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 福岡通信 05/08/27 (土) <前へ次へindexへ>
スパイクに絡みつく深く濡れた芝もなんのその。雨の中で激しくボール
を奪い合う。

 鮮やか組織サッカー。鯰田FC、さわやか杯を制す
 第29回さわやか杯福岡県ジュニアサッカー大会

 取材・文/中倉一志
 去る8月20、21日、コカ・コーラウエストジャパングループと(株)モルテンの協賛による「さわやか杯福岡県ジュニアサッカー大会(以下、さわやか杯)」が開催された。今年で29回目を迎える「さわやか杯」は、この年代の大会としては、全日本少年サッカー大会福岡県大会、九州少年サッカー大会福岡県大会と並ぶビッグタイトルのひとつ。ちびっ子プレイヤーたちは、日頃の練習の成果を発揮すべく、精一杯ボールを追った。

 小学校6年生以下の選手たちの参加により行われる大会は、福岡県下の各支部予選を勝ち抜いた24チームが参加。各支部の内訳は、福岡支部7、筑前地区4、北九州支部5、筑豊支部3、筑後地区5となっている。参加チームは以下の通り。

福岡地区 アビスパ福岡U−12 横手少年サッカークラブ わかばサッカークラブU−12 福岡ドリームスU−12 板付ウイングスSC 壱岐少年サッカークラブ FCテイクワンズ
筑前支部 勢門ウイングス 久山フットボールクラブ 春日イーグルススポーツクラブ BUDDY・FC
北九州支部 ながなが帝踏イレブン 小倉南フットボールクラブジュニア 周防灘フットボールクラブ 小倉ダックビルズFC・U−12 神理フットボールクラブ
筑前支部 鯰田フットボールクラブ 稲筑少年サッカークラブ 二瀬フットボールクラブ・U−12
筑前支部 フェニックスFC 城島FC 筑後少年サッカークラブ 城内サッカークラブ リトルキッカーズ

 大会は、まず3チームずつ8ブロックに分けて予選リーグを実施。各ブロック1位チームのみが最終日の決勝トーナメントへ進む。なお、予選リーグ敗退チームはフレンドマッチに回って試合を行うことになる。勝負にこだわる中でタイトルを目指すことは大切なことだが、タイトルに届かなくても、多くの試合を経験することも同じように大切だ。試合時間は予選リーグが40分間、決勝トーナメントは30分間。決勝戦は40分間となっている。これは試合スケジュールによるもので、選手たちの負担を考えてのことだ。



ミドルレンジから積極的にゴールを狙う。小学生年代とはいえ技術は
高い。
 大会初日は、時折、激しい雨が降るあいにくの天候の中、さわやか広場と雁の巣レクリェーションセンターに分かれての開催。身体ひとつの私は、我が家から自転車で5分の距離にある「さわやか広場」へと足を運んだ。この会場は歩くと身体が沈み込むのが分かるほどのフカフカのぶ厚い芝生が特徴。ただ、普段、芝生でプレーすることの少ない選手たちは、足に絡み、ボールが滑らない芝生に戸惑っている様子。それでも、随所に見せる高度なプレーは、やはり県大会に進出してくるチームだけのことはある。

 いくつか見た試合の中で印象に残ったのは、ながなが帝踏イレブン(以下、帝踏)と壱岐少年サッカークラブ(以下、壱岐)の一戦。帝踏はこの試合が初戦。壱岐は既に初戦で勝利を挙げており、この試合に勝てば予選グループ突破が決まる。試合は開始直後に壱岐がいきなり2点を先制して始まった。実はこの2得点は、雨で滑るボールを帝踏GKが掴みきれない場面から生まれたもの。状況から言ってGKは責められないが、本人は立ち直れないほどのショックを感じていたはずだ。

 しかし、そんな彼を奮い立たせようと帝踏イレブンは猛攻を開始。5分に反撃のゴールを挙げると、その後3点目を失っても気落ちせず、前半終了間際には2点目を奪って追撃体制を崩さない。そして後半に入ると壱岐を自陣に押し込んで立て続けに2得点。遂に逆転に成功した。しかし、壱岐も負けてはいない。すぐさま反撃に出て同点ゴールをゲット。試合は両チームとも持ち味を発揮した白熱した展開になっていく。最終的には、終了間際とロスタイムに1点ずつを挙げた帝踏が逆転勝利を収めたが、見所の多い試合だった。

 ところで、先に行われた全日本少年サッカー大会福岡県大会で優勝を果たし、さらに「さわやか杯福岡支部予選」をトップ通過して今大会の優勝候補に挙げられていたアビスパ福岡U−12は予選リーグを1勝1分。勝ち点、得失点、総得点ともBUDDY・FCと並んだため、大会規定に基づいて抽選を実施し、その結果、BUDDY・FCが決勝トーナメントに駒を進めることになった。BUDDY・FCは筑前地区3位のチーム。それだけ、各チーム間の実力が拮抗しているということなのだろう。



大きな相手にマンマークでしつこく食い下がる鯰田のボランチ。
 2日目に行われた決勝トーナメントは「さわやか広場」での開催。前日同様にあいにくの雨模様の中、準決勝の第1試合では、鯰田フットボールクラブ(以下、鯰田)と帝踏が対戦した。鯰田のシステムは3−5−2。この年代では、ほとんどのチームが3人のDFラインの後ろにスイーパーを置く4バックを採用しているが、中盤の組織が安定しているからこそのシステムなのだろう。特徴は、その中盤を押し上げて組み立てる組織的な攻撃。ボランチの選手の守備力の高さも目を引く。

 北九州支部予選を1位通過した帝踏は、今年で創立22年目を迎える幼稚園から中学校までの一環指導体制をとっているクラブチーム。モットーは全員攻撃・全員守備。特に、予選リーグでも見せたように攻撃の強さが目を引く。システムは、標準仕様ともいえるスイーパーを1人置いた4−4−2。ダイヤモンドの中盤からトップ下の選手が起点になってゲームを作り、両サイドが高い位置へ押し上げてゴールを目指す。

 立ち上がりの主導権を握ったのは鯰田。しかし、帝踏もジワジワと押し戻して、やがて試合は一進一退の攻防に。ともに自分たちの特徴を発揮した、押しつ、押されつの展開が続く。そんな試合が動いたのは14分、鯰田の直接FKが帝踏ゴールマウスを捕らえた。この1点で流れは鯰田に。後半の9分には鮮やかにサイド攻撃から追加点。終了間際の後半14分にもミドルシュートを決めて試合を決めた。両チームの差はほとんどなかったが、先制点で流れを掴んだ鯰田が決勝戦に駒を進めた。

 この試合と平行して行われたもうひとつの準決勝では、わかばサッカークラブU−12(以下、わかば)と、小倉南フットボールクラブジュニア(以下、小倉南)が対戦。福岡県内ではともに長い歴史を持つ伝統のクラブ同士の対戦となった。試合は前半に先制点を挙げた小倉南がわかばの反撃を0点に抑えて決勝戦に進出。今シーズン、初めての県大会出場となったわかばは、はつらつとしたプレーを見せたが、あと一歩が及ばなかった。



後半ロスタイム、コーナーキックからゴールを狙う小倉南(白)。
 さて決勝戦。筑豊支部予選1位の鯰田と、過去に8回の優勝経験を持つ小倉南と、ともに優勝を争うにふさわしいチームが駒を進めてきた。準決勝まで空を覆い、時折激しい雨を降らせていた雲がきれいに去り、一転して強い日差しがピッチの上に降り注ぐ。涼しいくらいだった気温も上がり、一瞬にして夏が戻ってきた。悪条件の中、自分たちの力を出し切って決勝戦まで勝ち進んできた両チームに、サッカーの神様がプレゼントしてくれたのかもしれない。

 試合は、そんな両チームの戦いにふさわしい一進一退の攻防で幕を開けた。鯰田が攻め込めば小倉南は素早くプレッシャーをかけてチャンスを与えず、そして、ここぞとばかりに小倉南がゴール前へ迫れば、鯰田もバランスのいい組織で跳ね返す。実力伯仲の両チームの戦いは我慢比べのようでもあり、しかし、わずかな隙を見せれば、たちどころに攻守が入れ替わる一瞬たりとも気が抜けない展開。見守るお父さん、お母さんたちが精一杯の声援を送っている。

 ゲームが動いたのは前半の18分。CKからゴール前の混戦になったところを鯰田が押し込んだ。1点のビハインドを追うことになった小倉南はリスク覚悟で前へ出るが、バランスのいい中盤を誇る鯰田は得点を許さない。特に、小倉南のエースFWに徹底マークに着く鯰田のボランチが見事なまでに相手を封じ、仕事をさせなかったのが大きかった。後半ロスタイムに得たCKから小倉南は決定的なヘディングシュートを放ったが、これをGKがファインセーブ。そして次の瞬間、試合終了を告げるホイッスルが鳴った。

 2日間に渡る大会は鯰田の初優勝で幕を閉じた。決勝戦に進んだ両チームはもちろん、参加した全てのクラブのはつらつとしたプレーが印象に残る大会だった。6年生は、この大会を最後にジュニアのカテゴリーから卒業し、今度はひとつ上のカテゴリーでサッカーを続けていくことになる。カテゴリーが上がるごとに難しさも増してくるのだろうが、この日、ボールを追いかけた純粋な気持ちを、いつまでも持ち続けてほしいと思う。そして何年か経ったら、博多の森での試合後に話を聞かせてもらえれば最高だ。
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