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 福岡通信 05/08/02 (火) <前へ次へindexへ>

 福岡4連勝!この勢いで駆け抜けろ
 

 取材・文/中倉一志
2005年7月30日(土)19:04キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆:10,613人 天候:曇
試合結果/アビスパ福岡2−0湘南ベルマーレ
得点経過/[福岡]田中(69分)、グラウシオ(76分)

 選手にとっては前半戦の疲労を取り、リフレッシュするための貴重な2週間。そして、サポーターにとっては首を長くして待ち続けた2週間。そんな中断期間が過ぎて博多の森にサッカーのある日常が戻ってきた。じっとしているだけで汗が吹き出てくる蒸し暑い天候は、選手にとっても、サポーターにとっても厳しいものだが、それでもスタジアムには10,613人の観衆が足を運んだ。今シーズン3番目となる有料入場者数は、福岡の巻き返しに対する期待する表れだ。

 福岡の前半戦の成績は9勝9分4敗、勝ち点36の2位。しかし、この成績に満足している者は誰もいない。「やり残したことはJ1昇格ということだけ。失点も当初からすれば少なくなったし、ボール支配率も高くなった。繋ぐサッカーも出来ている。足りないのは結果だけ」(松田浩監督)。そういって臨んだはずの2005年シーズンだったが、首位の京都に大きく離され、2位争いの混戦に巻き込まれている。前半戦の上がりの3試合を連勝で飾ったが、まだ混戦を抜けきったとは言い切れない。

 それでも、不振を脱する兆しは見えてきた。それは「勝者のメンタリティ」を手に入れつつあること。我慢すべきところで我慢できるようになり、勝負所を抑えられるようになってきた。ユース出身の田中佑昌が4試合で3ゴールと、その才能を覚醒しつつあることも好材料だ。そして、勝負運も引き込みつつある。後半戦のポイントは、こうした流れを持続させられるかどうか。そういう意味では、中断明けの湘南戦は大事な試合。「3連勝は過去のこと。新たなスタートと捉えて勝ち点3を奪いたい」と松田監督も意欲を見せる。

 守備の要の松下、左サイドの攻撃を担うアレックスの試合直前の怪我で、先発メンバーの変更を強いられた福岡は、2トップに有光亮太と田中佑昌を起用。ボランチの位置にはグラウシオとホベルト。両ワイドには山形恭平と宮崎光平。アレックスが抜けた左SBの位置には山形辰徳を置いて湘南戦に臨む。サブには、第19節の甲府戦後にFWに再転向した岡山一成が顔を見せる。そして、いつものようにサポーターの歓声を浴びる中、後半戦のキックオフを告げるホイッスルが鳴った。



 バリシッチ、村山祐介を出場停止で欠く湘南は、最終ラインを鈴木良和、戸田賢良、田村雄三、中里宏司の4人で構成。ボランチは不動の吉野智行と佐藤悠介。右ワイドに加藤望、そして左サイドには池田昌広。2トップは高さのある梅田直哉と柿本倫明が務める。福岡との過去2回の対戦では、まずは引いて守りを固めてきた湘南だが、この日は立ち上がりから積極的に前に出る。福岡との勝ち点差は7。J1昇格争いに生き残るためには勝つしかない事情が、戦い方を変えることにつながったのだろう。

 迎え撃つ福岡の狙いは、不必要に攻めあがらずに、相手が出てくるところを捕まえて素早く攻守を切り替えて攻めあがろうというもの。湘南が前に出てくるのは好都合だった。13分には宮崎が決定的なチャンスを作り出し、続く15分にはCKから千代反田のヘディングシュートがゴールを襲う。しかし、蒸し暑い気候が影響したのか、福岡にいつものような運動量がない。攻め手は中村北斗からのフィードだけという単調な攻めは湘南を崩しきれない。

 対する湘南の最初の決定機は20分、吉野からのロングボールに柿本が放った高い打点のヘディングシュートが右ポストをかすめる。そして、ここから湘南がリズムを刻みだす。攻めきれない福岡の不用意な縦パスをカットしてカウンター気味の攻め上がりで反撃を開始。加藤が中へ切れ込んで起点を作り、右からは鈴木がオーバーラップを仕掛ける。ターゲット役をこなすのは梅田。その梅田に柿本が絡んで危険な匂いを醸し出す。いつもの湘南のサッカーが機能し始めた。

 ボール支配率は福岡。意図するパス回しから攻撃の形を作り出す湘南。試合は一進一退の攻防を繰り返す。そして、試合は0−0のまま前半を折り返した。
「ボールは支配しているが、このまま手は何が起こるか分からない。最後まで集中しろ」(松田監督)
「前半の入り方は良かった。チャンスは必ず来る。焦れずにやろう」(上田栄治監督)
 拮抗した展開でものを言うのは先制点。それぞれハーフタイムの指示を受け、勝負を決める後半戦のピッチの上に選手たちが散っていく。



 湘南は後半の頭から池田に代えて永里源気を投入。左サイドの攻撃を活性化させて攻めに出る。決定機は47分。柿本放ったシュートがわずかにポストの左にそれる。対する福岡はボランチの位置に入っていたグラウシオをトップへ上げると、それに伴い、田中を右ワイドの位置へ、山形恭平をボランチの位置へスライドさせてゴールを狙う。そして50分、湘南のパスミスから生まれたチャンスにグラウシオが右足を一閃。鋭い弾道のシュートがポストの右へわずかにそれた。

 互いに決定機を作る展開も後半立ち上がりの主導権は湘南が握る。順位を7位まで落としているとはいえ、中盤の連携と、梅田を軸にしたツインタワーは福岡にとっても脅威。シーズン開始直後の好調さを取り戻しているようだ。そして53分、ロビングボールに反応した梅田が千代反田の裏を取ってドフリーに。そして右足で福岡ゴールへ流し込む。スタジアム中が息を呑んだ次の瞬間、ボールは右ポストに当たって跳ね返った。

 ここで松田監督は宮崎に代えて古賀を投入する。「古賀は流れを変えられる選手の一人。どこで誠史を出そうかと考えていたが、あのピンチを迎えたところで何かを変えなければいけないという判断」(松田監督)。さらに続く58分、有光を下げて岡山を前線に配置した。この2つの采配が流れを代えた。前線に収まりどころが出来、左サイドからの古賀の迫力ある攻撃参加が福岡にリズムを与え、湘南を自陣内へと押し込んでいく。

 69分、福岡に待望の先制点が生まれる。左サイドからの古賀の低く速いFKに田中が頭から飛び込む。ジャストミートされたボールは密集するDFの間を抜け、更にはGKの手を弾いてゴールネットを揺らした。そして勝負を決める2点目は76分、再び古賀のパスから生まれた。ゴールエリア左隅で古賀からのラストパスを受けたグラウシオが鋭く反転。飛び出してくるGK小林の動きを冷静に見極めてゴールマウスへと流し込んだ。その後の湘南の反撃を0点に抑えた福岡は、第2クールから続く連勝を4に伸ばして2位を堅持した。



 ここ4試合で10得点。決定力不足が課題とされていた前半戦とは見違えるようにゴールという結果が付いてくるようになった。直接の原因は、連勝期間中に3得点を挙げている田中の活躍だが、チームとしてチャンスに対する嗅覚が鋭くなったことや、ゴールを奪うという気迫が身についてきたことが何よりも大きい。そして、それが5試合ぶりの無失点という結果ももたらした。「プラスαの部分。最終的には気持ちの部分」と松田監督も評価する。

 また、岡山がターゲットマンとして機能することが証明されたことや、左SBの位置に入った山形辰徳が期待に応えた働きを示したこと等、明るい材料も生まれてきた。それでも、まだ安心は出来ない。J2は12チームが拮抗しているリーグ。わずかな隙が命取りになることは、過去に十分、味わされている。身に付けつつある「勝者のメンタリティ」を武器に、バックアップメンバーの底上げによるチーム力の強化と、結果にこだわる姿勢を貫くことは、これからも大きなポイントになる。

 さて、じわじわと混戦模様の2位争いから抜け出しそうな雰囲気を作り出した福岡。そんな福岡にとって最初の山場が8月にやってくる。2日の仙台戦を皮切りに、水戸、山形、京都、徳島と続く5試合でどれだけ勝ち点を積み上げられるかで、今後の戦い方が大きく左右される。特に単独2位の座を確実なものにし、更に京都への追撃体制を整えるためには、仙台、山形、京都の3つは負けられない試合。厳しい条件だが、これを成し遂げて、初めて福岡は力が付いたと言える。

 そのためには、先ずは目の前の一戦、一戦を最後のつもりで戦い、確実に勝ち点3を積み重ねていくこと。それは、水戸や徳島といった下位チームに対しても同じこと。どこにでも勝てる可能性もあれば、どこにでも敗れる危険性があるのもJ2の舞台。余計な星勘定をせずに、しっかりと戦いたい。まずは今日の仙台戦。アウェイ特有の雰囲気の中での試合を強いられるが、いつもの戦いさえ出来れば十分に勝機はある。結果にこだわってライバルを撃破したい。
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