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 福岡通信 04/09/19 (日) <前へ次へindexへ>

 遅くなりましたが、福岡県サッカー選手権大会
 

 文/中倉一志
 皆さんにご紹介するのが少々遅くなってしまったが、今回は去る9月5日に行われた、第8回福岡県サッカー選手権大会(第84回天皇杯全日本サッカー選手権大会代表決定戦)の模様をお伝えしようと思う。先週も少し触れたが、この日の博多の森球技場では、午前中に第16回福岡県ユース(U-15)サッカー選手権大会決勝戦が行われるという贅沢な一日。そのせいもあって、スタンドには例年よりも大勢のファンが訪れている。

 決勝戦で顔を会わせるのは九州大学リーグ1部に所属する福岡大学(以下、福大)と、同じく九州産業大学(以下、九産大)。春先に行われた九州大学選手権では、それぞれ、準優勝と3位。ともに九州の大学サッカー界を牽引するチーム同士の対戦となった。ホーム側に陣取るのは九産大。青色のユニフォームを着た部員たちがメガホンを片手にピッチに声援を送る。アウェイ側の福大はエンジのユニフォーム。スタンドにのぼりを並べて選手たちを鼓舞している。



 福大有利の予想を覆して、試合序盤からペースを握ったのは九産大だった。「球の出所である川田君、前にいる林君、そこで100%の力を出せないように抑えること」(藤原敦監督・九産大)という狙い通り、序盤から福大の攻撃を徹底して押さえ込む。まずはDF首藤選手がFW林幹貴選手を徹底マークして自由を奪い前線での起点を消す。そして、マイボールをシンプルに高い位置へ蹴りだして、素早い出足からセカンドボールを支配した。

「むこうのディフェンスが非常に良くて、こちらがこぼれ球を中々拾えなかった」とは藤井雅人助監督(福大)。福大のパターンは、ボランチに位置するMF川田選手を中心にしてボールを裁き、1トップの林幹貴選手が前線で起点を作るというもの。林幹貴選手の周りを衛星のように動き回るMF林賢志選手が裏へ飛び出し、2列目を自由に動き回るMF相良選手とMF和泉選手が2トップをフォローする。そして、開いたスペースを利用して前に攻め上がるのはMF衛藤選手だ。しかし、セカンドボールを支配されては、その分厚い攻撃も影を潜めたままだ。

 攻撃の手数は福大が上だ。しかし、シンプルに前に蹴り、そのこぼれ球を徹底的に拾うという九産大のペースに福大は完全に飲み込まれた。中盤でのプレッシャーの掛け合いでも福大は九産大に一歩遅れる場面が増えていく。試合は0−0で前半を折り返したが、放ったシュートは福大の2本に対して九産大の7本。九産大が3つの決定的なチャンス作ったの対し、福大はチャンスらしいチャンスを作れないままに前半を終えた。九産大は狙い通りの試合展開でゲームのペースを握っていた。



 後半開始直後の47分、その九産大に待望の1点が生まれる。左サイドをオーバーラップしてきたDF松井選手が二アサイドへクロスボールを送ると、そこへ雪丸選手が飛び込んでゴールネットを揺らした。「(福大の)高いディフェンスを破るには、サイドから崩して二アに飛び込んで点であわせるしかないかなと思っていた」(藤原監督)。試合の進め方も狙い通りなら、得点の形も狙い通り。ここまでは九産大は完璧といえるまでに自分たちのサッカーを展開していた。

 しかし、この1点で目覚めたのは福大だった。両サイドから積極的に仕掛け、1トップの林幹貴選手を追い越して、和泉選手、相良選手の両MFがどんどん裏へ飛び出し始めた。そして55分、MF林賢志に代わってJリーグ特別強化指定選手のFW田代選手がピッチに登場。システムを4−4−2に変更すると、福大の攻撃は更に厚みを増す。前半は徹底してセカンドボールを支配していた九産大だったが、中盤の主導権を福大に明け渡さざるを得なかった。

 暑い中、ここまで徹底的に走り回ってプレスをかけ、そしてセカンドボールを拾っていた影響が出たのだろう、九産大の運動量が目に見えて落ちていく。セカンドボールを福大に支配され、後方に押し込まれる展開が続く。試合は一方的な福大のペースになった。68分、MF相良選手のシュートがポストをかすめる。76分、再びMF相良選手のミドルシュートがゴールを襲う。そして80分、裏へ飛び出したMF衛藤選手がゴールネットを揺らして福大は遂に同点に追いついた。それでも必死の粘りを見せる九産大は追加点を与えず。試合は延長戦へともつれ込んでいく。



 ここまでの流れから見れば、福大有利は動かない。「みんな笑って帰ろうぜ」。延長戦に備えて身体をほぐす福大の選手たちの間から、そんな声がかかる。昨年の決勝戦では、同じように延長戦にもつれ込んだ結果、最終的には福岡教育大学のVゴールの前に屈した福大。今年も同じことを繰り返すわけにはいかない。しかも試合の流れは福大が握っている。延長戦に入った緊張感より、必ず勝つという強い意志が選手たちの間から感じられる。

 しかし、九産大も再び粘りを見せる。残り時間は最大で20分(10分ハーフのVゴール方式の延長戦)。ここまで来て、みすみすやられるわけには行かないのは九産大も同じこと。最後の力を振り絞って決勝点を取りに行く。福大の右サイドからの攻撃を左SBの松井選手が驚異的な運動量でことごとく凌ぐと、周りもそれに応えるように疲れた身体に鞭打ってゴールを目指す。そして99分、左サイドからのクロスボールに雪丸選手が合わせる。しかし、無常にもボールはポストの左にそれた。

 押し気味に進める福大。必死に粘って反撃を試みる九産大。試合は全くの五分で進んでいく。福大の決定機は101分。延長戦から途中出場したFW白木選手のシュートを放つ。しかし、これはGKの正面に。九産大の決定機は105分。ゴール前、絶好の位置でボールを受けたMF守山選手がワンフェイク入れてDFを交わして右足を一閃。決まったかと思われたが、これはGK赤星選手がファインプレーを見せてゴールマウスの外へはじき出した。

 一進一退の攻防が続く延長戦は、PK戦の雰囲気が漂っていく。そんな中、福大がCKのチャンスを得る。残り時間はすでに1分を切っている。おそらく、両チームを通じてこれが最後のチャンス。スタジアムには緊張感に包まれる。右コーナーから放たれたボールがゴール前へ。FW田代選手が飛び込んだがヒットできずにゴール前は混戦に。そして、転倒したままの田代選手が懸命に伸ばした足にボールが当たり、ゆっくりと、しかし確実にボールがゴールマウスに吸い込まれた。



「ヘディングにいったんですけれどかすっただけで。その後は倒れてしまって良くわかりません。身体がただ動いただけです」。執念とも言える決勝ゴールをたたき出した田代選手は満面の笑みでゴールシーンを振り返った。特別強化指定選手としてサガン鳥栖でプレーしていため大学の練習から離れていたこともあり、この日は後半からの出場。しかし、その実力を遺憾なく発揮した。春の大学選手権では決勝で退場になり悔しい思いをしていただけに、この勝利の味は格別だっただろう。

 それにしても、「福大強し」を印象付ける試合だった。先制点を喫するまでは完全に九産大のペース。福大は九産大が目指すサッカーに飲み込まれ全くいいところがなかった。追いついた後も、九産大の粘りの前に2点目が奪えず、延長戦では再び五分と五分の勝負を強いられた。春の九州大学選手権でも、同じような展開で日本文理大に敗れていたこともあり、再び春の悔しさを繰り返すのではないかとも思えた。しかし、選手たちは逆境の中で本領を発揮して3年ぶり22回目の天皇杯出場権を獲得した。

「むこうのディフェンスが非常に良くて、こぼれ球を拾えなかった。そこをうまく調整できたということ。最終的には厳しい練習をしているほうが勝つ。気持ちを強く持って練習するように学生全員が心がけていたので、最終的にはそれが結果に結びついた」。大学選抜のトレーニングのために不在だった乾監督の代わって指揮を執った藤井雅人助監督は、喜びを爆発させる選手地の横で淡々と試合を振り返った。それは、どこにも負けないだけのものを積み上げてきたという自信の表れだったのだろう。

「1点目が入るまではプラン通りのゲーム。もしリードされていたとしても、DF首藤を頭に持ってきてということも考えていた。しかし、何人が足がつって選手を変えなければいけなかったので、戦術的に交代ができなかったのは仕方なかった」とは藤原敦監督(九産大)。勝機はあっただけに悔しさがつのる。しかし、選手たちの戦いはこれで終わったわけではない。「なんとか優勝させてやりたかったんですけれど、また勉強しなおしてやり直してきます。リーグ戦でこの屈辱を晴らしたいと思います」(同)。雪辱を誓う九産大の秋のリーグ戦の戦いに期待したい。


(九州産業大学) (福岡大学)
GK: 村口良平 GK: 赤星拓
DF: 松井雄平 出田淳二 首藤崇浩 西岡祐介(70分/柳田薫) DF: 千原翼 長野聡 登尾顕徳
MF: 山田浩久(86分/花田卓也) 寺戸真哉 前田武志(81分/宇陽裕司) 森山寛光 MF: 樋口大輝 川田和宏 衛藤裕 和泉徹也(72分/山内祐一) 林賢志(55分/田代有三) 相良浩二
FW: 雪丸慎太朗 永嶺貴彦 FW: 林幹貴(95分/白木千吉)
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