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 福岡通信 05/09/03 (土) <前へ次へindexへ>

 福岡大学、23回目の天皇杯へ
 第9回福岡県サッカー選手権大会 決勝戦 福岡大学vs.九州産業大学

 取材・文/中倉一志
2005年8月28日(日)13:04キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆:200人 天候:晴
試合結果/福岡大学1−0九州産業大学(前0−0、後1−0)
得点経過/[福大]角(69分)


 天皇杯全日本サッカー選手権大会への予選を兼ねた「第9回福岡県サッカー選手権大会」が、7月9日〜8月28日の日程で行われた。大会へ参加したのは、前年度大会決勝進出チームの他、前年度の九州リーグ上位1チーム、同九州大学リーグ上位4チーム、高校推薦2チーム、クラブ推薦1チーム、社会人推薦1チームの合計11チーム。一発勝負のトーナメント方式で福岡県約400チームの頂点に立つチームを決める。そして、昨年同様、福岡大学(以下、福大)と九州産業大学(以下九産大)が決勝戦に駒を進めてきた。

 さて、決勝戦の模様を紹介する前に、両チームの過去の天皇杯への挑戦の様子を紹介しておこう。福大は九州大学サッカー界を圧倒的な強さで牽引する、知る人ぞ知る強豪チーム。天皇杯が完全オープン化される前から数えると実に22回の天皇杯出場を誇っている。各都道府県代表に天皇杯への出場権が与えられるようになった1997年度からは、全ての年度で福岡県選手権の決勝戦に進出して6回の優勝を果たした。今年は2年連続7回目の県選手権優勝とともに、通算23回目の天皇杯出場を目指す。

 また、福大はユニバーシアード代表監督として乾監督が、代表選手として赤星拓(GK)、登尾顕徳(DF)、衛藤裕(MF)、高橋大輔(FW)らが準決勝から合流。メンバー的には豪華な顔ぶれが揃った。しかし、チームを離れていた期間は1ヵ月半。しかも、帰国して5日で2試合をこなすハードスケジュールは、連携不足とフィジカル面での不安という側面も併せ持つ。果たして、どんな試合が出来るのか期待と不安が混じる。

 対する九産大も九州大学サッカーリーグの強豪のひとつ。大学リーグ開設以来のタイトルは福大がほぼ独占状態にあるためリーグ戦の優勝経験はないが、常に上位に顔を出して優勝争いを繰り広げている。福岡県サッカー選手権では今年を含めて7大会で決勝戦に進出。福大と並ぶ福岡県の2強と呼べるチームだ。しかし、第3回大会(1999年度)では福大を破って天皇杯への出場を果たしたが、その後は福大の壁を崩せずにいる。昨年の決勝戦でのVゴール負けの悔しさを晴らすべく福大に挑む。



 福大のフォーメーションは4−4−2。ユニバーシアードの初戦(8/10)以来、試合から離れている赤星はベンチスタートだが、登尾はCB、衛藤はボランチ、そして高橋はFWと、それぞれのポジションに入る。対する九産大のフォーメーションも4−4−2。2トップは今村が1トップ気味に構え、永嶺が少し引いた位置でシャドーストライカー的な役割を担う。夏が戻ってきたような暑さだが、決勝戦だけあって互いにアグレッシブな動きが目立つ。

 両チームの戦い方は対照的だ。福大はロングボールを高橋に当てて高い位置で起点を作り、そのセカンドボールを拾ってシンプルに前に出る。選手同士の距離は比較的広く、ミドルレンジのパスを2、3本つないでゴール前へと持ち込んでいく。対する九産大は1トップ気味の今村を中心に、永峯、上野、森山がポジションを入れ替えながらショートパスをつなぎ、そこへボランチの宇陽が効果的に押し上げてくる。

 前半は大部分の時間を福大が九産大陣内で過ごす展開となったが、それはロングボールを多用するスタイルによるもので、試合の主導権を互いに掴みきれない展開が続く。高い位置で起点を作ろうとする福大は、そのセカンドボールを生かせずにペナルティエリアから前へいけず、ショートパスで福大を崩しにかかる九産大も、あと1本のパスがつながらずにチャンスを作れない。互いにボールと人にしっかりと寄せて、相手の特徴を消しあう展開が続く。

 前半唯一の決定機は32分。福大陣内、右サイドのスローインから九産大の宇陽がドリブルで右サイドを突破。そこからの折り返しに森山があわせた。九産大らしい攻撃だったが、残念ながらシュートは枠を捉えることが出来なかった。結局、前半はスコアレスのまま終了。互いにペースを引き寄せることが出来ずにこう着状態のままで折り返した。どうやら試合は1点勝負。後半にどちらが、どのようにペースを引き寄せるかに注目が集まる。



 後半に入って先にペースを掴んだのは九産大。暑さのせいか、やや間延びした中盤で持ち味のショートパスを回してリズムを刻む。プレッシャーがない中で自分たちの特徴が出始め、ジワジワと福大を押し込んでいく。福大は何とか反撃に出たいところだが、攻撃の手立てが高橋へ当てるロングボールだけでは、それも叶わない。中盤も押し上げられず、高橋が前線で孤立する場面が目立つ。それでも福大は、しぶとく粘って九産大に決定機だけは与えない。

 ともに突破口が開けない試合は、暑さも手伝って消耗戦の様相を呈してくる。そして先に動いたのは九産大。65分、今村に代えて原田を、出田に代えて塚崎を投入。森山をFWの位置に上げて攻撃的な姿勢を貫く。ここが勝負所と見ての采配だった。対する福大も69分、山内に代えて角を投入。足元のプレーを入れてロングボールに頼るだけのサッカーを打開するのが狙い。福大もまた、この時間帯を勝負所と見ての選手交代だった。

 そして、この直後に貴重なゴールが福大に生まれる。ペナルティエリアの左門付近でボールを受けた角が巧みに身体を入れ替えてDFをかわすと、そのままペナルティエリア左側深くまで侵入。九産大GK庄崎がセンタリングを警戒して中央へ体重を移した瞬間を見逃さずに、ニアサイドへ蹴りこんだ。角はピッチに入ってこれがファーストプレー。相手GKの動きを冷静に見極めて放った頭脳的なシュートだった。

 ここからは福大のペース。乾監督の狙い通り足元のプレーを織り交ぜられるようになった福大は安定感を取り戻し、試合をコントロールしていく。終了間際には、3バックにして前に出てくる九産大の反撃にあったが、ここは集中力を切らさずに相手にゴールを与えず。そして2分間のロスタイムを危なげなく過ごして、7度目の福岡県選手権優勝を飾るとともに通算23回目の天皇杯出場権を獲得した。



 試合終了後、乾監督の嬉しそうな表情が印象的だった。スタンドから応援を送っていた部員たちから、「乾の笑顔が見たい、見たい、見たい」とコールがかかると、右手を挙げて照れくさそうに応えていた。これまで数え切れないほどのタイトルを獲得してきた福大だが、乾監督が、これほどまでに柔和な表情を見せることは珍しい。それだけ苦しい戦いだったということだろう。

 何しろ、8月10日から中1日で戦うという日程をこなしてユニバーシアード3連覇を果たし、休むまもなく23日の晩に福岡へ戻ったかと思えば、翌24日の午前10:00から準決勝、そしてこの日の決勝戦というハードスケジュールは、ユニバ組のフィジカルも、精神も、ぼろぼろにしていたはず。それでも福岡県チャンピオンの座を守れたのは、ユニバ組が強い精神力を発揮して戦ったことと、留守を預かっていたコーチや選手たちが、彼らの働きをフォローする万全の準備をしてきたからだ。

「精根尽き果てるまで戦ったユニバーシアードから、すぐに気持ちを切り替えて大会に臨んでくれた選手たちは本当に良くやってくれたし、残っていた選手やコーチたちが夏に頑張ってきたことが今日の結果に結びついた。今日はこの結果を素直に喜びたい」。そう語る乾監督は本当に満足げだった。

 さて、今年の天皇杯は9月17日から始まる。福大の出場は19日の2回戦から。高田FC(奈良県代表)と高松FC(香川県代表)の勝者と戦った後、勝ち上がればJFL2位のホンダFCと対戦することになる。「幸いにもJリーグがいない山。なんとか4回戦まで勝ちあがってJリーグと対戦して自分たちの力を試したい」。昨年は1回戦でFC琉球の前に涙を飲んだが、今年は本大会で旋風を巻き起こして欲しいものだ。


(福岡大学) (九州産業大学)
GK: 西田信孝 GK: 庄崎歩
DF: 千原翼 登尾顕徳 山口和樹 樋口大輝 DF: 柳田薫(81分/石田健一) 酒見真聡 出田淳二(65分/塚崎高政) 清水淳一郎
MF: 西野涼(88分/田畑将吾) 衛藤裕 片原潤 山内祐一(69分/角廣介) MF: 森山寛光 宇陽裕司 山田浩久 上野晃典
FW: 冨成慎司(46分/森山大地) 高橋大輔 FW: 永峯貴彦 今村晃輔(65分/原田敬太)
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