彫りになった試合だった。

 また、この日の2トップに苦言を呈するのならば、14分、古賀からの低く鋭いフィードを受けて太田がDFラインの裏側に飛び出したシーン、さらに古賀からのスローインを受けた太田がGKと1対1になった16分のシーン、。そして、宮本からのフィードで林が裏を取った32分のシーンで、せめて1点はゴールを決めなければいけなかった。堅固な守備をベースに少ないチャンスを決めるというのが福岡のスタイル。一瞬のチャンスを躊躇せずに打ち抜く姿勢がなければ勝ちは遠い。次の出場機会には是非、FWらしいところを見せて欲しい。

 しかし、それなりの問題点があったにせよ、試合をトータルで見た場合、選手たちは現時点で持てる力の全てを発揮していたことだけは間違いない。0−0でも、1−0の福岡の勝利でもおかしくない試合だった。いずれにせよ、ゴールはひとつしか生まれない展開。その1点が最後の最後で相手に行ってしまったという試合だった。悔しい試合だったが頭を下げる試合ではない。大切なことは一喜一憂せず、自分たちの戦い方を見失わないことだ。

 選手交代でエジウソン投入の効果が十分に出なかったのも残念だった。田中佑昌の投入も十分考えられたが、あの時点では福岡はトップにボールを納められておらず、田中を投入したにしても彼のスピードが生きたかどうか。前線に起点を作るという目的と、展開力を考えてのエジウソンの投入だったのだろう。エジウソンのコンディションがフィットしていなかったこともあって局面を打開することが出来なかったが、それも結果論に過ぎない。



バックスタンドに移動したエスコティーバ。ウルトラ・オブリとともに
行った応援はスタンドを巻き込んで博多の森をひとつにまとめた。
 さて、真夏の8月に7試合も戦うというハードなスケジュールで、2位争いから脱落するチームが出てくると見ていたが、終わってみれば、混戦模様には更に拍車がかかった。どうやら、サバイバルレースは最後まで続くと見たほうがいいだろう。福岡を含めて、どこも一気に抜け出す力はない。「どの試合も紙一重という試合ばかりだと思う。ちょっとしたところの差、集中力だったり、そこら辺をしっかり最後まで気を引き締めてやればいい」(山形恭平)。痺れを切らさず、丁寧に勝ち点を拾っていったチームが最後に笑うことになる。マジックなどどこにも存在しない。頼りになるのは、いままで自分たちが積み重ねてきたものを信じきる力だけだ。

 出来なかったことを悔やんでも仕方がない。出来ないことをやろうとしても墓穴を掘るだけだ。出来ることを確実にこなすこと。そして自分たちの力をどのように使えば局面を打開できるかを考えることが、これからは重要になってくる。この日から、メインスタンドで応援を続けていたサポーターグループがバックスタンドに移ったが、それも、自分たちの力を最大限に引き出すための行動だ。このフロント、この現場スタッフ、この選手たち、そして、このサポーターとメディアでJ1に昇格しようと誓ったシーズン。一喜一憂など意味はない。最後まで誓いを忘れずに戦いたい。その結果がJ1昇格につながることを信じて。





記者会見の模様と選手のコメントはJ's GOALでご覧になれます。
鈴木淳監督(モンテディオ山形)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2004-08/00011129.html
松田浩監督(アビスパ福岡)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2004-08/00011123.html
試合後の選手コメント http://www.jsgoal.jp/club/2004-08/00011130.html


(アビスパ福岡) (モンテディオ山形)
GK: 水谷雄一 GK: 桜井繁
DF: 平島崇 千代反田充 増川隆洋 宮本亨 DF: 迫井深也 小林久晃 レオナルド 内山俊彦
MF: 宮崎光平(61分/山形恭平) ホベルト 米田兼一郎(72分/アレックス) 古賀誠史 MF: 星大輔 大塚真司(79分/秋葉勝) 永井篤志 宮沢克行(88分/川崎健太郎)
FW: 林祐征(47分/エジウソン) 太田恵介 FW: 根本亮助(56分/林晃平) 大島秀夫
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