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 スペインからの風 04/01/30 (金) <前へ次へindexへ>

 リガ2強による凡戦。レアル・マドリード、静かに準決勝進出。


 文/中島泰介(アリカンテ在住)
 
コパ・デル・レイ 準々決勝 第2戦 バレンシアCF vs.レアル・マドリードCF
2004年1月28日(水)21:30 エスタディオ・メスタージャ(バレンシア) 観衆:45,000人
試合結果/バレンシア1−2レアル・マドリード
得点経過/[レアル・マドリード]ラウル(13分)、[バレンシア]シスコ(73分)、[レアル・マドリード]ジダン(92分)


 今週悲しいニュースが世界を駆け巡った。ポルトガル・スーペルリガのベンフィカ・リスボンでプレーするハンガリー人、ミクロシュ・フェへールが、1月25日、試合中の突然の心臓停止によりわずか24歳で帰らぬ人となった。ここに謹んで哀悼の意を表したい。

 隣国であり、ベンフィカの監督がスペイン人のカマーチョであったこともあり、彼のコメントを含めスペインメディアも大きくこの事件を扱った。フェへールの家族の受けたショックは私の想像できないほど大きなものであろうし、クラブ関係者をまだ辛い日々が続いていることだろう。カマーチョも、「テレビでこういった事件、フォエに起きた事件を見た時、なんと悲しいことだろうと思った。しかし、これが実際自分のすぐそばで起きたら、想像を絶する感情が現れる。私のフットボールの人生の中で最も強烈な出来事だ。」とコメントしている。更に27日、スウェーデンの4部リーグに所属するアマチュアチームの選手が練習中に同様の症状で亡くなったことが報じられた。連続した、健康に異常のなかったフットボーラーの突然死は、今日プレーをする選手達にはどう映ったのだろうか?他人事ではないだろう。

 フェへールへの黙祷から今日は始まるだろうと何の根拠もなく私は思っていたが、何もなかった。その事件とは全く別世界のように、今から行なわれる試合のみに皆注視し、スタジアムは熱気に包まれており、そしていつものように、レアル・マドリードの入場を特大ブーイングで向かえることからメスタージャでのイベントは始まった。



 レアル・マドリードは多くの"ガラクティコ"を欠く。ベッカムはサンティアゴ・ベルナベウでの第1戦で退場処分。R・カルロスは怪我。ジダンは怪我から回復して遠征メンバーに入ったものの、スターターからは外れている。そしてDFのパボンも負傷欠場。常に議論されるセントラル(中央のディフェンダー)2人は今日、エルゲラと、前節リガで及第点を得たカンテラ出身のアルバロ・メヒーア。そして左のR・カルロスの代わりはラウル・ブラボ。中盤の底にはグティ、ボルハが入りガラクティコの穴を埋める。バレンシアも累積警告、退場処分で、左サイドバックのカルボーニ、ディフェンシヴ・ハーフのアルベルダ、が出場できず、カルボーニの位置にはガリード、アルベルダの位置には通常ディフェンダーのマルチェナが入り、マルチェナの位置にD・ナバーロが起用された。"前半90分"で3点差をつけられたバレンシアは、中盤の底をバラハ1枚にして、トップにオリベイラ、ミスタの2人を使い、より攻撃的な布陣で臨むとの見方もあったが、通常通り中盤の底2枚。1.5列目にアイマール、そしてミスタのワントップで試合を向かえた。

 3点という大差をつけられてはいるが、今日までバレンシアのこの試合に対する意気込みは並々ならぬものがあった。それを後押しするため、いつもどおりファンも大勢スタジアムに駆けつけチームを元気付ける。しかし、この熱気もわずか13分しか続かなかった。まだボールが落ち着かなかった時間帯、グティがペナルティ・エリアの少し外にいたロナウドにスルーパス。バレンシアのアジャラがロナウドに詰め寄ったが、ロナウドはアジャラの後ろにできたスペースに素早くそしてソフトタッチでボールを送った。そこに完璧なタイミングで走りこんだラウルが難なくボールをゴールへ流し込んだ。静寂に包まれるメスタージャ。

 この時点で準決勝進出チームは1つ決まったと言ってよかった。このマドリードのアウェーゴールによって、5点を奪わなければバレンシアは敗退。あまりにも高すぎるハードルだ。ややバレンシアのペースで試合が進む。しかしアイマールが打開を図ろうとすれば厳しいプレッシャーにつぶされる。トップのミスタにあわせようと29,30分と立て続けにゴール前のミスタにクロスが入るがどうも微妙に呼吸が合わない。ロナウドとラウルの"以心伝心"でワンチャンスをものにしたレアル・マドリードとここが大きく違うところだ。

 それでも得点チャンスはバレンシアに訪れた。左からのビセンテのパスをミスタがペナルティ・エリア内で受けワンタッチでディフェンスをかわしシュート。しかし無情にもボールはポストへ。43分には右からのCKのこぼれ玉がゴール目の前にいたD・ナバーロにわたるもノーマークで打ったシュートはバーの遥か上を飛んでいった。リガでは1位で折り返しシーズン後半戦を迎えたものの、最近調子を落としコパを含めた過去3試合バレンシアはノーゴール。サンティアゴ・ベルナベウでの第1戦もレアル・マドリードを遥かに凌ぐ決定機の創り出したものの終わってみれば3−0の敗戦。この試合の前半は今のバレンシアを象徴しているようだ。



 後半、バレンシアのラファ・ベニテス監督は、機能していないアイマールが下げトップにオリベイラを投入。ミスタがやや下がり目のポジションについた。序盤この交代が機能しバレンシアがチャンスを作る。キックオフのボールをすぐバレンシアが奪い、ビセンテがゴール前までドリブル。パスを受けたオリベイラがシュートを放つがレアル・マドリードのGKセサルがこれをストップ。51分には左サイドでオリベイラがディフェンスをかく乱して中央へ早いグラウンダーのクロスを供給。M・サルガドを競りながらルフェテがゴール前に走り込みワンタッチシュートを試みるが枠を捕えることができなかった。

 バレンシアが前がかりになっていた62分、50/50のボールをメヒーアが奪い素早く縦へパスを出しマドリードがカウンターをしかける。あっというまに5対3という状況を作ったが、ロナウドの左からのクロスをワンタッチシュートしたソラリがオフサイドポジションだったためゴールは無効となった。早くもスタジアムを去るファンが出始めた頃、バレンシアのゴールが決まった。73分、右からのクロスボールをミスタがヘッド。バーに当たり跳ね返ったボールをシスコがヘディングで決めた。誰もがコンソレーション・ゴールであることは理解しており、それ程スタジアムは沸くことはなかった。

 63分にすでにロナウドがポルティージョと交代しており、更に74分にはラウルに代わり、怪我から復帰したばかりのジダンを使う余裕。レアル・マドリードも攻撃をけしかける必要がないため、レアル・マドリードがボールを保持すると、大抵ゲームがペースダウンする。ロスタイムにはそのジダンが蹴った直接FKが壁に当たりゴールへ吸い込まれ、レアル・マドリードに2点目が記録され、静かに、淡々と進んだゲームが終了した。バレンシアの頑張りに期待したが、試合の序盤で失点を許し勝敗への興味が削がれてしまったので残念だった。




 最近見た試合では、レアル・マドリードは常にゲームを支配している訳ではなく、少ないチャンスをきっちり決めて勝負をものにしている。スター揃いのチームにしては物足りない内容なのだが勝負強い。難敵バレンシアに完勝したレアル・マドリード。1992〜1993年シーズン以来のコパ・デル・レイのタイトルが一歩近づいた。


(バレンシアCF) (レアル・マドリードCF)
GK: パロップ GK: セサル
DF: ルフェテ(58分 シスコ)、アジャラ(50分、ホルへ・ロペス)、D・ナバーロ、ガリード DF: M・サルガド、エルゲラ、メヒーア、ラウル・ブラボ
MF: マルチェナ、バラハ、ビセンテ、アングーロ、アイマール(45分、オリベイラ) MF: ボルハ、グティ、フィーゴ(64分 ファンフラン)、ソラリ
FW: ミスタ FW: ラウル(74分 ジダン)、ロナウド(64分 ポルティージョ)
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