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 福岡通信 04/09/03 (金) <前へ次へindexへ>

 白熱、福岡県ユース(U-15)サッカー選手権大会
 

 文/中倉一志
 降り注ぐ強い日差しと、じっとしているだけで汗が出てくるほどの暑さの中で、中学生年代の選手たちが熱い戦いを繰り広げている。第16回福岡県ユース(U-15)サッカー選手権大会兼高円宮杯第16回全日本ユース(U-15)サッカー選手権福岡大会。中学校とクラブチームが同じ土俵で戦うことのできる唯一の大会だ。中学3年生にとっては「最後の夏」。これまで積み重ねてきたものの全てをぶつけてボールを追いかけている。

 大会には、(社)福岡県サッカー協会の各支部の予選を通過した北九州5、福岡4、筑豊2、筑後3の合計14チームに、(社)福岡県サッカー協会中学委員会と、同クラブ委員会が、それぞれ推薦した1チームずつを加えた16チームが参加。一発勝負のトーナメント戦で優勝を争う。試合時間は30分ハーフ。引分けの場合は1回戦はPK戦、2回戦以降は10分ハーフのVゴール方式の延長戦を行い、それでも勝負が決しない場合はPK戦で決着をつける。

 8月28日に行われた1、2回戦を勝ち抜いて準決勝に駒を進めてきたのは、中学委員会推薦の諏訪中学、筑後支部予選1位の八女FC、北九州支部予選1位の小倉南FC、そしてクラブ委員会推薦のアビスパ福岡U-15の4チーム。いずれも各ブロックの強豪チームが順調に勝ちあがってきた。その中でも圧倒的な強さを発揮しているのがアビスパ福岡と小倉南FC。アビスパ福岡は10得点無失点。小倉南FCは10得点1失点と相手に付け入る隙を与えていない。

 中学校として唯一準決勝に進出してきた諏訪中の検討も光る。かつてはスポーツの普及の中心を担っていた中学校も、指導者不足と深刻化する生徒の部活離れという現象で、その面影は薄れている。その影響で、この年代では実力的にはクラブチームがまさっているのだが、不戦勝で臨んだ2回戦では、筑豊支部予選1位のライジングスターズに0−2の劣勢から逆転勝ちして準決勝までやってきた。クラブチーム相手にどこまでやれるかが注目される。



 8月29日、本城運動場(北九州)で行われた準決勝第1試合では、諏訪中と八女FCが顔を合わせた。基本的にはクラブチームらしい技術を駆使する八女FCが攻め、諏訪中が守るという展開。しかし、序盤はどちらが有利ということはなく、膠着状態が続いていた。そんな中、先制点が諏訪中に生まれる。時間は16分、右サイドからのアーリークロスが風に乗ってそのままゴール方向へ。高い位置から落ちてくるボールは、懸命にジャンプするGKの頭上を越えてゴールマウスに吸い込まれた。

 この1点で試合が動き始めた。八女FCはトップ下にボールを集め、そこからのラストパスを受けるFWと両サイドの選手が個人の力で突破を図る。対する諏訪中は粘り強い守備でゴールを守り、奪ったボールをサイドへ集めて相手をひきつけてからサイドチェンジ。大きく開いた反対側のスペースを使ってカウンターを仕掛ける。個人の力を前面に押し出す八女FCと、チームでカウンターを狙う諏訪中という対照的な戦い方で試合が進んでいく。

 24分、諏訪中に2点目が入る。左サイドからゴール前に放り込んだボールが、1点目と同じく風に乗ってGKの頭上を越えてゴールマウスに吸い込まれた。その1分後、八女FCも1点を返して追撃体制を整えたが、後半開始直後の32分、諏訪中はまたも同じような形から追加点を奪う。さすがにこの1点は大きかった。前がかりにならざるを得ない八女FCに対し、諏訪中は見事なカウンターを仕掛けて2点を追加。終盤に八女FCが2点を返したが、さすがに追いつくことはできなかった。

 後半、個人の突破力を前面に出して攻撃を仕掛けた八女FCの攻撃は迫力があったが、それ以上に諏訪中の粘り強い守備が光った。相手の突破に対しては必ず2人で対応。攻め込まれても最後の局面では決して相手に自由を与えなかった。そして、攻めるシーンは決して多くはなかったが、シンプルにボールを運ぶカウンター攻撃が実に効果的だった。「1年間かけてしっかり走りこんできた。最後まで走り抜こうというのが一番大切なところだと考えていた」(古賀一英監督・諏訪中)。その言葉通り、走り抜いた末の勝利だった。



 さて、準決勝第2試合では小倉南FCとアビスパ福岡が対戦。今大会の事実上の決勝戦とも言えるカードとなった。小倉南FCは福岡県では知る人ぞ知る存在。創部22年の伝統を持つクラブは、幼児から中学生まで総勢760名を抱え、数々の実績を誇る大クラブだ。ジュニアユースは結成6年目。九州第3代表として初出場を果たした今年の全国クラブユース(U-15)選手権ではベスト8に進出。その実力は全国レベルにある。このカテゴリーでは圧倒的な強さを誇るアビスパ福岡も気を許せる相手ではない。

 試合は立ち上がりから高いレベルの戦いを展開する。高く上げた最終ライン。激しくプレッシャーを掛け合うコンパクトな中盤。早い攻守の切り替え。そして高い個人技。どれをとっても他のチームの1枚も2枚も上を行くレベルだ。ゴール前のシーンが少ないのは、中盤でギリギリの攻防を仕掛けあっているため。ほんの一瞬でも隙を見せれば、それは確実に失点につながる。どちらも高い集中力で凌ぎあう緊張感あふれる戦いが続く。

 11分、僅かな隙をついて先制点を奪ったのはアビスパ福岡。そして、ここから主導権はアビスパ福岡が握る。相手を上回る激しいプレッシャーで小倉南FCの攻撃を完全に封じ込めた。「全国大会で結果を出せず、子供たちに何とかしなくてはという思いがあった。全国大会の反省から、(高い位置からプレッシャーをかける)そこをやりましょうということ」(有吉和哉監督・アビスパ福岡)。小倉南FCとともに参加した全国クラブユース(U-15)選手権ではグループリーグで敗れた。負けてたまるかという思いも強かったのだろう。

 しかし、小倉南FCも譲らない。後半に入ると再び高い位置でプレッシャーを掛け合う展開に。小倉南FCが攻めればアビスパ福岡が守り、小倉南FCが下がればアビスパ福岡が前に出る。一進一退の攻防は一瞬たりとも目が離せない。そして49分、とうとうアビスパ福岡が試合を決める2点目を奪った。粘る小倉南FCは終了間際に決定機を作ったが、逆に59分、アビスパ福岡が駄目押しの3点目を奪って小倉南FCを突き放した。最終スコアは3−0。しかし、非常に緊迫した中身の濃いゲームだった。



「中学校最後の大会なので、最後まで頑張ってもらいたいなと思っていた。ここまで来られて本当に良かった。とてもすごいチームと、こういう場で本気で試合ができるというのが子供たちにとって一番の思い出。最後もまた自分たちらしいサッカーをしてくれればいい」(古賀一英監督。諏訪中)。
「ただ蹴るんじゃなくて状況判断してしっかり動かすことができるようになるのが本当の目的。しかし、まずは守備のところで相手にサッカーをやらせないということをしっかりやる。勝つことは大事ですけれど、それと同じくらい、1人、1人が伸びていってくれることが大事」(有吉和哉監督・アビスパ福岡)。

 両チームの監督は決勝戦に向けての思いを口にする。過去5年で4回の優勝を飾り、今年は3連覇がかかるアビスパ福岡の優位は動かないが、そんなアビスパ福岡に対して、諏訪中が持ち前の粘り強さと、得意のカウンターでどこまでやるかは興味深いところ。アビスパ福岡の激しいプレッシャーを、どうやって潜り抜けるかが一番のポイントになりそうだ。サイドに寄せておいて大きくサイドチェンジする得意のパターンは意外と効果を発揮するかもしれない。

 決勝戦は9月5日(日)、午前9:30に博多の森球技場でキックオフされる。この日は同会場で午後13:00から福岡県サッカー選手権大会兼天皇杯福岡代表決定戦も行われる。福岡県のチャンピオンを決める試合が2つも観られる贅沢な1日でもある。サッカーファンなら足を運ばすにいられない日になるはずだ。是非、スケジュールを調整して彼らのプレーを覗いてもらいたい。
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