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 札幌からのメール 04/05/07 (金) <前へ次へindexへ>

 みっともないよねって笑うこと


 文/笹田啓子
 連休最後の好天の一日はチームの応援に費やす。が、集まった人々の思い空しく札幌また敗戦。引き分け挟んで5連敗、ゴール裏に頭を垂れて挨拶に来る選手達に、暖かい拍手などかけてやれようもなく、かといって暴言を浴びせるほどハラの立つ試合でもなく、ただなんとなく思いのやり場に困って途方に暮れて立ち尽くす。

 選手の顔を見るのもしのびないや、と思って余所見をしたら「岡田くん、泣いてたよー」と仲間。まだ泣き出すほど切羽詰った時期でもなかろうが、と苦笑いする私。とはいえ川崎・ジュニーニョに軽ぅくいなされること数度、大人と子供ぐらいの差があったその日のマッチアップ。そりゃ悔しかろうな。でもその弱さや脆さや力の無さは、残念ながら庇いようのない現実なんだ。

 なんたって現在最下位。北海道弁で言うなら「げっぱ」。J1・J2全部あわせて28チームのもっとも下。私が札幌のことをよく知らない他所のチームのサポーターだったなら、「札幌も随分堕ちちゃったよねー」ぐらいは軽く冷笑まじりに言ってるだろうなって我ながら予想がつく。いまの札幌のこと、結果だけしか知ることのない大多数の人達は、みっともないよねってたぶん笑う。



 ゴールデンウィーク中の試合はどれもなんだか似たような試合ばかりだった。
 アウェイ京都戦もホーム連戦だった福岡戦も川崎戦も、前半の15分以内に全部先制点を挙げられている。そんで後手後手になって、ハーフタイムに監督の喝が(たぶん)入ってそこから持ち直して、でも最終的に力及ばず敗戦、というコース。それでも熱心なサポの多くはそんなお決まりの、しかもあまり嬉しくないコースでも目を凝らして見ているので、結果の数字だけ見ればいずれも実に似たり寄ったりの内容の中に、「今日は点を取られてから持ち直すまで早かった」とか「前半のうちに立て直せた」とか「いい時間帯がだいぶ多くなった」とか「あの選手が少し良くなってきた」とか、小学生の夏休みのアサガオ観察日記よろしく、日々の僅かな変化をみとめ脳内ノートに1ミリ、1ミリ記録していく。

 札幌のサポーターは自分たちのチームの状態が今どのようであるか、様々な局面から知っている。予想よりもはるかに出来の良かった開幕戦、勢いのまま3戦目にして今季初勝利、だけどそのまま進んでいくには要の選手の負傷離脱があまりに大きすぎた。開幕戦でチームを鼓舞したキャプテン佐藤尽の離脱に加え、左サイドから中盤寄りを受け持ちボールの納まりどころ兼パスの出所、加えてプレースキックの名手・三原が靭帯断裂で全治9ヶ月の大怪我で今季絶望。チームの旗色が一気に悪くなったのはここからだった。今年から育成を始めたばかりのチームが、要の選手のふたりも失って平気で試合をこなせるほど選手を促成栽培出来るわけもなく、実際「引き分け挟んで5連敗」は三原の負傷離脱のあとから始まり今に至る。

 もっとも、多分世間の皆様が思われているであろうほど、私自身は今の状況に卑屈になどなっておらず。苦しい状態のチームや選手が、その状況下で一進一退するさまを見届けるのは、それはそれで楽しみがあるのだ。経験の浅い若い選手が90分フルに戦えるようになること、表情が日々引き締まってくること、1対1で勝つ場面が少しづつ増えてくること、パスが通ることが増えてくることが日々見届けられるのはなかなかに幸福なことである。ただしそれと「勝つこと」が今は必ずしもセットメニューにならず、むしろ「負けたけどアレはよかったよね」とかいう「よかったさがし」キャンペーンの一環みたいなもんだったりするのが、ちょっとばかりせつなかったりはするけれど。



 だけどそれでも目先の勝ち欲しさのためだけの補強なんて絶対にしてほしくないし、しないであろう(正確には「できない」なのだが)チームの方針を支持もする。どんなに苦しくても今このチームにいる選手達が育ってくるのを、未だ若い選手達が自分たちの力を自分達自身で手に入れる日が来るのを、辛抱強く見続ける覚悟はシーズン前と今とで変わっていない。スタジアムに集まるサポーター達は、皆多かれ少なかれそんな覚悟はちゃんと持っている、と思う。ただその想いの表現の仕方に、みんながみんな「暖かい励ましの言葉」を選んでいるわけじゃない。時には暴言もあるし、無言の抗議だってあるし、試合が終わる前に足早に立ち去る人だっている。だけど、結果だけしか見ることがなく、なにも知らず、チームが負けることになんの痛みも感じない人達が簡単に出来ることだけは、チームをわが身の一部のように感じているサポーターには、出来ない。

 みっともないよねと、笑うこと。
 あぁ苦しいなぁって思っても、チームのことを笑う側に回るくらいなら、笑われるほうに一緒にいる方がいい。
 温かいの冷たいの、いろんなヤツいっぱいいるけど、基本的には一緒に笑われる方に回る人だらけのはずのホームスタジアム。そんな中でサッカーやってて、何を怖気づくことがあろう。恐れるべきは、怒られることでも失敗することでもない。笑われる側に堕ちることじゃないか。戦う姿勢を見せる選手をホームのサポーターは結果だけ見て笑ったりなんかしない。そのことを信じて、一歩、いやほんの10センチでいいんだ、昨日より前へ!
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