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 福岡通信 05/03/05 (土) <前へ次へindexへ>
J1昇格を目指して宮崎キャンプを順調に終えた。

 さあ開幕!すべてはこの日から始まる
 

 取材・文/中倉一志
 あと数時間で13年目のJリーグが幕を開ける。新たな戦いの日々を追いかけられるという高揚感と、そんな戦いをきちんとレポートできるのかという不安感。何年たっても、この気持ちは変わらない。「何でもあり」といわれているサッカーは、それゆえに奥が深い。試合を取材すればするほど奥深さが見えてきて、それが新たなものを発見する喜びと、その奥深さを理解できるのだろうかという不安感を呼び起こすのだろう。

 それでも、やはり開幕を迎える高揚感は格別なものだ。スタンドへと続く階段を上がりきると目の前に広がる青々としたピッチ。スタンドを埋めていく観衆。サポーターの歌声と声援。ボールを蹴る音。ベンチからの大声の指示と選手同士のコーチングの声。ピンチとチャンスの繰り返しにどよめく観衆。身体を張った選手たちのボールの奪い合い。そしてゴールの雄叫び。あの興奮の日々が帰ってくる。気持ちが高まるのは当然のことだ。

 ただひとつの心配事と言えば、シーズンを乗り切る体力が自分にあるかどうかだけ。実は、私は2004年シーズンが終わった気がしていない。入れ替え戦後、天皇杯、全日本女子選手権、高校サッカー選手権を追いかけてスタジアムを駆け回り、最終的に福岡に戻ったのは1月12日。さて、骨休みと思ったものの、すぐさま宮崎でのキャンプ取材が始まった。いつ年が明けたのかも分からず(汗)、節目を見つけられないままに今日を迎えたからだ。

 しかし、それは福岡の選手とて同じこと。彼らの実質的な休みは2週間程度だが、そんな状況の中で去年の悔しさを胸に刻み、心身をリフレッシュして新たなシーズンに臨んでいる。こちらが気持ちを整理しきれないまま開幕を迎えたのでは失礼というものだ。幸い、学生時代に体育会で鍛えた体力には自信がある。新しい環境で迎える初めての開幕も自分の心を特別な気分にしてくれる。新たな気持ちで、今年も福岡の44試合の全てを、自分の目に直接焼き付けたいと思う。その先にJ1の扉が開いていることを信じて。



再び戦いの日々が帰ってくる。
 さて、「福岡通信」や、いくつかのメディアで紹介させてもらった通り、チームの仕上がり具合は順調と見ていい。「目標を達成するまで、昨年の悔しさを常に忘れずにやるという気構えでやってきた。移籍や怪我人の穴をどうやって埋めるかをやってきたが、選手たちが、『穴じゃない、我々で埋められる』という高い意識で取り組んでくれた。その結果、去年と変わらない戦力になりつつある。新しい選手が加わることでプラスアルファもある」と松田監督は語る。

 一時は層の厚さどころか、誰が穴を埋めるのかさえ危ぶまれたチームが、ここまで熟成されたのには、いくつかの理由がある。ひとつはベースとなる戦術が構築されていたこと。過去2年間、松田監督はどんなに苦境に立たされても「いつも通りの戦い方を続けるだけ」と言い続け、そして実行してきた。同じパターンの繰り返しと批判を浴びたこともあったが、その蓄積は思った以上にチームに芯に与えた。選手が入れ替わっても遜色なく戦えるのは、その証と言える。

 二つ目はチーム内の競争意識の高さだ。特に顕著なのがFW陣。「去年できなかった分を取り戻そうという気持ちがあるからやれている」という林。「自分がチームを引っ張るエースのつもりでやっている」とは福嶋。有光は1シーズンで続けてコンスタントにゴールを奪うことを目標にし、流れを変える切り札とされている太田は黙々とトレーニングに励んで先発の座を狙う。一歩も譲らない競争は互いのレベルを向上させることにつながっている。

 そして三つ目は結果にこだわったことだ。「ベースのところは成果が上がってきている。あとは勝ちに結びつけることだけ。その部分のこだわりを選手に植え付ける意味でも、トレーニングの時からこだわってきた」と松田監督。もちろん、昨シーズン、直接、痛い目にあったのは選手たち。彼らにもこだわりがある。ゴールに向かって素早くボールを運ぶ意識や、シュートの正確性が高まってきたのは、そんな気持ちがあってこそだろう。



トレーニングマッチを見守るサポーター。
 しかし、だからといって簡単に勝てるほどJ2は甘くない。上位チームに対しては徹底的に守りを固め、時にはサッカーをすることを放棄するようなスタイルで勝ち点1を狙いにくる。そんな相手を崩すことは決して簡単なことではないからだ。圧倒的に攻め込みながら、最後の壁が破れないままにカウンターから失点。その後は再び徹底して守りに入る相手を崩すことができずに試合終了のホイッスルを聞くパターンはJ2ではよく見かける光景だ。

「とにかく無失点で終えること」(松田監督)。そんな我慢比べのような戦いでは、決して相手にゴールを許さないことが必要になる。前線からのチェイシングと、高い位置からのプレッシャーで相手を囲い込む中盤の守備。そして、ゴール前に築く厚い壁。それらの3つのラインが連動して初めて無失点の試合ができる。相手が狙うのは少ないチャンスに仕掛けるカウンター。90分間、集中力を切らさない強い精神力が求められる。

 一方で、いくら相手が守りを固めているといっても、90分間の中には必ず決定的なチャンスが何回かやってくる。そのチャンスを確実にものにすること、それが攻撃面でのポイントだ。求められるのは高い技術。FWには決めきる力が、MFには正確なラストパスが求められる。しかし、何より大切なのはどんな形でもゴールに押し込むという強い気持ち。「必ずFW陣で点を取る」(有光)。ゴールは誰かが取ればいい。しかし、その「誰か」が自分であることを意識することが大切だ。

 いずれの局面にせよ、全員攻撃・全員守備を基本にする福岡にとっては、90分間、ディシプリンを持ってプレーできるかが鍵。突出した誰かの個人技ではなく、組織で戦う福岡にとっては、誰かがディシプリンに欠けば、それはチームとしてのバランスを失うことに直結する。どんなに苦しい局面が訪れても、自分たちのサッカーを貫き通す強い気持ちで、昨年の終盤のようにディシプリンあるサッカーを見せて欲しい。



悔しい思いはもういらない。
 さて、福岡はアウェイの鳥栖戦でシーズンの開幕を迎える。今シーズンから経営譲渡を行って新しいクラブとしてスタートした鳥栖は、約半数の選手を入れ替えて全く新しいチームになった。若い選手が主体のチームだが、それぞれの選手のポテンシャルは高く、今シーズンのJ2では注目を集めているチームだ。新チームになったということで、行政も協力体制を明言しており、開幕戦には15000人を超す動員があるとの情報もある。

 ただし、大幅な選手の入れ替えを行ったチームにとっては、このシーズンオフだけではチームを熟成される時間が足りなかったようだ。27日に行われた神戸のサテライトチームとのトレーニングマッチの後、試したことのない4バックにシステムを変更。選手のポジションも入れ替えた。果たして、何を狙いにして、何をやってくるのかは、松本監督のみぞ知るだが、この時期に着ての変更は決してポジティブなものではないだろう。

 しかし、福岡にとっては相手の良し悪しよりも、自分たちのプレーを徹底できるかというところにポイントがある。相手をなめることなく、自分たちの力を謙虚に見極め、そして、自信を持ってプレーすること。築いてきたたチームのスタイルに間違いはない。後は、それを90分間やりきるだけでいい。それができたとき、福岡はゴールを奪い、鳥栖の攻撃をシャットアウトすることが可能になる。

「スタートダッシュかけるためにも開幕戦は大切。そして目の前の1試合、1試合だけを戦って、その結果で44試合を消化したい。どんな試合も1/44ではなくて、1/1と考えている。決して落とせない」と松田監督。有光も「J1へ昇格するための最初の一歩。絶対に落とせない。勝ちに行く」と強い意欲を見せる。そして注目の中村はこう言った。「去年はチームに貢献できず、試合にも出られなかった。今年開幕戦からいいプレーをしてチームに貢献したい」

 待ったなしの3年目。福岡のJ1への旅立ちが始まる。
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