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 福岡通信 04/11/30 (火) <前へ次へindexへ>

 見せた勝利への執念。福岡、入替戦へ。
 2004Jリーグ ディビジョン2 第44節 モンテディオ山形vs.アビスパ福岡

 取材・文/中倉一志
2004年11月27日(土)14:03キックオフ 山形県総合運動公園陸上競技場 観衆:12,213人 天候:曇
試合結果/モンテディオ山形1−3アビスパ福岡(前0−0、後1−3)
得点経過/[福岡]有光(65分、81分)、アレックス(89分)、[山形]根本(89分)


 3分間のロスタイムの終わりを告げるホイッスルが山形県総合運動公園陸上競技場に響き渡る。その瞬間、監督も、スタッフも、選手も、スタンドのサポーターも、そして福岡の地から熱い思いを送り続けた人たちも、誰もが一斉に喜びを爆発させた。一時はとてつもなく遠くに思えたJ1への扉。福岡は崖っぷちから8つの勝ち星を重ねて、遂に、その扉の前に辿り着いた。2001年11月24日の万博記念競技場から1100日目。長く苦しい日々を経て福岡はJ1への挑戦権を獲得した。

 過去7戦同様、厳しい試合だった。山形に押し込まれ、決定的なピンチに何度も見舞われた。だが、福岡は慌てなかった。全員でピッチの上を走り回り、最後の局面で身体を張ってゴールを死守した。そんなチームメイトの頑張りに有光が見事に応えて2ゴール。そしてアレックスのゴールで締めくくった。誰がヒーローでもない。ベンチのメンバーを含めて16人で勝ち取った勝利。サポーターとともに勝ち取った勝利。福岡らしい勝利だった。

「福岡はこういう展開には強いですよね。とにかく土壇場で強いのが福岡ですから」。記者会見場で顔をあわせた在京メディアの知り合いに声をかけられた。確かに、土壇場からの粘り腰は見事だった。第4クールに入って3連敗したことが、逆に開き直るきっかけになったのも事実だろう。しかし、この結果はマジックでもなければ、ミラクルでもない。2年間をかけて監督をはじめとするスタッフと選手たちが辛抱強く積み重ねてきた結果だ。

「自分たちのサッカーを、同じ戦い方をするだけ」。松田監督は2年間、この言葉を繰り返してきた。そしてどんな時でも戦える精神的な強さを求めてきた。例えどん底に追い込まれても、その姿勢には少しのブレもなかった。そして、選手たちは自らをコントロールして常に高い気持ちでプレーする手段を手に入れた。「力ではどう見ても福岡のほうが1枚上だった」(鈴木淳監督・山形)。それが山形との唯一の差。そして大きな差だった。



 J1への挑戦権を賭けた最終節の直接対決は14:03分、山形県総合運動公園陸上競技場でキックオフの笛が鳴った。ファーストシュートは山形。2分、星のミドルシュートがポストの右へ外れる。「山形は早めに長いボールを当ててくる印象がある」(松田監督)。試合前の分析通り、山形はシンプルにボールを放り込んで、こぼれ球に対して後方から押し上げて攻めの形を作る。福岡は千代反田と増川を中心に慎重にボールを跳ね返していく。

 福岡のファーストシュートはエジウソンが9分に放ったミドルシュート。立ち上がりは、ややボールコントロールに苦しむ場面も見られたが、落ち着きを取り戻して中盤でボールをつないで前に出る。しかし山形は、福岡ボールに対しては、素早く後方に下がって堅固な守備ブロックを形成。エジウソンを3人がかりで囲い込んでは左サイドへ押しやって攻撃の起点を作らせてくれない。試合は1点差勝負。どちらも慎重な立ち上がりを見せる。

 ゲームが動き出したのは18分、きっかけは中盤の底から鋭いドリブルで中央を駆け上がった永井のプレーだった。ここから山形のアグレッシブな攻撃が始まった。20分には内山がペナルティエリア深くまで攻め上がる。続く22分、星からのクロスにフリーになっていた梅田があわせた。誰もが目をそむけた瞬間、シュートはクロスバーを叩く。更に26分には、再び梅田が放った決定的なシュートがクロスバーをかすめた。

 山形のパス回しにポイントが絞れない福岡は防戦一方。何とか前に出ることでチームのバランスを取り戻そうとするものの、山形にそれを許してもらえない。38分には増川の強烈なFKが、そして44分にはエジウソンが際どいシュートを打ったが、試合の流れは山形が握っていた。しかし、運を味方につけ、最後のところで粘りを見せて、福岡は前半を無失点で終える。「前半で何度かあったチャンスを取れなかったのが最後に響いた」(鈴木淳監督)。山形にとっては悔やまれる前半だっただろう。



 ほぼ一方的に攻め込まれた前半。しかし、福岡イレブンは強い気持ちを持ち続けていた。「最初から受けて立つという気持ちではなく、チャレンジ精神を持ってやっていた。そういった気持ちがなければ最初に点を取られていたかもしれない」(千代反田)。勝つことでしか入替戦への出場権を得られない山形の攻撃は迫力満点。失点してもおかしくない展開だった。それを無失点で切り抜けたのは、このチャレンジ精神と強い気持ちがあったからに他ならない。

 後半は更に勢いを増す山形の攻撃に最終ラインを下げさせられ、前半同様、防戦一方の試合を強いられた。しかし、福岡の強い気持ちに少しの揺るぎもない。増川が壁になり、千代反田がカバーに入り、そして全員が身体を張ってボールを跳ね返す。「相手は気持ちで勝ちに来ていた。そこをよく耐えてしのいだところがポイント」。松田監督は、この時間帯を振り返る。そして、この踏ん張りに有光が応えた。

 時間は65分、松下の縦パスに反応した有光がラインの裏に飛び出した。山形が見せた一瞬の隙。それを有光は見逃さなかった。右足から放たれたボールはゴールマウス上段に突き刺さる。そして、この試合の最大のポイントが77分に訪れる。モンテディオ山形が放った強烈なロングシュートが福岡の左ポストを直撃。さらにこぼれ球を豪快に蹴り込まれた。そこへ身を挺して飛び込んだのは千代反田。ボールはゴールラインの外へ。山形の同点ゴールを阻止した気迫あふれるプレーだった。

「1点目の後の決定的なのを千代(千代反田)さんが身体を張ってとめてくれた。これで自分の中では(流れが)来たなっていう感じだった」(有光)。その言葉通り、有光が勝負を決める2点目を挙げる。前がかりになる山形の裏をとって中央をドリブルで駆け上がると見事なミドルシュートを叩き込んだ。そして49分にはアレックスが駄目押しの3点目をゲット。山形の反撃をロスタイムの1点にとどめて、福岡はJ1への挑戦権を手にした。



 福岡が2年間かけて積み重ねてきた集大成とも言える試合。見事な勝利だった。しかし、ミックスゾーンに出てくる選手たちに笑顔はない。浮かれる様子は全くなく、冷静に報道陣の囲み取材に応えた。自分たちの目標はJ1昇格。山形との試合は挑戦権を得ただけに過ぎないことを彼らは冷静に捉えている。一番大切なのは常に次の1試合。この大一番を制した後も彼らの気持ちに変化はなかった。そして、それは8連勝中に彼らがずっと見せてきた姿だった。

「安堵感とか、喜びとかは全くない。まだシーズンが続いている。シーズンは46節あるという考えを僕は持っている」(山形)。「最終的に昇格しないと、このシーズンを頑張ってきた意味が全くなくなる」(千代反田)。そして誰もが同じことを口にした。目標をしっかりと捕らえる視線と、全員が同じベクトルを持っている証拠だ。こういうチームは間違いなく強い。様々な紆余曲折を経て、いま福岡は最高の状態に仕上がっている。

 入替戦の相手は柏レイソル。しかし、福岡にとっては相手がどこであろうと関係ないだろう。降格してから3年、新生アビスパとして再スタートを切ってから2年。福岡は、この日のためにだけ戦いを続けてきた。その思いが相手によって揺らぐはずもない。今までと同じように、フロント、現場スタッフ、選手、サポーター、そしてメディアが一体となって目の前の相手を倒すだけ。それが福岡のスタイルだ。

「非常にベースはしっかりしてやっている。それを続けることが一番大事。相手はあまり問題ではない。基本的には自分たちがどういうふうに戦っていくのかが大事。どういう精神状態で戦っていくのかが一番のエネルギーだと思っているので、これまでやってきたように次の1試合を勝ちに行くという姿勢で臨みたい」(松田監督)。福岡は、これまでと変わらぬ姿勢で入替戦に臨む。そして、その先にJ1のゴールがある。あと2つ。福岡は最後の戦いに挑む。


※記者会見の模様と選手のコメントはJ's GOALでご覧になれます。
松田浩監督(アビスパ福岡)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2004-11/00014059.html
鈴木淳監督(モンテディオ山形)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2004-11/00014059.html
試合後の選手コメント http://www.jsgoal.jp/club/2004-11/00014054.html
http://www.jsgoal.jp/club/2004-11/00014055.html
http://www.jsgoal.jp/club/2004-11/00014069.html
http://www.jsgoal.jp/club/2004-11/00014070.html


(モンテディオ山形) (アビスパ福岡)
GK: 桜井繁 GK: 水谷雄一
DF: 迫井深也(74分/林晃平) 小林久晃 レオナルド 内山俊彦 DF: 宮本亨 千代反田充 増川隆洋 アレックス
MF: 星大輔 大塚真司 永井篤志 宮沢克行(69分/高橋健二) MF: 山形恭平 ホベルト 米田兼一郎 宮崎光平(55分/松下裕樹)
FW: 大島秀夫 梅田直哉(80分/根本亮助) FW: エジウソン(51分/太田恵介) 有光亮太(81分/田中佑昌)
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