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 スペインからの風 03/11/17 (月) <前へ次へindexへ>

 ポルトガル行きの切符をめぐる最後の戦い。スペイン先勝。


 文/中島泰介(アリカンテ在住)
UEFAユーロ2004 プレーオフ第1戦 スペイン代表vs.ノルウェー代表
11月15日(土)22:00キックオフ メスタージャ・スタジアム(バレンシア) 観衆:53,000人
試合結果/スペイン代表2−1ノルウェー代表(前1−1、後1−0)
得点経過/[ノルウェー]イヴェルセン(14分)、[スペイン]ラウル(21分)、オウンゴール(85分)


 この試合のチケットの価格が6〜40ユーロ(およそ760〜5,050円)。同じメスタージャで行われたバレンシアCF−レアル・マドリードCFの最も安いチケットが42ユーロだったのだから破格の安さだ。代表がブランド化している日本と違い、スペイン人はリーグの試合と比べると代表の試合には関心が薄いということもあるのだろう。しかし、ユーロ予選突破がかかったこのプレーオフでは多くのファンの熱いサポートが必要だということもありこの価格設定、そして他の地域に比べて代表への熱いサポートが見込めるバレンシアをサッカー協会は決戦の地として選んだのだと思う。

 私の周りにはこのプレーオフを楽観視している人が多い。確かにサッカーの質もレベルもエンターテイメント性でもノルウェーを圧倒していると思う。おまけにスールシャール、カレウというノルウェーのスター選手が欠場。スペインの選手の口からも、勿論相手を馬鹿にしているわけはないし期待も込めてであろうが、初戦は3−0、5−0といったスコアが聞かれる。ノルウェーのファンすらもスペイン勝利と言う人が多数だ。

 しかしノルウェーは不気味だ。大男が体を張りスペインの攻撃を防ぎ、カウンターでロングボールを1本ゴール前に、これがまた大男に対して放り込む。これを90分間続ければ1度や2度はゴールに結び付けられるかもしれない。こんな不安がどうしても頭をよぎる。このような相手のチャンスを与えないためには、できるだけ長い時間スペインはボールを保持していなければならない。第2戦は極寒の地オスロ。スペインの選手のコンディションに影響を与えうる気候だ。安全圏として、選手が言っていた3−0というスコアで初戦を勝っておきたいことは十分うなずける。



 スペイン代表のスターターの中で今回最も注目を浴びているのが左サイドのレジェス。バレンシアCFのビセンテと甲乙つけがたいが、初代表となるこのセビージャCFのプレーヤーには相手ディフェンスをかく乱してくれることを多くのファンが望んでいる。そしてトップの"エル・ニーニョ"フェルナンド・トーレス。前回のウクライナ戦でPKを外して以来、リーグでも不調に陥ったがそれも回復し、現在得点ランキング2位につけている。代表選出に値する。

 プレーオフのことを、スペインでは"レペスカ"と呼ばれている。"再試験"という意味だが、"ペスカ"は魚釣の意味もある。試合当日の全国紙エル・パイス紙に、監督のイニャーキ・サエスがノルウェーの国旗の付いたサーモンを釣り上げた合成写真を使った、今日の試合のラジオ放送の広告が載っていた。さてスペイン代表はこの広告のようにノルウェーを釣り上げることができるのか。



 キックオフの1時間程前に大降りだった雨は、試合開始時には小降りとなった。最初のチャンスはスペイン。10分にフェルナンド・トーレスがノルウェーディフェンス2人の間を抜けGKと1対1の決定的場面を創り出したが、前に詰めてきたGKを意識してしまったためかこれを外してしまう。12分にはDFにはじかれたラウルのシュートのこぼれ球をバラハがミドルシュート。しかしこれは上にはずれる。

 滑り出しは悪くなかったが、14分、スペインディフェンスのミスでアウェーのノルウェーに大きな先制点を許してしまう。スペインゴール前でエルゲラとフローが競ったボールのこぼれ球に対し、マルチェナが反応しようとしたが足を滑らせてしまい、イヴェルセンにフリーでシュートを打たせてしまった。これにはカシージャスも成す術がなかった。

 しかしスペインも反撃。21分、右サイド突破を試みたレジェスが受けたファウルによって得たフリーキックに、スペイン代表のシンボル、ラウルが頭で合わせて同点。メスタージャに集まったファンの声援が俄然大きくなる。しかしまたスペインディフェンスが不安定さを見せる。28分にDFのミスによりフローにフリーでシュートを打たせ、36分にはまたマルチェナが転んでしまい、フローがシュート。カシージャスのセーブによりコーナーキックに逃れた。

 攻撃は両サイドがノルウェーディフェンスをえぐってクロスボールを上げる場面が多く見られたが、ゴールには結びつかない。バリエーションとして中央からの攻撃もほしい。バラハ、アベラルドはハードワーカーだがチャンスメイクをするクリエイティビティに欠ける。ここはやはり、最初のチャンスの後ピッチの中で迷子状態のトーレスに変え、スペイン代表で最も創造性のあるバレロンを早く投入してほしい。



 メンバー変更なく後半キックオフ。61分、ノルウェーは左サイドを突破しクロスを上げる。これをイヴェルセンがシュートに結ぶがカシージャスストップ。69分、トーレスに代わり、ついにバレロンがピッチに入る。フロー以外は全て自陣に引いているノルウェーから、スペインはゴールの扉をこじ開けることができるか。ボールポゼッションは圧倒的に上回るスペインだが、そう簡単にはノルウェーの守備を突き破ることはできない。前半元気だった両翼もいつの間にかおとなしくなっている。77分、スペイン監督、イニャーキ・サエスはレジェス、エチェベリアの両翼をホァキン、ビセンテに代える決断を下す。ここからスペインが息を吹き返し、ノルウェーに無数のシュートを浴びせる。

 80分、アルベルダがミドルシュートを放つ。これはGKの真ん中に行ってしまった。83分にはラウルが空中に浮いたボールを見事なトラップでDFを交わしGKと1対1になるが、ループはゴールの枠を逸れる。そして84分。右サイドホァキンの放ったグラウンダーのシュートに至近距離でバラハが反応。ゴールネットを揺らした。難産の末の決勝ゴールにあきらめかけていたスタジアムのファンは沸き返る。88分にはビセンテがダイビングヘッドでゴールを狙い、そのこぼれ球を拾ってホァキンが切り込みシュート。スペインのチャンスが続く。ロスタイムまで果敢に追加点を狙ったものの2−1のスコアで試合終了し、決戦の場をオスロに移すことになった。

 決して満足のいく内容、スコアではなかった。しかし土壇場で最も大切な勝利という結果を引き寄せた執念は評価できる。第2戦はわずか4日後の19日。結果を出せなかったトーレスをはずしたり、怪我から回復することが見込まれるホァキンのスタメン入りなどの変更・修正があるのではないかと思う。あと残り90分。この90分で結果を出すべくこの4日間で万全の準備をして試合に臨んでもらいたい。


(スペイン代表) (ノルウェー代表)
GK: カシージャス GK: E. ジョンセン
DF: プジョル、マルチェナ、エルゲラ、ミチェル・サルガド DF: リーセ、ルンデヴァム、H. ベルグ、バスマ
MF: バラハ、アルベルダ、レジェス(77分/ビセンテ)、エチェベリア(77分/ホァキン) MF: アンデルセン、ストランド(25分/ブラットバック)、ソリ、アンドレセン(86分/R..ベルグ)、イヴェルセン(77分/ジョンセン)
FW: ラウル、トーレス(68分/バレロン) FW: フロー
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