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 福岡通信 04/10/19 (火) <前へ次へindexへ>

 手に入れた勝ち点3。目指すは6戦全勝。
 2004Jリーグ ディビジョン2 第38節 アビスパ福岡vs.コンサドーレ札幌

 文/中倉一志
2004年10月16日(土)14:00キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆:8,411人 天候:晴
試合結果/アビスパ福岡1−0コンサドーレ札幌(前1−0、後0−0)
得点経過/[福岡]ホベルト(13分)

 評価の難しい試合だった。僅かに残されたJ1昇格への可能性を現実のものにするために勝ち続けなければならない福岡にとって、結果として勝ち点3を積み重ねたことは、これ以上ない収穫だと言える。しかし、試合内容に多少の変化が感じられたとはいえ、大筋で言えば、これまでと変わるところはなかった。得点シーン以外では決定機を作れず、終盤は札幌に押し込まれた。手堅く戦ったとも、突き放せずに苦戦したとも言える試合だった。



 さて試合を振り返ってみよう。「ここまで来たら気持ちの勝負。モチベーションの高い、精神的に乗っている選手がいい仕事をしてくれるはず」。試合前にそう語っていた松田監督は有光をFWに起用した。有光の先発出場は第16節以来。天皇杯でのプレーが評価されての起用だった。エジウソンを起点にして有光のスペースを使うプレーを生かすこと、そして有光がスペースへ動き出すことで新たにできるスペースをワイドの選手に使わせるというのが狙いだ。

「いいというのはなかった」。柳下正明監督(札幌)が試合を振り返ったように、札幌の出来の悪さにも助けられて、福岡は立ち上がりから主導権を握る。高く保った最終ラインで札幌にプレッシャーをかけ続け、セカンドボールの大半を支配。圧倒的にボールをキープして札幌を自陣に押し込めた。エジウソンが起点となってボールを捌くことでチームにリズムが刻まれ、有光も期待通りの動きでスペースを突いてボールを上手く呼んでいる。

 ただ福岡は、一方的にボールを支配している割にはチャンスが作れない。縦へ入れるボールにミスが多く、肝心なところで札幌にカットされるシーンが目立つ。悪くはない。しかし攻め込んでいるとも言い難い。13分、セットプレーからホベルトがゴールを奪ったが、その後も展開は変わらない。この日の札幌の出来からすれば、早い時間帯で追加点を奪うチャンスはあったはず。それで試合を終わらせてしまいたかったのだが・・・。

 もちろん、エジウソンと有光の活躍でいい形も作ってはいた。21分、有光がスピードと個人技を生かして中央から突破したシーン。27分、エジウソンのキープから、サイドへ飛び出したアレックスへつないで深い位置まで切り込んでクロスを上げたシーン。そして32分、山形、有光、再び山形へとつないで右サイドのスペースを突いたシーンがそれだ。ただ全体的にゴールへ向かう迫力に欠けた。失点の心配はないが、得点の匂いもないままに前半を終えた。



 負けられないことを考えたら、このまま試合をコントロールして1−0で終わらせてしまうというのもひとつの選択だったかもしれない。しかし、56分、福岡はペナルティエリア内で札幌から決定的なシュートを2つも浴びる。この2本のシュートはDFが身体を張ってゴールを死守したが、ここから微妙にリズムが崩れ始めた。足が止まり始めた福岡は自らのミスでピンチを招き、中盤で札幌の選手をフリーにする場面が増えていく。

 じわじわと前に出始める札幌。福岡は68分、交代出場の太田の決定的なヘディングシュートが札幌ゴールを襲うが次第にリズムを失っていく。右サイドから形を作る札幌。攻めきれずにいるうちに相手に付け入る隙を与えてしまう福岡。今シーズン、何度となく繰り返された試合展開が、この試合でも繰り返された。札幌がもう少しだけ攻め手を持っていれば、結果は違ったものになっていたかもしれない。

 80分、有光が突破するところを曽田が倒して福岡にPKが与えられる。しかし、このPKを米田がクロスバーの上へ外す。そして、すっかり足が止まってしまった福岡は、ここから全員が引いてゴール前を守ることしかできなくなる。1点を追う札幌の前に福岡はピンチの連続。ロスタイムには決定的なシュートまで浴びた。最終的にはピンチを凌いで勝ち点3を重ねた福岡だったが、手堅いというよりは、逃げ切ったという印象が強く残る。

「本来であれば追加点を取って勝つというのが良い形。しかし、こういう結果で終わった以上は、いい面を捉えるようにした方がいい」。試合後の松田監督は微妙な言い回しで試合を振り返った。福岡にとっては、何よりも欲しかった勝ち点3が取れた試合。そして、リズムのいい時間帯にゴールチャンスを作れないという今シーズンの課題が再び浮き彫りにされた試合。成果と課題が全く同じ割合で同居していた試合だった。



 冒頭にも書いたが、福岡にとって勝ち点3を積み重ねたという事実は、何物にも代え難い収穫であったことは間違いない。この日を含めて残り試合は7。入替戦の権利が与えられる3位のポジションを確保するためには、全ての試合で勝利を収めなければならない。そんな中での戦いは、何よりも結果が最優先される。内容のある試合をしたところで、勝ち点をひとつでも落とせば、それは今シーズンの終わりを意味するからだ。

 またエジウソンがボールをキープすることで福岡にリズムが生まれ、有光のスペースを使う動きがチャンスを作り出していたのも収穫だ。しかし、それでもなお、有光を生かしきれなかったという課題も見えた。「パスの出し手の方が、もっとスペースへきちっとしたパスさえ出せれば、全部有光の突破につながっていたプレーが多かった。それができずに彼の動き出しの半分も効果的なプレーにつながらなかった」と松田監督も振り返る。

 今シーズンの福岡は、バランスの良さという点では、J2の中でも優れた存在であると言える。しかし、ボールを足元でつなぐことの多いプレースタイルは、スペースへの飛び出しや裏を狙うプレーが少なく、あるいは選手がボールを追い越して行くシーンが極端に少ないという弊害ももたらしている。加えて、リスクを回避するあまり、横や後ろへつなぐパスが多く、勝負所で前に仕掛けられないという欠点も抱えている。

 その結果、相手との間にある力の差を得点という形に表わすことができず、それが苦しい状況を招いた。天皇杯での天理大との対戦で、ハーフタイムに松田監督から檄を飛ばされたイレブンは、ひとつのボールに対して、パスの受け手だけではなく、2人、3人とボールに反応。スペースを意識したプレーで大量得点に結びつけた。もちろん、相手が大学生ということは考慮しなければならないが、残り試合を勝ち続けるためには、こうしたプレーが欠かせない。



 何度も言うが、この日の勝利は福岡にとって意味のある、そして大きな1勝だった。チームに勢いを与えるのは内容のある試合をすることももちろんだが、それでもなお、勝ち点3に勝るものはないからだ。しかし、勝利という結果が試合内容に還元されるようにならなくてはチームの勢いも短命で終わる。38節を消化するまでに、何度も浮上の兆しを見つけながら、ライバルたちとの戦いを抜け出せなかったのは、試合内容が改善されなかったからに他ならない。

 試合後、ロッカールームを引き上げる選手たちは一様に明るい表情を見せた。第4クールに入って3連敗を喫するという一時の不振から抜け出し、エジウソンがチーム内で機能していることで、何らかの手応えを感じていたからだろう。大切なのはこれから。この手応えと自信を試合内容に還元してこそ、残り試合を全勝することが可能になる。バランスを保ちながら、ここぞという場面で勝負を仕掛けられる勇気が、これから求められることだ。

 3位の山形に勝ち点5に迫ったことで、新聞各紙は福岡がJ1昇格を再び視野に捉えたことを報じている。しかし、全ての試合で勝利を収め、なおかつ、相手の結果待ちという状況に変化はない。見かけ上はともかく、福岡は相変わらず厳しい状況に立たされている。負けられないのではなく、勝たなければいけない6試合。リスクを背負う勇気と、絶対に勝つという強い信念、そして選手たちをサポートする大きな声援を武器に最後の壁に挑んで欲しい。


記者会見の模様と選手のコメントはJ's GOALでご覧になれます。
柳下正明監督(コンサドーレ札幌)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2004-10/00012566.html
松田浩監督(アビスパ福岡)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2004-10/00012569.html
試合後の選手コメント http://www.jsgoal.jp/club/2004-10/00012573.html


(アビスパ福岡) (コンサドーレ札幌)
GK: 水谷雄一 GK: 藤ヶ谷陽介
DF: 川島眞也 千代反田充 増川隆洋 アレックス DF: 西澤淳二 曽田雄志 西嶋弘之
MF: 山形恭平(73分/田中佑昌) ホベルト 米田兼一郎 宮崎光平 MF: 砂川誠(85分/桑原剛) 田畑昭宏 権東勇介(78分/金子勇樹) 和波智広 上里一将(67分/相川進也)
FW: エジウソン(63分/太田恵介) 有光亮太(84分/松下裕樹) FW: 堀井岳也 清野智秋
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