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 福岡通信 04/09/21 (火) <前へ次へindexへ>

 最後の10試合。もう一度、力を合わせよう。
 2004Jリーグ ディビジョン2 第34節 アビスパ福岡vs.横浜FC

 文/中倉一志
2004年9月18日(土)19:00キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆:8,569人 天候:雨のち曇
試合結果/アビスパ福岡1−2横浜FC(前0−2、後1−0)
得点経過/[横浜]城(15分)、北村(22分)、[福岡]林(89分)


 15勝7分11敗の勝ち点52。福岡は2位の大宮に勝ち点2差の3位で第4クールを迎えた。いつかは波に乗れるはず。そう信じて戦ってきた2004年シーズンだったが、福岡はポイントとなる試合でことごとく敗れ、欲求不満を抱えたままシーズンの4分の3を過ごした。「決定力不足」「クロスの精度が低い」「0で抑えればチャンスが来る」。松田監督は記者会見の席で何度となく繰り返したが、福岡は課題を解消できないままに時を過ごした。

 しかし、幸いなことに2位争いを繰り広げるライバルチームも勝ちきれないという意味では福岡と状況は変わらない。その結果、J1昇格争いは、僅かな勝ち点差の間に6チームがひしめき合うという、これまでにない混沌とした状況に置かれている。どのチームもある程度の守備力は持ち合わせても、相手を突き放すだけの攻撃力には欠けている。どこも抜け出せず、どこも脱落せず。どうやら、この状況は最後の最後まで続きそうな気配を見せている。

 だからこそ勝ちたかった。第34節、ホームの博多の森で迎えた横浜FC戦。第4クールの初戦で勝ち点3を積み重ね、2位の大宮をピタリと追走し、3位以下のチームに差を詰めさないことで、J1昇格レースを有利に展開したかった。フロントも、チームも、サポーターも、そして我々地元メディアも、そう強く願っていた。試合の立ち上がりは決して悪くはない。むしろ、入り方としてはいいほうだったと言える。しかし結果は1−2。福岡は手痛い一敗を喫した。

 ポイントは試合の立ち上がりだった。この試合、福岡は気迫ある立ち上がりを見せた。太田と増川が縦に並んでバランスを取り、太田へ当てて裏へ飛び出すパターンと、増川に楔のボールを当ててサイドに展開するパターンを併用。いい形で攻撃のリズムを刻んだ。4分に増川のヘディングシュートが右ポストを叩いたのをはじめ、いくつものチャンスを作り出した。しかし、これを決めきれない。結局は、これが最後まで尾を引く形になった。



 サッカーの試合では、よほどの力の差がない限り、片方のチームが押し続けることはない。いいリズムを刻んでいても、そのまま攻め続けられるのは15分程度。この間に決定的な仕事ができなければ、リズムは相手に移るものだ。案の定、立ち上がりのピンチを凌いだ横浜FCが10分を過ぎた辺りから息を吹き返してくる。やがて、試合は横浜FCがリズムを掴む。

 横浜FCのサッカーはそれほど攻撃的ではない。しかし、ここまで34失点という数字が示すようにチームのバランスはいい。福岡がボールを持つと素早く下がって守備組織を形成。太田と増川にはトゥイードが完璧にマークをして仕事をさせず、前線がボールを追うと素早くラインを上げてコンパクトなゾーンを形成する。前線でボールを引き出す城。その回りを走り回る北村。攻守のつなぎ役をこなす小野と内田。虎視眈々とサイドアタックを狙う大友と吉武。横浜FCは狙い通りに試合を進める。

 15分、ハーフウェイライン付近にこぼれたボールを拾った北村が、上手く身体を入れ替えてゴールへ向けてドリブルで突進。GKと1対1の状況から中央でフリーになっていた城へ。がら空きのゴールへ城がボールを流し込んだ。この1点が福岡に大きくのしかかる。リズムを崩した福岡はボール支配率では上回るものの、パスミスを連発。攻撃の形を作れない時間が続く。そして22分、福岡のパスミスをカットした北村が、そのまま持ち込んでゴールネットを揺らした。

 チームが機能しない福岡は後半の頭から、藏田、古賀に代えて宮崎、林を投入。増川をCBの位置に動かす。さらに75分、松下を下げてワンボランチに変更。投入した田中をサイドに置いて山形をトップ下に持ってくる。福岡がようやくリズムを刻みだしたのは残り10分となってから。しかし、時間が足りなかった。89分には林がゴールを決め、その後は増川を前線に上げてパワープレーに出たが、横浜FCを慌てさせただけで同点ゴールを奪うことはできなかった。



 さて、福岡vs.横浜FC戦の翌日に、大宮が甲府を破ったことで、福岡の2位確保は現時点での数字だけを見れば厳しくなった。そういう状況を受けて、ファンやサポーターの中からは、ここへ来て悲観的な声が聞かれるようになっている。単に2位との勝ち点差が広がったということだけではなく、第32節の鳥栖戦以降、同じような戦いを繰り返している試合内容に閉塞感が高まっていることも原因のようだ。しかし、悲観的な声を発するには、あまりにも早すぎる。

 第3クールの勝ち点は、大宮、山形、仙台が19、福岡、京都が18、甲府が16と、その差はほとんどないに等しい。ある意味では、甲府が大宮に敗れたことは数字の上でも裏付けられていると言える。力関係は全くの五分。松田監督が言うように、「どこのチームにも負けるし、どこのチームにだって勝てる」というのが、福岡だけではなく、現在の6チームの現状を表している。しかも、ライバル同士の対戦はこれから。星の潰し合いはあっても、どこかのチームが一方的に勝つことは考えにくい。

 また、33試合を積み重ねたことで、チームが組織として熟成する時期を迎えるのが第4クール。順位の上では下位に甘んじているチームが組織として機能することは珍しいことではない。ましてや対戦は4順目。下位チームが上位チームの弱点を徹底的について、この試合だけは負けないという戦いをしてくることは常套手段だ。加えてJ1昇格のプレッシャー。上位チームは今まで以上に勝ち星を挙げるのが難しくなる時期でもある。

 そんな戦いの中で最も重要になるのは、試合の結果に一喜一憂しないということ。敗戦のショックを引きずらず、次の試合のことだけを考えて万全の準備を重ねることだけだ。ひとつ、ひとつの試合も、今まで以上に我慢比べの様相を呈することになるだろうが、辛抱強く試合を進めることも求められる。そして何より諦めないこと。力関係で差が付かない以上、最後は、どれだけ勝ちたい気持ちを強く持つかで勝負は決まる。



 正直に言って、J1への昇格が、ここまで苦しいものだという認識は私にはなかった。なぜなら、実力的には福岡は抜けており、しばらく混戦が続くにしても、いずれは抜け出すだろうと考えていたからだ。そういう意味では、とても思い通りに戦えているとは言い難いが、いまさらそれを指摘したところでどうなるものではない。目の前にあるチャンスを掴むための最大限の努力をすることが、我々のしなければいけないことだろう。

 もちろん、選手たちにも注文はある。第32節の鳥栖戦以降、福岡は立ち上がりはいいリズムで戦っているが、その後リズムを崩してカウンターからピンチに見舞われるというパターンが続いている。これは何としても修正しなければいけない。ここまで来たら形などどうでもいい。自分たちが押し込んでいる時間帯に何としても点を取ることだ。逆転昇格の前提条件には先制点は欠かせない。身体ごとゴールにねじ込むような気迫を見せて欲しい。

 そして、もう一度確認したいことは、今年はJ1に上がるということだけを目標に戦っているということだ。フロントは考えうる全ての施策を打ったか。現場スタッフ・選手は、これが最後と言うだけの悔いのない戦いができたか。ファン・サポーターは、これ以上応援ができないというだけの声を上げたか。そしてメディアは福岡をホームタウンに置くチームを育てることに最大限の努力を尽くしたか。残り試合は10試合しかない。後から悔やんでも遅い。

 私自身を含めて、それぞれに、まだまだやれることはあるはずだ。このフロント、この現場スタッフ、この選手、そして、このサポーターとメディアでJ1に昇格しようと誓ったはず。だからこそ最後まで力を合わせて戦いたい。ここまで来たら、どうやって自分たちのできることを最大限に発揮できるかを考えて戦うしかない。あと10試合。死に物狂いで戦うことができるのも後わずかだ。悔いのないよう最後まで戦いたい。その先に必ずJ1昇格の扉は開かれている。


記者会見の模様と選手のコメントはJ's GOALでご覧になれます。
リトバルスキー監督(横浜FC)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2004-09/00011726.html
松田浩監督(アビスパ福岡)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2004-09/00011725.html


(アビスパ福岡) (横浜FC)
GK: 水谷雄一 GK: 菅野孝憲
DF: 平島崇 千代反田充 藏田茂樹(45分/宮崎光平) アレックス DF: 早川知伸 トゥイード 河野淳吾 杉本倫治
MF: 山形恭平 米田兼一郎 松下裕樹(75分/田中佑昌) 古賀誠史(45分/林祐征) MF: 大友慧 内田智也(87分/眞中幹夫) 小野信義 吉武剛(80分/眞中靖夫)
FW: 増川隆洋 太田恵介 FW: 北村知隆 城彰二(85分/大久保哲哉)
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