スペインフットボールのバブル　Part３ 　文／中島泰介（アリカンテ在住）　写真／ふかえまさひろ

　前回のコラムを書いてから、TV放映権に関してひと騒動あった。７月３日のコラムで説明した、規模の小さな１部８クラブと２部22クラブのグループG-30が、Sogecable社の出している映像権のオファー8,400万ユーロには満足できないとして、8月22日に、映像権の合意に達しなかった場合はリーグを9月21日までボイコットすることを発表した。ちなみにビッグクラブのグループG-12は、G-30のボイコットがあったとしてもリーグは開催すると言っていた。

　LFP（プロリーグ機構）内で利害関係の違いに分かれた２グループ、会合も別々に行いこの様なそれぞれの意向を発表しており、LFP会長も、開幕一週間前になってのG-30のボイコットは頭の痛かったことだろう。結局24日にSogecable社とLFPが緊急会議を持ち、３シーズン2億6,400万ユーロ（シーズンごとに8,400万、8,800万、9,200万が支払われる）で合意に達し、リーグはスケジュール通りに開催される。

---

　もし合意に達していなかったら色々な問題が発生していただろう。もしボイコットが行われたら、１部の第１節で影響を受けないのはエスパニョールvs.レアル・ソシエダ、アスレティックvs.バルサ、セビージャvs.アトレティコの３試合のみ。この３試合のみ開催するのか分からないし、他のカードのチケット販売やテレビ放映、そしてキニエラ（サッカーくじ）の開始にも影響がでる。

　代表チームとっても心配な問題だ。来年は欧州選手権の開催年。リーグ開始、そして終了が遅れれば、それだけ代表チームの欧州選手権への準備期間がなくなってしまう（いつも予選楽勝のスペイン。今現在予選落ちの可能性も十分にあるが）。予選突破の山場である9月10日のウクライナ戦、多くの選手は夏休みから公式戦を戦わずにプレーすることになり、コンディションの面で不安も生じていた。そして開幕を楽しみにしているファンもやきもきしていたことだろう。

　8月23日付けのAS紙によると、過去に４度（1979、1982、1984、1988）、リガ・エスパニョーラではボイコットが発生している。それらは全てシーズン途中で選手協会が、選手に対する扱いや規則の改善、クラブの選手に対する未払いの給料の要求などによるストライキ。これまでと今回の大きな違いは、今回はクラブによる、商業的な理由によるリーグ延期であり、ビジネスが現代のフットボールに及ぼす影響の大きさそして多くのクラブの経営状態が良くないことが、この問題によって表されている。

---

　同日付のAS紙には別に２つ、スペインのフットボールクラブの財政状況の悪さを示す記事があった。ひとつはFCバルセロナ。ジョアン・ガスパルト、エンリック・レイナの２人が会長職の時期に膨張し、現在バルサが持つ赤字は1億6,900万ユーロ。これを返済することはラポルタ現会長の大きなミッションのひとつだろう。先日にあったソシオの会合時、ソシオの投票により、圧倒的賛成多数で、バルサトップチームのユニフォームに広告を入れることが決まった。

　クラブ創立から100年以上経ち、常にソシオに支えられてきたバルサのユニフォームにスポンサーの広告が入れられるのは歴史的事件。カタルーニャの名門クラブも時代の波には逆らえなかった。ユニフォームに広告が入ってないことはバルサファンの誇りかもしれない。しかし、永遠のライバル、レアル・マドリードに財政的規模、成績で水をあけられている今、より多くの資金源が必要だろうし、それが、ソシオが賛成した大きな理由ではないかと思う。適切なスポンサーが見つかればすぐにユニフォームに広告を入れることになる。

　もうひとつはレアル・ベティス。その記事は、同クラブ所属のルーマニア人フィリペスクが言った、「ロペラ（ベティス会長）はチャウシェスクのようだ」というのがタイトルだった。フィリペスクによると、彼は契約破棄についての話し合いのため呼ばれ、話し合いに赴いたところ、ロッカールームでチームに良くない影響を及ぼした（クラブに対する不満のことを言っているのだろう）との理由で、雇用と給料支払いの一時停止を言い渡された。クラブがフィリペスクに対して１年以上も給料を滞納しているのが、この屈辱的宣告の理由だとフィリペスクは言っている。更に「私は自分がピッチでした仕事分の給料を支払って欲しいだけ。これは正しいことではないか。」と公に不満を現している。

　とにかく今シーズンのリーグは開幕するが、クラブの財政問題が急に好転することはないだろうし、毎年開幕前に財政的、商業的問題が発生しそうな不安がある・・・