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 福岡通信 05/09/17 (土) <前へ次へindexへ>

 あらゆる思いを力に変えて
 

 取材・文/中倉一志
 サッカーとは11人でプレーするもの。どんなにスーパーな選手であっても、1人で試合を作ることなどは出来ない。それはキングの称号を持つ男とて同じこと。横浜FCの選手個々のレベルアップがなければ、カズの力を十分に引き出すことは難しい。その決定力を生かすために、カズに前線に留まるように足達監督(横浜FC)指示しているようだが、それはカズのプレースタイルを否定することでもあり、そしてパスを供給する選手がいない現状では、カズの決定力も生かせない。

 しかし、この日、博多の森に足を運んだ観客は16280人。これは、福岡がJ2に降格してから最多となる有料入場者数。中継局のカメラは真っ先にカズの姿を追い、ミックスゾーンでもカズの取材をメインにカメラを回す福岡のTV局もあった。やはりカズはカズ。たった1人で博多の森の雰囲気をいつもと違うものに変えてしまった。そして、その雰囲気が福岡の選手の動きを硬くする。それはやむを得ないことだったかもしれない。

 横浜FCの基本フォーメーションは4−4−2。ただし、北村が右サイドから積極的に攻めあがるスタイルは、最前線はカズを中心にして両サイドに城と北村が並ぶ3トップのような体制になり、中盤は山口を中央に置いて、内田と小野智吉が逆三角形を作るようにしてバランスを整える。福岡がサイドへボールを出してビルドアップの起点を作ろうとするところへ、内田、小野が激しくプレッシャーをかけ、福岡の攻撃を封じ込めてリズムを掴んだ。

 横浜FCのスタイルに問題がなかったわけではない。中盤の底に構える山口とSBの選手が、プレスに行った選手との間合いを詰めないために、プレスを仕掛けた選手の後方に大きなスペースが出来てしまうのだ。ただ、硬さの取れない福岡は、このスペースが使えなかった。13分には城のクロス気味のシュートが右ポストをかすめ、17分には小野の、そして32分には城の決定的なシュートが福岡ゴールを襲う。GK水谷のスーパーセーブで事なきを得たが、前半は横浜FCが主導権を握ったまま45分が過ぎた。



 後半に入ってもリズムを掴めない福岡。そして横浜FCも2トップにボールが入れられずにチャンスを作れない時間が続く。そして55分、ひとつのプレーが試合の流れを大きく福岡へと傾けた。対峙するトゥイードを個人技でかわしてペナルティエリア内へ侵入する宮崎と、そこへ走り込んできた古賀と、追走するトゥイードがもつれるようにして倒れた。次の瞬間、審判はペナルティスポットを差し、トゥイードに2回目の警告が発せられた。

 このPKをグラウシオが落ち着いて決めてからは一方的な福岡のペース。攻めに出なければならない横浜FCだったが、ただ引いて守っているだけで反撃の姿勢を見せられないまま。結局、後半は1本のシュートも打つことが出来なかった。そして福岡は78分に山形が試合を決める2点目をゲット。87分にはCKに千代反田が頭で合わせて駄目押しの3点目を奪った。いつもと違う雰囲気で始まった試合も、終わってみれば、福岡が地力の差を見せ付けた形になった。

 3−0の快勝も、福岡にとっては文句なしの勝利というわけには行かなかった。ここのところ、前半は相手にペースをつかまれる展開が続いているが、事情ともかく、この試合でも後手に回り、1点を奪った後も、追加点を狙って攻めるのか、それともボールを回して時間を使うのかハッキリしない時間帯があった。トゥイードの退場をきっかけに流れを掴んだが、この判定がなかったら試合は拮抗した展開になっていたことは想像に難くない。

 それでも、勝ち点3を積み重ねたのは何よりの収穫。この時期で最も大事なことは勝ち点3を獲得すること。そういう意味では最高の結果と言える。それほどいい内容に見えなくても、結果的に勝ち点を積み重ねられるのは、過去2年間で築き上げたベースがあるから。困ったときに戻る場所を持っているチームは、調子の波がありながらも大崩れすることがない。他を圧倒する試合は少なくなったが、その代わり、ジワジワと3位以下を引き離し始めている。



 さて、2位との勝ち点差を7まで広げた福岡は、第32節には勝ち点8差の札幌と、第33節には勝ち点7差の甲府と対戦。第3クール最大の山場を迎える。「どことやっても厳しい試合になる。我々にとって大切な試合は山場だとか、天王山とか呼ばれる試合ではなく、目の前の1戦こそが大切。1試合を戦って、それから次の1試合がある」。松田監督がいつも言う言葉だが、この2連戦は第4クールの戦い方に大きな影響を与える試合であることは間違いない。

 次節で対戦する札幌とは、ここまで1分1敗。過去2戦ともチームのベースであるディシプリンを欠き、福岡らしさを見せられないままに敗れた。アウェイの厚別陸上競技場は真っ赤に染まることが予想され、今回も厳しい戦いになることは間違いない。ポイントは両サイドの攻防。大きなサイドチェンジからクロスボールを中山めがけて放り込むのが札幌のパターンだけに、ここでの戦いで主導権を握りたい。

 第33節に対戦する甲府には2戦2敗と、こちらもまだ勝ちがない。甲府はバレーが怪我で戦線を離脱しているものの、テクニックのある藤田を起点として両サイドから仕掛ける攻撃は破壊力十分。福岡にとって警戒しなければならない相手であることに変わりはない。ただ、京都に次ぐ得点力を持ちながら、失点が多いのが甲府のサッカー。相手の攻撃を押さえ込めば必ずチャンスはある。ポイントは中盤の守備。ホベルト、山形の連携が鍵を握ることになるだろう。

 いずれにせよ、ここ数試合続く、立ち上がりに後手を踏むサッカーでは厳しい状況に追い込まれる。大切なことは立ち上がりからしっかりと仕掛けること。我慢比べの試合になろうが、やむを得ず守備に回らなくてはいけなくなろうが、とにかくイニシアティブを取って自分たちのサッカーを展開することが重要だ。「とにかく失点しないこと。90分あれば点は必ず取れる」(松田監督)。自分たちのサッカーを実践すれば結果はついてくるはずだ。



 ハラハラ、イライラ、ジリジリしながら過ごしてきた2005年シーズンも、いつの間にか残すところは13試合。いよいよ腹をくくって臨む時期がやって来た。これからは1試合消化するごとに様々なプレッシャーに襲われ、普段のプレーをすることさえ難しい状況に追い込まれることもある。昇格争いから脱落したチームはなりふりかまわず上位にぶつかってくるだろうし、チームの特徴を知り尽くしたもの同士の戦いは、今まで以上に差をつけるのが難しくなるだろう。

 そんな時に忘れてはならないのは、自分たちがこれまで積み重ねてきたサッカーの原点だ。いまさら急に技術が上がるわけではない。いまさら新しい戦術を身につけられるわけでもない。メリットもデメリットも含めて、自分たちのサッカーを貫き通すこと。それをやり通したチームにだけ結果がついてくる。そして一喜一憂しないこと。第2クールの山場をどういう形で終えても、必ずもう一度山場がやってくる。試合の結果に安心もせず、落胆もせず、常に目の前の1試合にだけ集中したい。

 最後はひとつになれるかどうかだ。いつも言うことだが、サッカーとは選手の力だけで勝負が決まるものではない。現場スタッフ、選手、球団職員、フロント、サポーターとファン、そしてメディア等々の力の総和が福岡というチームの力。それぞれが、それぞれの立場で強く願い、行動に移すこと、それが最後の決め手になる。いわば、福岡市民の意思が試されているのだ。J1とはそういうところ。簡単には昇格の権利は手に入らない。

 さて、ここからが力の見せ所。胸に渦巻く色々な思いを力に変えて、胸に抱いた気持ちをありったけの声援に変えてスタジアムで爆発させたい。J1のゴールを、みんなの手で手繰り寄せるために。
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