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 福岡通信 04/12/08 (水) <前へ次へindexへ>

 いざ柏へ。思いの全てをぶつけよう。
 J1-J2入替戦 第1戦 アビスパ福岡vs.柏レイソル

 取材・文/中倉一志
2004年12月4日(土)13:03キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆:20,522人 天候:雨
試合結果/アビスパ福岡0−2柏レイソル(前0−0、後0−2)
得点経過/[柏]大野(42分)、谷澤(89分)


 4年ぶりのJ1復帰を賭けた大一番、博多の森は20,522人の観衆で埋め尽くされた。福岡史上3番目の有料入場者数。2万人を越す観衆が博多の森に訪れたのは、2000年11月23日のC大阪戦以来のことだ。福岡のJ1復帰への熱い思いと、チームとともに戦うという意思が博多の森を包み込む。「さあ声を出し 飛び跳ねろ 熱い歌で 来れない奴らのためにも 福岡勝たせようぜ」。選手を、サポーターを鼓舞する歌が始まる。博多の森の熱狂は最高潮に達していた。

 そんな大声援に押されて福岡イレブンがピッチの上に飛び出していく。千代反田と増川を中心としたDFラインは中盤と協力して玉田の自由を奪い、「中盤のへそ」としてホベルトと米田が献身的な動きを見せる。起点を作るエジウソン。裏を狙う有光。そして、その動きに合わせて山形と宮崎が攻撃を形作る。いつも通りの自分たちのサッカー。試合開始前から降り続く雨の影響でミスも見られたが、福岡は思い通りのサッカーで試合を進めていく。

 最初の決定機は7分。増川のロングフィードを受けた山形が中央へ切り込み、その動きに呼応して有光が右サイドへ開く。次の瞬間、有光へラストパスが渡る。得意の角度からドリブルで切り込んでシュートを放つ有光。しかし、相手DFの出した足にカットされてボールはポストの右へ外れた。続くチャンスは17分。高い位置でこぼれ球を拾ったエジウソンが左足を一閃。鋭いミドルシュートがゴールポストをかすめた。わずかに外れたシュートにスタンドからどよめきが起こる。

 それにしても柏は慎重そのものだった。攻撃は前線の玉田にボールを預けるだけ。最終ラインを低くして有光の突破に備え、福岡が雨の影響でボールコントロールに時間をかけると明神が素早く寄せて潰しに来る。決して良いとは言えないチーム状態の中、攻撃を放棄してまで失点を防ぐことに重点を置いている。それは裏返せば、福岡を警戒していたことの証でもあった。結局、福岡はいいリズムで戦いながら最後の壁が破れずに無得点。勝負は後半に持ち越された。



 そして後半、福岡は思いもよらぬ失点を喫することになる。福岡がキックオフのボールをなんとなく下げると柏が一斉に前に飛び出した。そして福岡がボール処理に戸惑うのを確かめると、柏は更にかさにかかって前からボールを追いかける。この試合で柏が初めて見せた攻撃的な姿勢。福岡はバランスを崩して押し込まれていく。そして47分、大野のクロスボールがホベルトに当たって絶妙な位置へ。GK水谷の頭上を越えてボールがネットに吸い込まれた。

 福岡にとってはアンラッキーな失点。だがそれは、福岡が見せた僅かな隙を見逃さずに一気に勝負を仕掛けた柏の嗅覚の鋭さが生んだゴールでもあった。失点後、福岡は体制を立て直せない。バランスを崩し、マークを徹底できず、前からプレッシャーをかける柏の前に自陣に追い込まれた。たまらず松田監督が動く。最初のカードはエジウソンに代えて太田。高い位置にポイントを置いて柏のプレッシャーを跳ね返そうという意図が見える。

 この交代で福岡に勢いが蘇る。だが、柏も今度は下がらない。ここからは福岡が押せば柏が引き、柏が押せば福岡が引くという一進一退の攻防が続く。そしてロスタイム、増川のFKのこぼれ球が最終的に玉田に渡る。前がかりになっていた福岡の裏を突いて、玉田がドリブルで駆け上がる。そして中央に走りこんできた谷澤にラストパス。これを谷澤がゴール左隅に蹴り込んで試合に終止符を打った。

「これがサッカー。勝負というのは非常に細かいところというかディテールで決まってしまうところがある。思いもかけないことも起こってしまうということ、力がそのまま確実に勝敗に反映されないこともある」(松田監督)。互角以上の戦いをしながら敗れた福岡。両チームの力に差は全くなかったと言っていい。勝負を分けたのは、僅かな隙を突いて確実にゴールに結びつけた柏のしたたかさだった。



 悔しさのつのる敗戦だった。しかし、2日間の休養をはさんで雁の巣レクリェーションセンターに集まった選手たちの表情に悲壮感はない。「まだ終わったわけではない。せっかくの入替戦のチャンス。選手たちも悔いのないゲームをやりたいという気持ちで集まってくれた」(松田監督)。まだ前半戦が終わったばかり。2点のビハインドは返せない差ではない。有光選手も「やられたままでは悔しい。絶対にやってやろうという気持ちは前以上に強い。期待してみていて欲しい」と力強く宣言した。

 ポイントはいくつかある。まずはシュートを打てる場面を多く作るということ。第1戦では攻め込みながら決定的な場面を作り出すことが少なかった。柏が守備的だったことも影響しているのだが、もう少しシュートを狙う積極性があって良かった。「もう少し工夫が必要」とは有光。8日のトレーニングでは、相手が引いてきた場合を想定してのパターン練習が行われた。具体的にどう動くのかは、柏戦を見てのお楽しみとしておこう。

 そして太田の使い方。第1戦では太田へボールを集めることが徹底できず高さを生かしきることが出来なかったが、柏の守備陣が太田の対応に四苦八苦していたことは事実。「太田が柏にとって問題を起こす選手であることも分かった。その辺で、どうやってアクセントをつけていくかということ」(松田監督)。いつも先頭に立ってトレーニングを積む太田。第1戦で最も悔しい思いをした選手でもある。最終決戦では必ず結果を出してくれるはずだ。

 そして、最大のポイントは、いつも通りの戦い方を徹底するということだ。2点差を意識してギャンブル的に攻めることは得策ではない。バランスをとった中で先制点を奪うこと。これが勝利への鍵になる。「試合は90分ある。先制点を取れれば流れはガラッと変わる。そういう流れを作れれば最低でも2点は取れる。十分にチャンスはある。自分たちのサッカーを推し進めていきたい」(松田監督)。いままで積み重ねてきた自分たちのサッカーを信じて強い気持ちで戦うこと。それが福岡のスタイル。そうやってここまでやって来たのだ。



 もちろん、サポーターも最大限の後押しをする準備は出来ている。福岡からの応援ツアーで柏に乗り込むのは280人。それ以外にも、それぞれの方法で大勢のサポーターが柏に乗り込む。関東在住のサポーターも集まってくる。3年間待ち続けたチャンス。そして、「We WILL make it」のスローガンの下、このチャンスをものにするためだけに声援を送り続けた。今年最後の大一番。全ての思いをぶつけてJ1昇格への最後の関門に立ち向かう。

「サポーターの声援は本当に心強い。ファン、サポーターの人たちがいなければ、僕たちがあそこでプレーする意味がない。勝って期待に応えるしかない」。有光もサポーターとともに戦う気持ちを見せる。いつも言うことだが、J1昇格はチームの力だけが試されるのではない。チームと、それに関わる人たちの思いの強さが試される。そんな戦いで敗れることは出来ない。誰よりも強い思いを選手とサポーターは最後の一戦で見せるつもりだ。

 2001年11月24日、涙で霞んだ万博記念競技場で誓い合ったJ1復帰。それを実現するチャンス。確かに2点のビハインドは負っている。しかし、そんなことでくじけるような弱い気持ちは持ち合わせてはいない。いつも苦しいところから這い上がってきたのが福岡。今回も目の前の一戦に全てを賭けて臨み、勝利を掴み取ればいい。いつもと何も変わらない。強い気持ちで柏に立ち向かうだけだ。

「J1のチームのしたたかさと言うところで勝負を持っていかれた。若い選手たちには、ものすごくいい経験になったはず。しかし、経験で終わらせていいチャンスではない。そこから学んだものを次に生かして、最後の一戦に気迫も含めて全てを持って臨む」(松田監督)。全てを賭けた戦いは12日、15:00に柏サッカー場でキックオフされる。スタンドから、あるいは遠い福岡の地から選手たちに力を与えたい。そして、J1昇格の美酒を味わおう。


※記者会見の模様と選手のコメントはJ's GOALでご覧になれます。
松田浩監督(アビスパ福岡)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2004-12/00014317.html
早野宏史監督(柏レイソル)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2004-12/00014311.html
試合後の選手コメント(アビスパ福岡) http://www.jsgoal.jp/club/2004-12/00014313.html
試合後の選手コメント(柏レイソル) http://www.jsgoal.jp/club/2004-12/00014314.html


(アビスパ福岡) (柏レイソル)
GK: 水谷雄一 GK: 南雄太
DF: 宮本亨(63分/平島崇) 千代反田充 増川隆洋 アレックス DF: 波戸康広 中澤聡太 永田充 近藤直也
MF: 山形恭平 ホベルト 米田兼一郎(75分/松下裕樹) 宮崎光平 MF: 明神智和 増田忠俊(81分/谷澤達也) 大野敏隆
FW: エジウソン(50分/太田恵介) 有光亮太 FW: リカルジーニョ(71分/小林祐三) 宇野沢祐次(76分/山下芳輝) 玉田圭司
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