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 福岡通信 05/01/22 (土) <前へ次へindexへ>

 スローガンは「挑戦〜Try it again to J1!」
 

 取材・文/中倉一志
「(スローガンの意味は)昨年はJ1の壁に跳ね返されることになった。だから、そこのところを乗り越えてもらいたい、突き破ってもらいたい。個人的にも、もう1ランク上に個々が上がらないといけない。そういう部分では、いろんな殻を破ったり、壁を打破することに挑戦してもらいたい。そういったこととJ1への再チャレンジという言葉と合わさったもの」(松田監督)。1月17日、新生・アビスパとしての3年目のシーズンが始まった。

 チーム始動日となったこの日、福岡は箱崎宮で恒例の必勝祈願を行った。兄弟の結婚式に参列しているホベルトと、カタール遠征のために日本を離れている中村北斗と柳楽を除く26名の選手と首脳陣、そしてフロント全員が顔を揃えた。新入団選手の釘ア康臣、山形辰徳、長野聡、城後寿の4人と、新コーチとして招聘された池田司信コーチの顔も見える。昨シーズンの悔しい思いを忘れるわけにはいかないが、新しいシーズンを迎えた清々しい表情が印象的だ。

 午後は場所を福岡市役所に移して新入団選手の記者会見と福岡市長への表敬訪問。訪問を受けた山崎広太郎福岡市長は「しっかりと力を蓄えて、J1で安定的に戦えるチーム、選手に育って欲しいと願っていたが、いよいよ、そのときが来た。前半からJ2の優勝を目指して、しっかりと戦っていただきたい。福岡の経済界をはじめ、あらゆる層が皆さんのバックについている。九州の代表として決意を持って臨んでほしい」とチームを激励した。

 現在、福岡は基礎体力を蓄えることに重点を置いて雁の巣でトレーニングの真っ最中。2月2日からは宮崎県総合運動公園で第一次キャンプを実施する。このキャンプでは4試合のトレーニングマッチが行われる予定だ。その後、2月15日の午後に一度福岡に戻り、2月22日〜26日(詳細未定)の日程で島原での直前キャンプを張って開幕に備える。3度目の挑戦にして、最後の挑戦。福岡のJ1昇格をかけた戦いの幕が、いよいよ切って落とされた。



「やり残したことはJ1昇格ということだけ。失点も当初からすれば少なくなったし、ボール支配率も高くなった。きちんとつなぐサッカーも出来ている。足りないのは結果。昇格するというところだけ。今年は、もうそこのところしかない」(松田監督)。「2年でJ1」という目標を逸した後に引き続きチームの指揮を執ることに対しては、様々な葛藤があったことだろう。その上での1年契約。責任は結果という形で果たすという決意が滲む。

 ベースは昨年まで積み重ねてきた戦術。あとは個人がどれだけレベルアップし、試合で高いパフォーマンスを発揮できるかにかかっている。「2年間で満遍なく人が出た。ある程度のレベルまでは来ている。その中で、もうひとつ抜け出してくれれば。そういう11人になれば違ってくる。高い競争の中で勝ち抜いた選手が試合に出ている状況が不可欠だし、そういう雰囲気を作っていきたい」と松田監督も語る。

 J2なら殆どの試合で主導権が握れることは昨シーズンで実証済み。しかし、それだけでは勝利は手に出来ないことを知ったのも昨シーズンだった。必要なものは強い気持ちと、相手に関係なく、どんな状況に陥っても目の前の試合に勝つことだけに集中すること。そんな気持ちをリーグ終盤の厳しい戦いを続ける中で選手たちは手に入れた。その財産を普段のトレーニングから発揮できるかどうかがひとつのポイントだ。それが高い競争を維持する原動力になる。

 一方で、J1との力の差も痛感させられたのが昨シーズンだった。局面での厳しさ。チャンスとピンチを鍵分ける嗅覚の鋭さ。あらゆる面でのスピード。そして、たった一瞬の気の緩みが勝負を決するのがJ1の世界だった。J2で戦う中では、こうした差は出てこない。だからこそ、J1との差を常に意識し、それを埋める作業をする中でJ2での戦いに臨むことが不可欠になる。それが、個々の選手としてのレベルを上げる鍵になるからだ。



 残念ながらマイナス要因もある。それは米田と増川の移籍だ。昨シーズン43試合に出場した米田は、ホベルトともに中盤の底でチームのバランスを取り、安定した守備に大きく貢献。たま同じく43試合に出場した増川は、ユーティリティプレーヤーとしてあらゆるポジションで活躍。特に最終ラインでプレーした終盤は、高く、強く、速い守備で福岡のゴール前の壁として聳え立った。この2人を失ったことはチームにとっては大きな痛手だ。

 だが、これもサッカー。これがJ2なのだ。フロントが強い慰留をしたことは間違いないが、基本的に移籍の自由が認められているサッカーでは、選手が求める環境が他にあるのならば、最終的には本人の意思を尊重せざるを得ない。そういう状況を踏まえて、チームとしてどうカバーするかが最も重要なこと。もちろん補強も必要だろう。その一方で、現有戦力の中から彼らに代わる戦力を育て上げることも同じように大切。そして、これをチャンスと見て台頭してくる選手の存在も不可欠だ。

 チームは岡山一成の入団を発表したが、怪我で治療中の平島と、ワールドユース出場の為に多くの期間チームを離れることが予想される中村北斗と柳楽を欠く選手層では、前半戦は厳しいと言わざるを得ない。そんな中で大きな鍵を握ると思われるのが、昨シーズンは殆ど出場機会のなかった林と福嶋、そして、チーム最多の9得点を挙げながら第35節を最後に出場機会を失った古賀だ。J2での実績がある3人が本来の輝きを取り戻せば、この問題も即座に片付く。

 特に古賀の復調は、両サイドの選手層を厚くし攻撃力を向上させるだけでなく、SBやCBの起用方法に様々なオプションが持てるようになることを意味する。そして、林、福嶋が前線でボールをキープできるようになれば、エジウソンの別な面を引き出すことにもつながる。松田監督の言う「高い競争」の中から3人が抜け出してくることはチームに大きな力を与えるはず。3人の輝く姿を1日も早く見たいのは私だけではないだろう。



 さて、私の知人の多くは福岡をダントツのJ1昇格候補に挙げている。福岡に住む私に気を使ってのことではない。昨年度の実績、そして福岡のサッカーの質を見て、そう判断しているのだ。しかし、昨シーズンに挙げた成績は今年のアドバンテージになるわけではなく、負けたからといって、それが今年のハンデになるわけでもない。スポーツは過去の実績で判断されるものではなく、いま勝ったチームが強いチーム。そういう意味では、今年も横一線という考えが必要だろう。

 しかし、J1昇格が目標ではなくノルマとなった福岡にとっては、その横一線の戦いを、一歩抜け出したレベルで戦うことが求められる。44試合の長丁場を戦うJ2は非常に厳しいリーグであることは間違いない。しかし、その混戦模様に飲み込まれてしまってはJ1昇格はおぼつかない。「最終的には勝たなければ何も意味はない。とにかく勝つサッカー。第1節から、そういう気構えでサッカーをやっていきたい」。松田監督も決意を新たにする。

 もちろん、福岡に関わる全ての人たちがサポートすることも欠かせない。毎年のように言うことだが、チームの力とは選手だけの力ではない。関わる人の力の総和がチームの力となって現れる。そういう意味では、昨シーズンの終盤のようなサポートが前半戦から必要だ。味わった悔しさがチームと一緒なら、悔しさを晴らしたいという思いも選手と一緒。開幕戦から、それぞれの立場で、それぞれが出来る最大限のサポートをしたい。

 ある意味では、昨シーズン以上にプレッシャーのかかる1年になるかもしれない。毎試合、毎試合、厳しい戦いが続くかもしれない。そして、それを跳ね除けるのは、結局は強い心と、どんなときにも一丸となって勝利を目指す姿勢でしかない。J1への昇格を逃したという結果は、我々の心の中に様々な思いを生んだ。しかし、その思いを整理して、J1昇格のためだけに戦った昨シーズン同様、チームと一丸となって戦いたい。それがJ1昇格への近道だ。
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