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 福岡通信 05/07/20 (水) <前へ次へindexへ>

 最後のピースと熱い声援を武器にして
 2005Jリーグ ディビジョン2 第22節 アビスパ福岡vs.サガン鳥栖

 取材・文/中倉一志
2005年7月16日(土)19:00キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆:13,069人 天候:晴
試合結果/アビスパ福岡3−2サガン鳥栖(前1−1、後2−1)
得点経過/[福岡]中村(33分)、[鳥栖]八田(37分)、[福岡]田中(55分)、[鳥栖]新居(62分)、[福岡]山形(89分)


 長丁場のJ2は、ようやく前半戦を終えた。福岡の成績は9勝9分4敗の勝ち点36で単独2位。順位はともかく、数字の上ではとても満足のいくものではないが、上がりの3試合を連勝で終えたのは明るい材料だ。「後半に向けていい流れが出来た。満足することなく、この勢いを持続させられるように、みんなでやっていきたい」(千代反田)。決定力不足、セットプレーでのマークの甘さ等、課題が解決したわけではないが、悪い中にも手応えを掴んで前半戦を折り返すことが出来た。

 この3連戦での最大の収穫が勝ち点9を積み上げたことであるのは異論のないところだが、その背景にチームの精神的な成長があったことが大きかった。ピンチにも動じない精神的な強さ。チャンスとピンチを嗅ぎ分ける嗅覚の鋭さ。相手のミスを確実にゴールに結びつける集中力の高さ。勝負所で相手の後手を踏まないことや、予想通りにいかないゲームの中で、選手たちが主体的に関わって臨機応変に対応すること等、言わば「勝者のメンタリティ」が感じられた3試合だった。

 ゲームの主導権を握り続けながら、決定機を外し続けて相手を突き放せなかった徳島戦。負けに等しい内容のゲームだった草津戦。気迫と気迫がぶつかり合い、甲乙つけがたい熱戦を繰り広げた九州ダービー。過去の流れなら、いずれの試合でも勝ち点を失ってもおかしくはなかった。それが一転して勝ち点3を奪い続けたのは、試合を分けるであろうディテールの部分を押さえたからに他ならない。確かに相手のミスに救われた部分もある。しかし、それを結果に結びつけたのは偶然ではない。

「過緊張でもなく、寝ているような状況でもなく、適正なところのレベルに常に持っていけるかどうか。その辺りはずっと続いている課題」(松田監督)。技術・戦術が拮抗してきている現状で、相手との間にあるわずかな差を結果という形に表すには「勝者のメンタリティ」が欠かせない。都並敏史監督(仙台)も、同じような発言をしているが、技術・戦術面での向上と併せて精神面での壁を乗り越えることが、J1昇格への必要条件だ。



 さて、九州ダービーを振り返ってみよう。グラウシオの欠場で迎えたこの試合、松田監督は好調を維持する田中をFWとして起用。左サイドに山形を先発させた。山形、古賀が戻ってきたサイドには田中の居場所はない。また、FWには気持ちが乗っている選手を使うという原則からすれば、有光、田中の2トップは当然の流れではあった。ただ、就任以来、頑固なまでにターゲットマンを置き続けた松田監督が林を外したことは、ちょっとした驚きだった。それだけ、この試合を特別なものと捉えていたのだろう。

 キックオフ直後こそ前に出てきた鳥栖だったが、すぐに自陣に引きこもる。鳥栖の狙いは前半を0−0で終えること。最終ラインの4人の前に中盤の4人がフラットに並び、さらに2トップまでもが自陣内に下がり、等間隔に置いた3本のラインで守り抜くという徹底した亀の子戦術を取る。相手に引かれることが多い福岡だが、今シーズン、ここまで徹底して守りを固めてきたチームは初めてだ。

 さすがにここまで引かれると中々チャンスは作れない。福岡はボールを動かしながら隙をうかがい、左サイドから積極的にアレックスがオーバーラップを仕掛けるが決定機は生まれない。スペースのない状況では、有光、田中のスピードを生かすことも出来なかった。しかし、33分、右サイドの深い位置で得たFKのチャンスから中村北斗がヘディングシュートを決める。高さのある鳥栖DFの頭上を越して、さらに中央へ入ってくる中村北斗にぴたりと合わせたアレックスの素晴らしいFKが生んだゴールだった。

 しかし、鳥栖もすぐにセットプレーから追いつく。37分、宮原が放ったCKに飛び込んできたのは八田。フリーの体制から高さのあるヘディングシュートをゴールネットに突き刺した。結局、前半は1−1で折り返すことになったが、両チームとも欲しいのは勝ち点3。鳥栖もいつまでも守りを固めているわけにはいかず、攻め手を見つけられない福岡も突破口を切り開かなければならない。はたして両監督がどんな手を打つのか。興味はその1点に絞られた。



 先に動いたのは松田監督だった。55分、宮崎を下げて太田を投入。前線を太田、有光の2トップに、田中を右サイドへ回す。そして太田投入直後のプレーで福岡は2点目を挙げる。山形が左サイドからクロスボールを狙うと、鳥栖のDFが太田につられてボールサイドへと寄る。すると、その背後に出来た大きなスペースへするすると田中が入り込んだ。その足元にピタリと届く山形のクロスボール。フリーの田中は押し込むだけでよかった。

 しかし、鳥栖も新居のスーパープレーで追いつく。62分、宮原からのパスをゴールに背を向けたまま胸トラップしてボールを浮かせると、そのまま右足でジャンピングボレー。新居の背中越しに放たれたシュートは、次の瞬間、福岡ゴールネットを揺らした。さすがのGK水谷もノーチャンス。試合は再び振り出しに。そしてここからは、気迫と気迫がぶつかり合う、ダービーマッチにふさわしい激しい戦いを繰り広げることになる。

 同点に追いついた勢いのまま、鳥栖は途中出場の竹村を中心に左サイドを崩して福岡ゴールに迫る。福岡は68分、松下を下げて古賀を投入。トップ下に山形を移動させて中盤をダイヤモンドにすると、古賀の縦への突破に山形が絡んで鳥栖を押し戻す。残り5分となってからは、福岡がリスクを犯して前へ出れば、鳥栖はカウンターからチャンスを作り出す。ともにゴールを狙う姿勢を強くする試合は提示された3分間のロスタイムを過ぎても2−2。このままドローで終わるかと思われた。

 ところが九州ダービーには劇的な幕切れが用意されていた。自陣の深い位置でFKを得た福岡は、アレックス、古賀とつないでゴール前へ。川島がヘッドでつないだボールを有光が頭で競り勝ってゴール前に出来た大きなスペースへ落とす。そこへ山形が走りこんできた。飛び出してくるGKの動きを見極めて浮き球のシュートを放つ山形。ゆっくりと、しかし確実にゴールに吸い込まれるボール。次の瞬間、博多の森には大歓声が沸きあがり、同時に試合終了を告げるホイッスルが鳴った。



 甲乙つけがたい試合の行方を決めたのは福岡の勝利に対する執念だった。アレックスのFKはラストプレー。引き分けと思ったのか鳥栖の動きは明らかに緩慢で、特に中盤の選手は足を止めた。しかし、福岡は誰も足を止めずに素早くボールを前線へ。そして、アレックスのFKの時にはセンターサークル付近にいた山形が、味方がつないでくれることを信じて一直線にゴール前へのスペースへと走りこんだ。時間にして10秒程度の出来事。しかし、このわずかな時間に見せた両チームの差こそが強者と弱者を分けるものだ。

 徳島戦を迎えるトレーニングの頃から、福岡が変化を見せ始めていたことは、前回の福岡通信で紹介した通り。苦しい時期を過ごし、福岡はようやく最後のピースにたどり着いたようだ。ただし、リーグ戦はまだ22試合も残している。少しの油断は手にした最後のピースを手放すことにつながり、それは再び苦しい戦いの渦中に身を置かなければならないことにつながる。まだ何も成し遂げたわけではない。変わらぬ気持ちで目の前の敵に立ち向かうことこそが、これから求められることだ。

 また、周りの状況にも変化が出てきた。最も警戒すべきは札幌、仙台の両チーム。クラブの力はチームだけではなく、それに関わる全ての人たちの力の総和。そういう意味では、観客数、メディアの応援体制では福岡を勝る両チームは強敵と言わざるを得ない。しかも、札幌はデルリスを水戸から獲得する姿勢を見せている。福岡が不振を脱する足がかりを掴んだのと同様に、ライバルチームも戦える体制を着々と整えている。厳しい戦いは何も変わってはいない。

 いずれにせよ、あと22試合。無駄に出来る試合などひとつもない。選手たちは2週間のインターバルで心身ともに疲れを取り、新たな気持ちと、最後のピースを武器に戦ってくれるだろう。そして、我々メディアを含め、福岡に関わる全ての人たちも、それぞれの立場で、それぞれの方法で、クラブを後押ししたい。一喜一憂せず、強い気持ちを持ってチームとともにリーグ戦を戦いたい。その先にあるのはJ1の舞台。必ず至福のときが訪れることを信じて。


※監督記者会見、試合後の選手コメントは以下でご覧になれます。
松本育夫監督(サガン鳥栖)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2005-07/00021538.html
松田浩監督(アビスパ福岡)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2005-07/00021537.html
試合後の選手コメント http://www.jsgoal.jp/club/2005-07/00021539.html

(アビスパ福岡) (サガン鳥栖)
GK: 水谷雄一 GK: シュナイダー潤之介
DF: 中村北斗 宮本亨 千代反田充 アレックス DF: 一柳夢吾 八田康介 飯尾和也 高地系治
MF: 宮崎光平(55分/太田恵介→82分/川島眞也) 松下裕樹(68分/古賀誠史) ホベルト 山形恭平 MF: ビジュ 村主博正 小井手翔太(61分/竹村栄哉) 宮原裕司(89分/阿部文一朗)
FW: 有光亮太 田中佑昌 FW: 氏原良二(58分/鈴木孝明) 新居辰基
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