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 札幌からのメール 05/10/18 (火) <前へ次へindexへ>

 強くなる途中


 文/笹田啓子
 先日、サッカー関係ではない友人のグループと2年ぶりぐらいに会って、ジンギスカンなど囲みつつ世間話に花を咲かせた。その中に、私は初めて会う人で、サッカーも野球もよく知らないという方がおられた。だからといって毛嫌いしているわけでもなく、その人に素朴に質問された。

 「コンサドーレって、いま弱いの?」

 うっ、と答えに詰まる私。
 昨年の今頃ならば、堂々と、いや堂々と言っていい言葉ではないが「弱いです!」と断言できたけれど、果たして今はどうだろう。少なくとも強くはない。お世辞にも強くはない。強いチームが天皇杯初戦で早々と敗退なんてするもんか。



 10月らしい高く澄んだ青空を背景に、雲がぐんぐんと動いていく。雨の予報がなぜか晴れて、太陽が顔を出せば季節外れの熱を放つ。それでも緑のピッチの上には雪虫が風に漂う。冬がそう遠くない札幌。改修工事を終えた宮の沢での練習は、ほぼ半年ぶり。

 工事に入る前の春先は、まだ前年の成績の記憶が自分達に色濃く残されたままで、今年に期待はもちろんしていたけれど、ここに戻ってくる頃には果たしてどんなことになっているのやら。「こうなりたい」とは思っていても「こうなっているだろう」と思える要素はそれほど強くなかったし。
 そして実際のこの秋。
 得点力が少なくて得失点差がマイナスだったりはしているものの、J1との入れ替え戦を戦える3位争いグループのしんがりにつけている。去年の今頃から見たら遙かに充実の秋。宮の沢で見る選手の姿も、去年の同じ時期に見たより一皮ぶん成長しているようにも思えたり。

 秋空の下、練習を終えたピッチに散らばる芝メンテナンスのサポーターボランティア。練習場併設のレストランから見下ろすその風景は比類なき美しさ。ああ気持ちがいい。苦しみながらもたどりつけている、昇格争いの秋。緊張感と不安感と期待感が胸の中に程よく共存する感じ。その日心がそんなふうに弾んだのは、今の立場とか今見た美しき練習風景だけでもなく、札幌U-18が高円宮杯の準決勝に進んでいたこともあって。もし今日勝てば、北海道勢としては初の決勝進出。決勝は地上波でのテレビ中継もある。楽しみだねなんて、一緒に練習見学に行った友人とお茶などしながら語らっているうちに、西の空に真っ黒な雨雲。それは一気に練習場の空を覆い、あっというまに風雨強く打ちつける嵐になった。それはまるで翌日の試合の結果を暗示するようでも、今思えばあった訳で。



 10月9日、紅葉の始まった室蘭、この日も爽やかな青い空。
 行われるは天皇杯3回戦、初戦の相手は佐川急便東京SC。その試合は、爽やかな天気とは全く裏腹の、今年これまでの頑張りを全部帳消しにしてしまいたくなるような、実にどうしようもない内容だった。

 出足から果敢にボール奪取に努めてくる佐川の選手達に対して、手も足も出ない札幌。いや正確に言えば「手も足も出そうとしないようにしか見えない」。目の前の景色は佐川の選手達を除けばストップモーションというか、本気で止まっているというか、大昔のネット中継をほうふつさせる紙芝居モーション、しか出来ない札幌の選手達。格下相手、という意識で「だからこちらが圧倒する試合」を期待してきている一部の観客からは、お約束のように野次が増えてくる。もちろんその期待感は、天皇杯というカップ戦、上のリーグのチームと戦える大事な機会と捉える相手チームがいる、という視点を欠く類のものでもあるのだけれど、それを差し引いても、この札幌の戦いぶりはいただけない。

 メインスタンドから見ていた友人からのメールは「ヤンツーさんがペットボトル叩きつけて引っ込んでったよー」。
 しかし後半、監督をそれだけ怒らせても尚、札幌の選手達が目覚めることはついになかった。最後まで、こころもからだも、ピッチの上を走らせることがなかった。押し込まれる場面は一向に減らない。押し込む場面は一向に増えない。終いにファウルで与えた(しかも2度も)PKをきっちり決められ終わってみれば0-2の完敗も完敗。

 心此処に在らず って感じだったよねと、一緒に行った仲間とブツブツ語らいながら帰ってきた。
 3位以内のかかった終盤戦のリーグ戦と天皇杯、同じクオリティで戦っていける実力は、このチームにはまだないだろうなぁと漠然と考えてはいたけれど、「勝つんだ」という気持ちを身体の芯にきちんと持たずに戦えば、たったこの程度の試合しか出来ないチームでしかない、そしてそれはおよそプロと呼ぶには相応しくない程度でしかないとまで思い知らされることになろうとは。



 だから冗談でもこのチームが強いなどとは言えなかった。でも、じゃあ、弱いのか。それもなにか、違う気がした。だって去年より強くなってはいるもの。当社比、だけど。

 天皇杯敗退後最初のリーグ戦、15日の湘南アウェイは、スコアレスドローに終わった。3位グループの中で最後尾につけていることは変わらない。かといって3位との勝ち点差も変わらない。リーグ戦終盤に来て、どこのチームもそうであるように怪我人と出場停止で選手を欠く試合が続く。この湘南戦でもDF曽田が4枚目の警告をもらい、次節出場停止になった。レギュラーポジションを獲得して以降、CBでは概ね安定したパフォーマンスで活躍していた曽田の出場停止はチームには確かに痛手で、しかも選手数が絶対的に不足している現状。

 人がいないな。でもまあ、なんとかなるか。
 そう思ったとき、なんだかんだ言いながら、このチームが今年確実に成長を遂げてきていることを感じさせられる。

 以前。自分達が「強い」と堂々と言えた時代があった。J2を(当時)ぶっちぎりの成績で優勝した代があった。連勝記録を作った代があった。しかしこの時代のチームは、固定された主力が怪我や出場停止で欠けたとき、そのポジションは見事なまでに穴が空いた。頼りになる選手が抜ければ、その分だけパフォーマンスの確実に落ちるチームだった。補強の当たり外れが、そのままチームの成績を左右した。補強が外れた年このチームは、下に落ちるしかなかった。

 今のチームは当時のチームに比べたら、レギュラー選手の総合レベルではまだ低いと思う。けれどチーム全体の総合力という観点から比べたら、たぶん今のほうが上だ。1年半かけて、全体のレベルを少しづつ少しづつ上げていった。だから時間もかかったし、トップの成績にすぐに反映されることもなかった。しかし今自分達の足元を見れば、揺るぎにくい、広くしっかりとした土台が出来つつあることを確認できる。しかし先ほど書いた天皇杯での出来のように、集中の低い状態でやれば簡単に足元をすくわれる程度の緩さ、脆さも未だ併せ持ってはいるけれど、決して簡単ではないはずの「札幌のサッカー」への要求に対して、誰でもそれをある程度理解し己のパフォーマンスの中でそれを実現することが、出来るようになっている。そして下から着々と突き上げてくるものもある。「ユースの成長」がそれである。

 高円宮杯U-18の決勝では、ヴェルディユースに1−4で敗れ、北海道勢として初の全国制覇を果たすことは出来なかった札幌ユースではあったけれど、今の札幌U-18の主力はU-15時代にも全国準優勝という結果を残している。当時の世代がそのまま着実に上がってきている。
 札幌のユース世代の試合を見に行くようになって4シーズン目になるけれど、以前は関東近郊のJクラブのユースチームと比べたら、見るからに体格からして見劣りすることがほとんどで、実際に「基本的な底力が違うよね」という話を聞くことも多かった。しかしそれももう、過去の話になりつつある。

 16日のクラブユース選手権、札幌対柏。3年生は出場せず、1・2年生にU-15の選手を加えた陣容で戦った札幌ユースは、0−2で敗れてしまったけれど、後半から出場したU-15の熊澤君が堂々としたプレーぶりを見せているのを見れば、やはりユースレベルの成長を感じないではいられないし、彼等の眼差しが全国を向いていることにもまた、頼もしさを感じる。上を目指す子供達が下から上がってくる。高円宮杯で活躍した主将の藤田は、チャンスがあれば残りのリーグ戦で出場する機会もありそうで、そうなれば札幌としては初の、ユース選手のトップでのリーグ戦出場となる。トップだけではなくユースも含めて、すべての力を、総合力と言われるものを上げていく、今はその途中。



 うーん、と考えて咄嗟に頭に浮かんだ言葉をそのまま言った。
 「えー…『強くなる途中』!」
 言ってから、ちょっと私いいこと言うよねと、コンサに仕事で関わっている別の友達に思わず笑ってしまった。

 強いでなく、弱いでなく。強くなる途中。そうだ、私達はそこにいるのだ。
 ただ勝つことだけを求めて、それがうまくいって、しかしそれが崩壊するのを見た。簡単に作れば簡単に壊れることを知った。ほんとうに強いものになりたいと、どんなに時間がかかっても、それがいいと思った。今はその道の途中。点が取れない、勝ちきれない。でも半年前から自分達は、何ら後退はしていない。遅々としながらしかし少しづつ、山積みされていた問題点を埋めている。選手達はしかし、そうのんびりとはしていられない。この、強くなる道の途中に来年も彼等が皆続いていられる保証は全くない。彼等自身の手で掴み取らねばならない。

 2005年、残り8試合になるか、10試合になるか。残り僅かの季節の中で、誰が何を掴むか、私達がどこまで行けるか。道の途中に立ち向かう。
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