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 福岡通信 04/11/13 (土) <前へ次へindexへ>

 決戦は11月14日。全国の切符を掴むのはどっちだ。
 第83回全国高校サッカー選手権大会 福岡大会 準決勝

 取材・文/中倉一志 写真/星智徳
 高校生サッカープレーヤーの全てが目指す全国高校サッカー選手権。用意されている切符は各都道府県に1枚ずつ。そこに至るまでの道のりは厳しい。今年の福岡県大会には138校が参加。まず7月25日〜8月1日の日程で130校による第1次予選が実施され、勝ち残った16チームと、第1次予選免除校8チームで第2次予選が行われている。全国への切符を掴むためには最大で9試合、第1次予選免除校でも4試合を勝ち抜かなければならない。

 さて、大会の様子をお伝えする前に、福岡県の高校サッカー事情について少し紹介しておこう。福岡県の高校サッカーの歴史は、学制改革後の第1回目に当たる第27回(昭和23年度)全国高校サッカー選手権で山田高校が全国3位に入賞したことから本格的なスタートを切った。昭和20年代は山田高と筑紫ケ丘高らが、昭和30年代以降は福岡商業が中心的な存在として高校サッカー界を牽引。現在の基礎を築いたと言われている。

 そんな福岡県の高校サッカーに新たな転機が訪れたのが第58回(昭和54年度)大会。この年、東福岡高校が福岡商業を破って初優勝。さらに2年後には、東海大五が同じく福岡商業を決勝で下して初優勝を飾る。そして、ここから東福岡と東海大五という2強を中心に福岡の高校サッカーが動き始めた。過去25年間で両校が掴んだ全国への切符は合わせて22枚(東海大五12回、東福岡10回)。四半世紀の歴史の中で、この両校以外が全国へ駒を進めたのは、たったの3回しかない。

 決勝戦での直接対決は過去9度。東福岡が初優勝を果たした昭和54年度以降、両校のいずれもが決勝戦に進出できなかったのは昨年が初めてだった。2強によるライバル対決に、どこが割って入るのか。これが、現在まで続く福岡の高校サッカーの流れだと言える。そして、今年の準決勝に勝ち上がってきたのは、この2強と前年度全国高校選手権2位の筑陽学園、そして九州国際大学付属高校。昨年に引き続き2強の壁が崩れるのか。それともライバルの挑戦を2強が跳ね返すのか。注目の準決勝は11月7日、博多の森球技場でキックオフされた。



 第1試合に登場したのは東福岡と九国大付属。準決勝では2点のビハインドを跳ね返してベスト4に進出してきた九国大付属が、東福岡にどこまで肉薄するかが注目された。しかし、東福岡の攻撃力を警戒したのか九国大付属はも余りにも引きすぎた。両WBを含めて5人で守りを固め、ボランチまでもが最終ラインに吸収されている。時には、2トップを残して全員がゴール前まで引いてしまうシーンも。それでいて、東福岡の選手を捕まえきれないシーンが続く。

 自由にボールを運び、両サイドから攻撃を組み立てる東福岡。そして5分、藤選手が強烈なミドルシュートで九国大付属のゴールネットを揺らす。さらに12分、砂田選手からのフィードを受けた棚橋選手が2点目をゲット、東福岡は難なく得点を重ねていく。この得点の後、九国大付属はシステムを4−4−2に変更。やや落ち着きを取り戻したのだが、東福岡の勢いを止められない。そして27分、東福岡は葛城選手が個人技で右サイドを突破。そこからのクロスボールに菅原選手が合わせて早々と試合を決めてしまった。

 しかし、後半に入ると九国大付属にリズムが生まれる。「後半の立ち上がりの相手のドリブル突破は脅威だった」(森重監督・東福岡)。3失点で開き直ったのか、九国大付属は最終ラインを上げて、両サイドから積極的にドリブルで仕掛け始めたのだ。このドリブルを東福岡は止められない。たまらずボールサイドに人数をかけたところを九国大付属に反対サイドに展開されてピンチを招く。そして11分、奥選手のスルーパスに反応した菅原選手がゴールを決めて九国大付属が1点を返すことに成功した。

 この後もリズムは九国大付属付属。ドリブルで仕掛けてくる九国大付属に対して、東福岡はジリジリと後ろへ下げさせられる。しかし、九国大付属はゴール前まで迫りながらもフィニッシュのところで精度を欠きゴールが奪えず。結局試合は3−1で終了のホイッスルを聞いた。結果は東福岡の順当勝ち。しかし、東福岡にとっては、攻撃面での迫力に比べて、守備面に課題が見られた一戦でもあった。



 第2試合は、この日の注目の一番。東海大五と筑陽学園が対戦した。筑陽学園のフォーメーションは両サイドのMFをやや低い位置に置いた4−4−2。相手ボールのときは低い位置に3人が並び、ボールを奪取した瞬間、両サイドが押し上げてサイドから攻め上がる。昨年の全国高校選手権準優勝を獲得したサッカーでお馴染みになったスタイルだ。昨年と比較すると、やや小粒な感じはあるが、パスをつないで展開する組織サッカーは健在だ。

 試合の主導権は筑陽学園。ボランチの位置からボールを左右に展開し、ピッチを広く使ったサッカーで東海大五を自陣内に押し込んだ。しかし、相手を崩しながらもラストパスがつながらない。結局、この時間帯にゴールを奪えなかったことが試合の結果を左右することになる。そして先制点は東海大五。21分、ゴールまで約20メートルの地点で得たFKを要選手が直接ゴールに突き刺した。これが東海大五のファーストシュートだった。

「あの流れで点を取られなかったのがFKにつながった。それでうちにリズムが来た」(平監督・東海大五)。ここからは東海大五のペースだった。筑陽学園は攻撃を試みるのだが、バランスよく守る東海大五は筑陽学園に決定的な仕事をさせない。そして30分、河村選手からの縦パスに反応した下條選手がペナルティエリア内に走りこんで豪快にゴールネットを揺らす。縦、縦とパスをつなぐ東海大五らしい攻撃が生んだ得点だった。

 後半も同じような展開で試合が進む。いい形でボールを運びながら、フィニッシュの一歩、あるいは二歩手前のパスがつながらない筑陽学園に、次第に閉塞感がつのり始める。そして、後半10分が過ぎた辺りから運動量が落ち始めた。ここからは東海大五がボールを一方的に支配。そして33分、38分に追加点を加えて筑陽学園を一蹴した。「苦しい時間帯に頑張れるようになった」(平監督)。東海大五の落ち着きのあるバランスのいい試合運びが印象に残った試合だった。



 これで今年の福岡県高校チャンピオンは東福岡と東海大五の2強で争われることとなった。2強が決勝戦で顔をあわせるのは3年ぶり10回目となる。「自分たちでリズムを崩してしまうことがある。きちんとやりきれば、いいゲームになるんじゃないか」(森重監督・東福岡)。「戦力的には五分と五分。ミスをしたほうが負け」(平監督・東海大五)。お互いに手の内を知り尽くしたチーム同士の対戦。両監督に気負いはない。

 過去の決勝戦での対戦成績は東海大五の5勝4敗。ともにボールをつなぐサッカーが持ち味だが、東福岡が両サイドに広く展開するのに対し、東海大五はボールサイドに縦へ、縦へとつないでいくのが特徴。そのサッカーは対照的でもある。今シーズンは、全九州サッカー福岡県予選、高校総体福岡県予選決勝、九州プリンスリーグ第10節と3度対戦。結果は東海大五の3勝。しかし、いずれも1点差と力は拮抗している。

 準決勝を見る限りでは、攻撃の迫力という点では両チームとも甲乙はつけがたい。その一方で、全体的なバランスの良さ、守備の安定感という意味では、若干ながら東海大五が優っているようにも見えた。しかし、東福岡もライバル対決を全敗するわけにはいかない意地がある。決勝戦までには課題を修正し万全の体制で臨むだろう。いずれにせよ、ライバル同士の戦いにふさわしい接戦になることだけは間違いない。

 決勝戦は11月14日(日)、午後12:00に博多の森球技場でキックオフされる。果たして、今年の全国への切符を手にするのはどちらのチームか。サッカーファンにとっては見逃せない一戦になりそうだ。
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