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 福岡通信 04/11/20 (土) <前へ次へindexへ>

 「赤い彗星」、2年ぶり11回目の全国へ
 第83回全国高校サッカー選手権大会 福岡大会 決勝

 取材・文/中倉一志
2004年11月14日(日)12:00キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 天候:曇
試合結果/東福岡3−1東海大五(前0−0、後3−1)
得点経過/[東福岡]野内(53分)、葛城(60分)、[東海五]橋内(62分)、[東福岡]棚橋(63分)

 過去25年間に渡って福岡県高校サッカー界を牽引してきた東海大五と東福岡。第83回全国高等学校選手権福岡大会の決勝戦は、その両雄が雌雄を決することとなった。両チームが決勝戦で顔をあわせるのは3年ぶり10回目。決勝戦での過去の対戦成績は東海大五の5勝に対して東福岡の4勝と互角。お互いの誇りと意地がぶつかり合う伝統の一戦とあって、バックスタンドを埋めた両校の応援団は、試合前から激しく応援合戦を繰り広げている。

 今シーズン、ここまで両校は、全九州高校サッカー福岡大会決勝、高校総体福岡大会決勝、そしてプリンスリーグ第10節と3回顔をあわせたが、いずれも1点差で東海大五が勝利。東海大五がこの大会を制すれば、今シーズンの福岡県主要3タイトルを独占することになる。一方、東福岡は全九州大会で東海大五が敗れた鵬翔高校を決勝戦で下して九州チャンピオンの座を獲得。春に行われたFBS杯でも準優勝を飾る等、その実力に遜色はない。

「つなぐサッカー」を信条とする両チームだが、その攻撃スタイルは対照的だ。東海大五のフォーメーションは中盤をダイヤモンド型にした4−4−2。ボールサイドを縦方向につなぐのが特徴で、前への意識が強い。そして東福岡はワンボランチ、ダブル司令塔を置いた4−3−2−1。両サイドをワイドに使う攻撃が信条で、サイドライン一杯に開いたウイングの突破からゴールを狙う。準決勝では最終ラインにやや不安を残した東福岡だが、その修正に怠りはない。

 決勝戦はあいにくの小雨まじりの天候になったが、注目の一戦とあって多くの観客が博多の森に足を運んだ。両校の応援団を含めてバックスタンドはほぼ満員。メインスタンドに設けられている記者席には、サッカー関係者、地元メディアの他、各クラブのスカウト陣の顔が並ぶ。そして、全国への1枚の切符を賭けた戦いは、12:00、東福岡のキックオフで幕を開けた。



 開始46秒、東海大五の市川翔平(3年)がオープニングシュートを放つ。さらに続く3分、今度は東海大五の要淳也(3年)が強烈なミドルシュートを東福岡に浴びせた。激しくせめぎあう両チームだが、鋭い出足を見せる東海大五が球際で有利に立つと、持ち前の縦への圧力をかけて東福岡陣内に攻め込んでいく。「立ち上がりにバタバタしてしまった」(森重監督・東福岡)。決勝戦特有の雰囲気に呑まれたのか、東福岡には、やや堅さが見られるようだ。

 10分、東海大五の攻勢を凌いだ東福岡に最初の決定機が訪れる。GKのパンチングがこぼれたところを長友佑都(3年)がシュート。さらにそのクリアボールに伊藤大祐(3年)が飛び込んでボレーシュートを放つ。惜しくもシュートはクロスバーの上を越えたが、このプレーを機に東福岡が流れを引き戻した。大きな展開からの両ウイングバックが攻撃参加。東福岡の持ち味である「展開サッカー」が息を吹き返した。

 高い位置取りをする東福岡の両ウイング。そして、野内勇輔(3年)、棚橋雄介(1年)のダブル司令塔と、1トップの葛城侑樹(3年)の3人が縦のポジションチェンジを繰り返して中盤の守備をかく乱。さらには、中盤の底から長友佑都がスルスルとスペースを突いて前に上がってチャンスを狙う。この動きを東海大五は捕まえきれない。東福岡のパスワークに翻弄されるばかりか、前線が孤立させられ一方的に攻め込まれた。

 14分、20分、25分、そして32分。東福岡は決定機の山を築いていく。シュートは僅かにゴールマウスをはずれ、あるいはポストに跳ね返されるが、それでも慌てることなく自分たちのサッカーを続けていく。33分、スローインから一瞬の隙を突かれて打たれたシュートはGK坂本光(3年)がファインセーブでゴールマウスの外にはじき出した。東海大五の粘りもあり、結局0−0で前半を折り返したが、東福岡の攻撃力が際立った40分間だった。



 後半に入ると、東海大五は自由に動き回る野内勇輔と棚橋雄介に、末吉隼也と要淳也がマンマーク気味について、東福岡の中盤を潰しにかかる。ここからは試合は膠着状態に。しかし53分、東福岡に待望の先制点が生まれた。GKのパンチングのこぼれ球を拾った野内勇輔が落ち着いてループシュート。前に飛び出していたGKの頭上を越えたボールは、ゆっくりと、しかし確実にゴールマウスに吸い込まれた。

 勢いに乗る東福岡は60分、右に流れてボールを受けた葛城侑樹が右足を一閃。ボールの芯を捕らえたシュートが唸りをあげてゴールに突き刺さる。豪快な一発。シュートを予測していたGK田中啓太(3年)も反応することが出来なかった。中盤を制して東海大五に自由を与えず、得意の「展開サッカー」から奪った2ゴール。そして前線を孤立させて、東海大五のエース財津俊一郎(3年)に仕事をさせない。ここまでの展開から東福岡が勝負を決めたかに思われた。

 しかし、ここから試合は一転して激しい攻防に。62分、東海大五は直接FKに橋内優也(2年)が頭で合わせてゴールネットを揺らす。そしてDFラインでプレーしていた橋内優也を前線に上げた。対する東福岡は63分、右サイドを突破した木佐木俊成(3年)のクロスに棚橋雄介が合わせて3点目をゲット。すると64分、東海大五は左サイドを崩して中央でノーマークで待つ橋内優也へ。しかし、叩きつけられたヘディングシュートは大きくバウンドしてクロスバーを越えた。東海大五にとっては悔やみきれないシーンだった。

 このあとも、東海大五はリスクを省みずに攻めに出たが、東福岡は東海大五のエース財津俊一郎を近藤徹志(3年)が徹底マーク。さらに、近藤徹志はカバーリングにも非凡なところを見せて、東海大五の攻撃の芽を丹念に摘み取っていく。そして2分間のロスタイムを終えるホイッスルが博多の森に鳴り響く。東福岡が3連敗の雪辱を果たし、2年ぶり11回目の全国大会出場を決めた瞬間だった。



「練習通りのことが試合に出せた。ほぼ100%に近い状態で出してくれた感じ」(森重監督)。過去3連敗と悔しい思いを続けてきた東福岡イレブンにとっては完璧とも言えるゲームだった。その要因は中盤の支配権を握り続けたこと。これが攻撃面ではピッチをワイドに使う自分たちのサッカーを実現することにつながり、相手のエース財津俊一郎を孤立させて東海大五の攻撃力を半減させることにつながった。また、唯一の不安材料だった最終ラインを統率した近藤徹志の働きも見逃すことは出来ない。

「立ち上がりでリズムをつかんだので、10分間の中で1つでも取れていれば内容は変わっていた」とは平監督(東海大五)。立ちあがりは、縦への圧力で東福岡の展開サッカーを封じるかに見えたが、激しくポジションチェンジをする中盤の動きを捕まえ切れなかったことが最後まで響いた。2−1に迫った後、点の取り合いに持ち込めば勝機は見えたのだが、最後まで運動量が落ちずに走り回る東福岡の前に追加点を奪うことが出来なかった。

 両チームの間に力の差はない。「東海大五を最後に倒して全国に行きたいという気持ちは誰もが持っていた」(森重監督)。「負けてないということで嫌なものが働いた。ひとつは取ろうという気持ち、追いかけるチームの勢いがあった」(平監督)。両チームの立場を分けたのは、ほんの少しの気持ちの差だった。しかし、東海大五も最後まで力を振り絞って戦ったことに間違いはない。この悔しさは来年の選手権で晴らしてもらいたいものだ。

 全国のトップレベルで優勝することを常に目指しているという森重監督。「福岡県の決勝戦は、ひとつの通過点」と言う。そして全国大会に向けてこう続けた。「中盤での組み立て、組織的な守備、それをもう1ランク、2ランクぐらい上げないと全国では戦えない。残りの1ヶ月できちんと仕上げたい」。目指すは1昨年の高円宮杯3位を越える成績。正月の国立競技場に再び赤い旋風を巻き起こすつもりだ。


(東福岡高等学校) (東海大学付属第五高等学校)
GK: 坂本光 GK: 田中啓太
DF: 砂田純希 近藤徹志 藤雄一 DF: 大坪将也 橋内優也 下條健太郎 河村洋佑
MF: 米田聖平 木佐木俊成 長友佑都 野内勇輔 伊藤太祐 棚橋雄介 MF: 市川翔平(73分/山本拓弥) 要淳也 平野洋二郎(58分/平川裕介) 末吉隼也
FW: 葛城侑樹 FW: 藤田直之 財津俊一郎
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