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 福岡通信 05/10/28 (金) <前へ次へindexへ>

 ひとつになった博多の森
 

 取材・文/中倉一志
 満員の観衆で埋められたスタンドにネイビーとシルバーのストライプが鮮やかに浮き上がる。サポーターとクラブが協力して行った、KIRIN AVISPA COLOR SHEET PROJECT with 『12(supporter)』。朝早くからスタジアムに駆けつけたサポーターが、スタンドの座席ひとつ、ひとつに置いた2色のカラーシートが、フェアプレイフラッグの入場と同時に頭上高く掲げられた。それは、福岡にかかわる全ての人がひとつになった瞬間だった。

 この日の観衆は20201人。福岡にとってはJリーグ・レギュラーシーズン史上4回目となる2万人超えだ。だが、過去の3回はいずれもJ1時代のもの。相手チームにスタープレーヤーがいたことも大観衆を集めた要因のひとつだった。しかし、この日は九州ダービーのために、福岡のために2万人を超える観衆が集まった。フロント、メディア、地元企業、そしてサポーターとサッカー関係者。全ての力を結集して集めた2万人だった。

 様々な問題にぶつかり、喜びと悲しみを繰り返してきた4年間。それでもクラブとサポーターは前を向いて歩いてきた。それは遅々とした歩みだったかもしれない。時には、前に進んでいないように思えたときもあった。いまも幾つかの課題を抱えている。しかしこの日、福岡にかかわる全ての人は博多の森にJ1昇格に値する環境を作り出した。あとは、この勢いを力に変えて最後の直線を走りぬくだけ。いよいよ勝負のときがやって来た。

「こんなに入ってくれるとは思っていなかった。この雰囲気に選手みんながモチベーションを高めることが出来た」。ヒーローインタビューを受けた千代反田は、そう口を開いた。「(2万人も集まってくれたのは)福岡サポーターならではの記録。この試合に限らず、ずっと支えてきてくれたサポーターには感謝したいし、ピッチの上では私たちがサポーターのためにできるだけいい試合を見せたい」とグラウシオも語る。そして福岡は鳥栖を一蹴。J1自動昇格権を得る2位を確定させるまで、あと勝ち点11と迫った。



 立ち上がりから互いにアグレッシブな姿勢を見せる試合は一進一退の展開。過去3回の対戦がそうだったように、今年最後の九州ダービーも厳しい試合になる予感が漂い、スタジアムを緊張感が包む。しかし9分、その緊張感を千代反田が拭い去る。グラウシオが倒されて得たFKのチャンスに古賀の左足から、きれいなカーブを描いたボールがゴール前へ。そこへ走りこんできたのが千代反田。井手口を振り切って頭で合わせてゴールネットを揺らした。福岡の通算500ゴール目となるメモリアルゴールだった。

 福岡の2点目は18分。今度は福岡らしい細かなパス回しから生まれた。平島からの楔のボールを受けた宮崎がグラウシオへ。そして、左サイドのスペースへ上がってきた山形辰徳にグラウシオからボールがわたる。山形辰徳は、いったん古賀へ預け、戻ってきたボールを再び古賀へ。一瞬のスピードで裏へ抜け出す古賀。その動きに合わせてニアサイドへ走りこむ田中。ファーサイドへ逃げるグラウシオ。そしてフリーになったグラウシオにピンポイントのクロスがわたる。後は頭で合わせるだけでよかった。

 さらにその2分後、グラウシオの右足がゴールマウスを捉えた。ペナルティエリアの前でルーズボールを拾った高橋のトラップが流れる。このチャンスをグラウシオは見逃さない。素早くダッシュしてボールを奪うと、そのままペナルティエリア内へ。前へ出てコースを消そうとするGKシュナイダー潤之介の動きを冷静に見極めて、ゴール左隅に流し込んだ。鳥栖から反撃の気持ちを奪う、試合を決める3点目だった。

 24分にCKから鳥栖に1点を返されたものの、試合の主導権を相手に渡さない福岡は、その後も、試合の大部分を支配して試合を進めていく。そんなイレブンに対する松田監督のハーフタイムの支持は「先に点を取れ」というもの。そして65分、その指示に応えるかのように福岡は駄目押しゴールを奪う。決めたのは再び千代反田だ。左からのCKに、1点目と同じように頭で合わせた。1点目同様、誰もマークにつき切れず。過去、福岡相手に何度も攻守を見せていたGKシュナイダー潤之介もノーチャンスだった。



 勝負を分けたのは、ミスと攻守の切り替えの早さの違いだった。サッカーではミスが失点の引き金になるものだが、この日の福岡の4得点は全てに鳥栖のミスが絡んでいた。1点目は一柳の不用意なファールで得たFKから。2点目は鳥栖の中途半端なクリアを拾った平島が起点になったもの。そして3得点目は見ての通り。4得点目も、得点が生まれた直前のプレーでシュナイダー潤之介が不用意にパンチングした所から始まっている。

「勝つためには外せない部分がある。それをきちんとできたことが得点につながった」(松田監督)。鳥栖がミスを犯した瞬間に、まるでギアチェンジでもしたかのように福岡はスピードを上げ、ボールを奪いに行く者、スペースに飛び出す者、後方から押し上げる者、それぞれが連動して一気にゴールへ向かった。それが、鳥栖に守備を組織する時間を与えないことにつながった。

 しかし、快勝にも選手たちの表情からは必要以上に喜ぶ姿は見られない。そして、「一つの大きな山である九州ダービーはクリアしたが、まだ7試合ある。とにかく次の試合のことだけを考えて勝点3をとるということだけを続けたい」と、松田監督はいつもの言葉を繰り返す。昨年、37節終了時点で山形に勝ち点8の差をつけられながら、最終的には勝ち点5の差をつけて3位の座を確保したのは福岡。サッカーは最後まで何があるのか分からないのはチーム全員が知っている。

 この日のスタジアムの一体感も、選手たちのパフォーマンスも、終わってしまえば過去のこと。確かに素晴らしい勝利だったが、数字の上では勝ち点3を得たに過ぎない。それがサッカー。それがリーグ戦だ。大切なことは、この雰囲気、このパフォーマンスを次の試合でも発揮すること。そして、目標を達成するその日まで続けていくこと。クラブも、チームも、サポーターも、まだ誰も何も手にしてはいない。



 土曜日からはアウェイ2連戦。その間には天皇杯4回戦を戦うというハードスケジュールが待っている。先発の11人だけではなく、ベンチ入りメンバー、そしてサテライトで準備を重ねている選手たちも含めた総力戦で戦うことが求められる。厳しい戦いになるのはいつもと同じ。結果を気にするのではなく、自分たちのサッカーをやり続けることだけに集中したい。それが、最終的には自分たちの望む結果を手に入れる最良の方法だからだ。

 まずは29日の京都戦に全力でぶつかること。もちろん、選手たちもその心構えは出来ている。木曜日に行われた紅白戦では、大きな声がピッチの上に響き渡り、実戦さながらのプレーが随所に見られた。そして、雁の巣レクリェーションセンターには、適度な緊張感と、程よくリラックスした雰囲気が流れる。「結果論かもしれないが、ここへ来て、昨年、入れ替え戦を戦った経験が財産になっている気がする」(松田監督)。昨年終盤と同じ空気がチームの中に流れている。

 京都との今シーズンの対戦成績は1勝1分1敗。次節も際どい勝負になるだろう。組織で守る福岡と、人数をかけて守る京都という違いはあるが、お互いに相手の守備ブロックを簡単に崩すことは難しい。そんな中で、ともに鍵を握るのはカウンター。鳥栖戦で見せた切り替えの早い攻撃が仕掛けられるかが福岡にとってはポイントになる。注意すべきは京都のロングボール。攻めに出ているときの守備の準備を怠りなく整えておきたい。そして、自分たちの志向するサッカーを90分間やり続けること。それが出来れば、前回の戦い同様、福岡にとってはいい結果が得られるはずだ。

 4年の時を過ごして、福岡は最後の直線まで歩みを進めてきた。ふとした瞬間に、様々な出来事が頭に浮かぶ。悔しさに泣いた万博競技場。勝てないチームを見るたびに思い足取りで引き上げた博多の森。J1の厳しさを教えられた柏サッカー場。しかし、まだ何も終わっていない。博多の森で作った一体感は、ある意味では最後の直線を走りきるためのスタート。ここから、サッカーの神様が福岡に課した最終テストが始まる。もう一度、初心に戻って戦いたい。その先にみんなで目指してきたゴールがある。
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