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 福岡通信 05/08/17 (水) <前へ次へindexへ>

 悔しさを飲み込んで
 2005Jリーグ ディビジョン2 第26節 モンテディオ山形vs.アビスパ福岡

 取材・文/中倉一志
2005年8月13日(土)19:04キックオフ 山形県総合運動公園陸上競技場 観衆:4,821人 天候:雨のち曇
試合結果/モンテディオ山形1−1アビスパ福岡(前0−0、後1−1)
得点経過/[山形]臼井(74分)、[福岡]古賀(89分)


取材・文/中倉一志

 今シーズン3度目の対戦となった山形戦は、またも決着がつかなかった。これで3試合連続引き分け。松田監督が福岡を率いるようになってからの通算成績は3勝7分1敗となった。勝負所の時間帯に先制されて敗色濃厚だった試合を、終了間際に放った古賀の劇的な直接FKで追いついたが、逆転するには提示された2分間のロスタイムは短すぎた。試合の流れから言えば勝ち点1を拾った試合。しかし、京都への追撃体制を整えるという意味では勝ち点2を失った試合だった。

 この日の福岡はスクランブル体制で臨んでいた。フィジカルコンディションが整わないホベルトが欠場。故障で調整中の松下も間に合わず、復帰の目途が立ったアレックスも90分間のプレーは難しいという事情があったからだ。布陣はGKに水谷。最終ラインは右から宮本、長野、千代反田、山形辰徳の4人。ボランチは山形恭平と中村北斗の2人。両ワイドに宮崎、古賀を置き、2トップはグラウシオと田中が務めた。

 積極的な布陣変更と言うよりは、これしか組みようがなかったという布陣。中盤で持ちこたえて、グラウシオを中心に前の4人でゴールを奪うというのが狙いだったはずだ。しかし、さすがに急増ボランチ2人で中盤のバランスを取るのは難しかった。さらに、ここまで合格点のつけられるプレーをしているとはいえ、最終ラインの長野と山形(辰)は経験が浅い。ボランチと最終ラインのバランスが悪く、山形に押しこまれたのはやむを得ないことだった。

 結局、中盤で主導権を握れなかったことが最終的に引き分けという結果につながったが、チーム事情を考慮すれば、悔しさを飲み込んで受け入れざるを得ない引き分けだった。しかし、メンバーが揃わないことを理由に勝ち点を失っていては、優勝はおろか、J1昇格も見えてこない。現有戦力で戦わなければならない以上、どんな状況にあっても全員の力を合わせて勝ち点3を奪うこと。それが今の福岡に求められている。



「我々のいいところを出していこうということで、前線から守備をして、どんどん前に攻めていこうということを選手に伝えてゲームに入った」(鈴木淳監督・山形)。山形は、楔のボールを受けるために下がってくる阿部に入れ替わるようにして永井が積極的に高い位置へ飛び出して行く。そして、福岡が攻撃に転じようとすると高い位置からの素早いプレスで潰し、前線でボールを受けるグラウシオにはCBとボランチで挟み込んで自由を奪った。そんな山形の前に福岡が押し込まれる展開が続く。

 しかし、この時間帯を何とか凌いだ福岡は10分過ぎから落ち着きを取り戻す。そして、ここからいつものように我慢比べの試合が始まった。ボールキープ率では勝るものの、福岡のプレッシャーの前にボールが運べなくなった山形は、最終ラインでゆっくりとボールを回してはロングボールを前線へ放り込む単調な展開。セカンドボールを奪って福岡の守備陣をこじ開けようとするが、福岡は要所を押さえて決定的なチャンスを与えない。

 そして福岡は、ボールをつないでビルドアップから攻撃の形を作る。その回数は決して多いとはいえないが意外に簡単にボールが回る。ところが、前線に収まり所がなく、相手の守備網を超える攻撃の形を作れない福岡は、山形同様に要所を崩すことが出来ずにチャンスが作れない。結局、前半で生まれた決定機は、17分に山形の大塚が放ったミドルシュートのシーンと、27分に千代反田がCKに頭を合わせた2つのシーンだけだった。

「前半は相手のプレッシャーもきつくて、思うようにゲームが運べなかった。ただ、向こうも思うようにゲームが運べなかったのではないか」。鈴木監督が振り返ったように、前半は相手の特徴を消し、そして相手の守備網を崩すほどの攻撃を繰り出せなかった両チーム。この時点で試合は既に引き分けの匂いが強く漂っていた。しかし、互いが置かれた立場を考えれば、ともに欲しいのは勝ち点3。どこで勝負を仕掛けるかが後半のポイントだった。



「この試合は1点勝負になる、集中しろ。拾ったボールをシンプルにつないで行け」。松田浩監督(福岡)は、そう言って選手をピッチに送り出す。ところが、後半も立ち上がりの主導権を握ったのは山形だった。後半50秒に決定機を作り出すと、その勢いのままに福岡陣内へ入り込む。狙いは福岡の右サイド。ここにできるスペースを本橋、内山が使いだすと、山形はボールが回るようになり、サイドからの攻撃が機能しはじめた。

 しかし、ここでも福岡は粘り強い守備を見せてチャンスを与えず。53分には山形辰徳に代えてアレックスを投入してジワジワと山形を押し返す。そして、田中が55分にドリブルからシュートを放ち、続く59分にも強烈なミドルシュートでゴールを狙う。動き出したゲーム。ここで両監督が同じタイミングで動いた。61分、松田監督は有光を投入。宮崎を下げて田中を右サイドへシフトさせる。対する鈴木監督の選択は本橋を下げて高橋を投入するというものだった。

 采配が吉と出たのは山形。高橋の投入でサイドからの攻撃を活性化させて中盤を掌握。中盤のバランスを保てない福岡は防戦一方になり、ボランチが低い位置に下がってしまって山形の攻撃を跳ね返せない。そして74分、山形に先制点が生まれる。福岡のクリアボールを拾った山形は、ボールウォッチャーになった福岡の前で9本のパスを流れるようにつなぐと、最後は永井のスルーパスに飛び込んだ臼井がゴールネットを揺らした。

 流れを変える必要に迫られた福岡は早々と有光を諦めて林を投入。前線での起点を作ることと、高い位置からの守備を林に託す。しかし、この采配も功を奏さず。山形が主導権を握ったままに進んでいく試合に、福岡は攻め手を見つけられないように思えた。ところが終了間際の89分、ゴール右前の地点で得たFKに古賀の左足が唸った。クロスバーに当たったボールが内側に跳ね返って同点ゴール。そして、試合は同点のまま試合終了のホイッスルを聞いた。



 互いに相手の長所を潰しあうような展開は、これまでに何度も見られた展開。中盤で主導権を握られるのも、ある程度覚悟していたことだった。ただ、福岡が悔やまれるのは、最後まで後手を踏んでしまったこと。前半の立ち上がり然り、後半の立ち上がり然り。「取られてからでは遅い。後半、うちのほうがしっかり取るという姿勢を出していく必要があった」と千代反田が振り返ったように、どこかのタイミングで先に仕掛ける姿勢が欲しかった。

 さて、次節は首位京都との対戦。現在の勝ち点差は16。残りの試合数を考えると逆転優勝を狙うためにはギリギリの差。これ以上勝ち点差を広げられるわけにはいかない。また優勝云々を別にしても、J1昇格をノルマとするチームが、同一チームに一方的に負け越すなど許されることではない。更に京都は、選手を育成して組織で戦うことを志向している福岡とは対照的なチーム。自らが選んだ方向が間違っていないことを示すためにも負けられない一戦になる。

 厳しい試合になるのは承知の上。それでも結果にこだわって勝ち点3をもぎ取らなければならない。過去2度の対戦が示すように京都は十分に互角に戦えるチーム。自分たちの戦いを実行すれば勝ち点3は手に入れられる。一瞬たりとも気が抜けない試合は、相手に主導権を握られる時間帯が必ずあるが、そんな中でも、常に先に仕掛ける姿勢を失わずに戦いたい。受けてしまったらこれまでと同じ。ベンチ入りのメンバーを含めて積極的な姿勢を見せて欲しい。

 2位争いから抜け出して京都への追撃体制を整えるか。それとも再び2位争いの混沌とした状況へ後戻りするのか。結果によっては、これからの戦い方が大きく変わる一戦。この試合の意味するものは大きい。その一戦を福岡に関る全ての人の力を合わせて戦いたい。そして、博多の森の熱狂とともに目標へ向けて確かな一歩を踏み出したい。


松田浩監督(アビスパ福岡)記者会見
鈴木淳監督(モンテディオ山形)記者会見


(モンテディオ山形) (アビスパ福岡)
GK: 桜井繁 GK: 水谷雄一
DF: 臼井幸平 レオナルド 小原章吾 内山俊彦 DF: 宮本亨 千代反田充 長野聡 山形辰徳(53分/アレックス)
MF: 佐々木勇人 大塚真司 永井篤志 本橋卓巳(61分/高橋健二) MF: 宮崎光平(61分/有光亮太→76分/林祐征) 山形恭平 中村北斗 古賀誠史
FW: 原竜太(84分/根本亮助) 阿部祐大朗(74分/林晃平) FW: 田中佑昌 グラウシオ
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