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 福岡通信 05/02/10 (木) <前へ次へindexへ>

 手応えを掴んだ清水戦
 

 取材・文/中倉一志
 福岡の練習試合の2試合目の相手は清水エスパルス。福岡は鹿児島県へ移動して国分運動公園陸上競技場に姿を現した。昨日の汗ばむような気候とは打って変わって冷たい霧雨が降る中でのゲームとなった。試合は45分×3本。1本目と2本目は現時点で最もトップチームに近いと思われるメンバー同士で対戦。3本目は清水、福岡ともにトップチームへの生き残りをかけたメンバーで臨んだ。札幌戦でキレのある動きを見せた古賀は足の痛みのために、残念ながら別メニューでの調整となった。

 この日の福岡の課題は、札幌との試合で間延びしてしまった中盤をコンパクトに保つことと、ディシプリンのあるサッカーを90分間保てるかということ。もちろん、選手選考の意味合いが強いキャンプでは選手の入れ替えも行った。最も競争が激しいFWでは、札幌戦で1本目の先発を務めた福嶋が外れ、控チームとの対戦で2得点1アシストと全ての得点に絡んだ林が先発。結果を残した者を優先的に起用するという松田監督の強い意志が窺える。



 さて1本目の先発は、GKに水谷。最終ラインは右から川島、千代反田、岡山、アレックスの4人。ダブルボランチはホベルトと松下。右サイドには中村、左サイドは宮崎。2トップは林と有光がコンビを組む。今キャンプでは右サイドの組み合わせを重点的に試していることが窺えるが、この日は中村を高い位置で起用。札幌戦ではやや戸惑いが感じられた中村だが、ひとつ高い位置で使うことで特徴である攻撃力を生かそうということだろう。

 対する清水の先発メンバーは、GKには西部。最終ラインは市川、斉藤、森岡、山西の4人。ダブルボランチには伊東と高木がはいり、右に太田、左にチェ・テウク。トップ下に平松が構え、1トップは久保山が務める。チェ・テウク、市川、斉藤、森岡、伊東と、代表経験者5人を含む豪華な顔ぶれに、福岡がどんな戦い方が出来るかに興味が沸く。一方、今年から4バックに変更した清水は、互いの連携のチェックが主な目的になる。

 互いの出方を探るような序盤の主導権争いを経てリズムを掴んだのは福岡。ポイントは守備のアタッキングエリアの高さにあった。立ち上がりの福岡は、清水のパスワークに備えて、やや低めに守備ラインを設定していたが、清水のサッカーはボールを繋がずに、チェ・テウクにロングフィードを送るか、トップ下の平松に長いボールを預けるというもの。これを見て福岡はアタッキングゾーンを高い位置に変更した。これが功を奏した。



 高い位置からのプレスと中盤で絡め取るようなDFで福岡はゲームの主導権を掌握。有光がスペースに飛び出して危険な存在を示せば、久しぶりのトップチームでのプレーとなる林もポスト役としてタイミング良くボールを受ける。受身に回らざるを得ない清水は福岡にプレスをかけることも出来ず、いたるところにフリーの選手を作ってはボールを中々奪うことが出来なかった。しかし、福岡もラストパスの精度に欠いて、あと一歩のところでゴールが奪えない。

 2本目も展開は変わらない。清水の攻撃は低い位置から直接平松にボールを預け、それと同時に久保山と両サイドが裏を狙って飛び出し、さらに伊東が低い位置から攻撃参加するというもの。しかし、壷にはまったときは迫力があるのだが、これ以外に攻め手はなく、福岡もミスはあったが、全員でカバーしあってゴールを許さない。1本目同様、間延びする清水の中盤でボールを奪っては、スペースからスペースへとボールを繋いで前へ運んでいく。

 21分、試合前からの予定だったのだろう、清水は11人全員をサブメンバーに変更する。戦術的な交代ではないことは明らかで、福岡の優位性はさらに深まっていく。そして2本目の37分、宮崎、交代出場の田中と繋いでアーリークロスをゴール前へ。2本目の途中から出場していた太田が、DFに身体を寄せられながらも頭で合わせてゴールネットを揺らした。その後も主導権を握り続けた福岡は、無難にゲームをコントロールして、このまま試合を終わらせた。



 3本目の福岡の先発はGKが神山。最終ラインは山形辰徳、柳楽、長野、宮本の4人。ボランチには練習生としてキャンプに参加している喜名(2本目途中から出場)と高校生ルーキーの城後。右は大塚、左は田中。FWは福嶋とエジウソンの2トップだ。エジウソンはやや下がった位置でゲームを作る。トレーニングを重ねる中で、次第にトップチームが固定されつつある福岡だが、当落線上にいる選手にとっては貴重なアピールの場。結果を重要視している松田監督を是が非でも納得させたいところだ。

 試合展開は2本目までとは違って、ボールが両チームの間を行ったり来たりする慌しい展開。清水が修正してきたというよりも、福岡の組織としてのポテンシャルが落ちたことが要因だった。福岡はダブルホランチが機能せず、時間の経過とともに押し込まれる時間帯が増えていく。城後はダイレクトプレーには非凡なものを見せたが、清水のプレッシャーを感じてか、どうしても視野が狭くなりがち。悔しい思いをしただろうが、いい勉強になったのではないだろうか。

 清水の縦に蹴ってくる単調な攻撃に助けられる形で失点を凌いでいた福岡だったが、28分、清水にゴール前に押し込まれたところで、ペナルティエリア内にこぼれたボールをフリーにしていた枝村にミドルシュートを浴びる。そして、ボールの芯を捉えた強烈なシュートが福岡のゴールネットを大きく揺らした。その後、反撃に転じた福岡は、36分にエジウソンが、38分には釘ア、エジウソン、立石と繋いで決定的なシーンを作り出したが、あと一歩のところでゴールが奪えなかった。

 生き残りをかけた試合でアピールしたのは田中。2本目途中からの出場だったが、何度もサイドを突破して存在感を示した。山形の負傷でサイドのポジションが空いたままになっている現状は、田中にとっては最大のチャンス。そのチャンスを掴み取ろうとする意欲が感じられたプレーだった。一方、3本目の先発FWとして出場した福嶋は、開始10分くらいのところで足首を負傷。大事をとって、そのまま交代となった。怪我がたいしたものではないことを祈りたい。



「いい練習ゲームになった。相手は経験のある選手がいて、激しいし、そういうチームにやられっぱなしにならなかった。ちょっとしたラストパスの精度が、もう1本通っていれば、もっと点差をつけられたと思う。逆に、こちらの簡単なミスからピンチを招く場面もあり、それを決められなかったのはラッキーだった。最終的に相手のAチームが出ていた間は0−0。勉強になった試合」とは松田監督。札幌戦から修正し、ある程度の手応えを感じているようだった。

 この試合の収穫は、中盤でのコンビネーションに目処が立ってきたこと。「相手の自由を奪った形で戦うという札幌戦の後半のような戦い方がずっと出来たし、中盤で網を張って取ろうというプレスが、ある程度意識付けが出来た」と松田監督は振り返った。また岡山が入った最終ラインは今日も及第点。岡山にとって4バックの守備は初めての経験だが、福岡の組織的なDFに惹かれて移籍して来たというだけあって、その吸収力は高いようだ。

 右サイドでのテストを繰り返されている中村は、ひとつ高い位置でプレーしたことで持ち前のアグレッシブさを発揮。ドリブルで切り込んでチャンスを作ったかと思えば、守備の面でもチームへ貢献できることを示した。しかし、試合中はベンチから「北斗!北斗!と声がかかりっ放し。代表と違う動きを求められているため、まだ不慣れなところもあるようだ。しかし、ベンチからの激しい指示は期待の裏返し。1日も早く博多の森でプレーしてもらいたいものだ。

 課題を探すとすれば、やはり決定力か。主導権を握り続けた1、2本目も決定機という意味では少なかったように思う。相手がJ1のチームということもあっただろうが、清水の出来は決していいとは言えず、欲を言えばAチーム同士が対戦している間にゴールが欲しかった。松田監督も「FWは固定していない」と明言する。厳しい競争に勝ち抜いて、ひとつ上のレベルへ抜け出す選手が出てくることが求められている。
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