topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 続・スペインからの風 04/09/07 (火) <前へ次へindexへ>

 開幕戦から見る今シーズンのスペインリーグ (2/3)


 文/神藤恵史(ムルシア在住)
 
 ボランチ不足といえば、翌日バーで見たレアル・マドリード。新加入が予想されるボランチとしてヴィエラ、シャビ・アロンソの写真がスポーツ新聞のトップに何度も載ったが、気づいたらサムエル、モリエンテス、オーウェン、ウッドゲイトと、他のポジションのメンバーばかりが加入した。結局エルゲラをボランチに戻し、ベッカムの体力に頼りながら、攻守の基点に2人がなる。

 が、開幕戦の相手マジョルカは、このボランチ2人がボールを持つと激しくプレスを掛けまくる。彼らの狙いは前にいるジダン、フィーゴ、またFWの2人にロングパスを出す前に、ベッカムとエルゲラの位置で叩くこと。ショートパスで細かくダイレクトで前へ進めようとしても相手の駒が多くて、上手いように進まない。

 また相変わらず周りを見てからボールをゆっくりと前へはたくベッカム。確かに去年よりも幾分ボールを放すのが早くなったが、ボランチの位置でモタモタしていては相手に速攻の機会を与えるようなものだ。特にこの試合はレアル・マドリード持ち前のロングパス、またはサイドチェンジが見られない(つまり相手のプレスが激しい)。ベッカムの精細なロングパスを生み出すにも、相手のプレスを離れてからの「数秒の息抜き」が必要だ。

 ボールを奪ったら前線に一度渡し、開いているサイドのスペースへはたいて一挙に後ろから押し上げてくるマジョルカ。サルガド、ロベルト・カルロスの攻撃参加の回数が減り、ジダンはいつも以上に下がり目の位置に留まっている。このことは、レアル・マドリードがマジョルカのカウンターをかなり警戒していることを証明していた。



 前半途中、ラウールがピッチから去る。代わりにオーウェンが入ると、バーの若者のグループから拍手が聞こえる。が、横目で睨みを利かせる高齢者のマドリードファン。彼の心配時は開幕戦の勝利よりもラウールの怪我の具合。スペインのエース、レアルのキャプテンの代わりを新加入のオーウェンが補えるわけがないとでも言いたげだ。

 一方、解説者は「最終ラインをかなり上げているマジョルカ。彼らの裏を狙うのにはロナウド、オーウェンのスピードを活かすこと。そのためにはやはりベッカムからのパスでしょう。」と、そこにはラウールに対する個人的な思い入れは感じられない。

 そのオーウェン。緊張しているのかパスミス、シュートミスなどと、空回りしている様子がプレーから見える。その度にバーのいたるところから溜息、また机を叩くが聞こえた。ビールジョッキを握る拳が堅い「グー」になっているお客さん。つまみを食べながら貧乏ゆすりをしているお客さん。皆、ナーバスモードに入っている。

 補足するが、ここスペイン南部ムルシアの大概の飲食店ではレアル・マドリードのゲームを週末に流す。まさに「親方日の丸」。一部リーグのチームがないスペインの田舎ではレアル・マドリード色が強く、バレンシア、バルセロナのファンは少数派となっている。昨シーズン、地元ムルシア(昨シーズン1部最下位で終わり2部降格)のチーム得点王となったルイス・ガルシアが、対戦相手マジョルカのFWでプレーしている姿が見えるが、高齢者のムルシア住民の記憶には消されているようで、誰も気づかずにガラクティコばかりを目で追っている。



 最終的には読者の皆さんもご存知のように、オーウェンが決勝点となるゴールをロナウドにプレゼントした。翌日の新聞、テレビでのオーウェンの評価は、軒並み合格点というものだった。しかし、コンビを組むロナウドや、後ろからパスを出すMFのメンバーとの連携を確立するにはまだ時間を要するし、右サイドの親分フィーゴに遠慮して、彼のドリブルコースを邪魔しないようにと自分のプレーを躊躇するシーンも目立った。オーウェンは、もっともっと味方のプレースタイルを熟知する必要があるようだ。

 この試合で一番働いていたのはやはりフィーゴ。攻撃のあらゆる技を封じ込められた中で唯一有効だったのがフィーゴの縦の動き。彼がボールを持てば、2,3枚が近寄ってくる=他の選手がフリーになる=中へセンターリング、というような方程式が自然と出来上がる。

 また守備でも大きく貢献していた。ベストコンディションのこのポルトガル人は、相手にボールを取られると下がってプレスに参加し、さらにはパスカットを狙ったりと、ディフェンス陣の仕事を減らしていた。ピッチの外では日本、スペインでも物議を醸したフィーゴだが、仕事はしっかりとこなす31歳。まだまだ脂は乗り切っている。メンバーの中で一番休暇が短かった(2週間)ものの、イギリスへ行って流暢な英語を話しながらゴルフをしている姿は、来期の移動を予測させるような気配を感じさせた。

 チーム全体を見て感じることは、前線からプレスをかけるようになったこと。これは昨年からの改善点と言える。しかし、そうは言っても機能するのは前半開始15分まで。時間が経つにつれて相手のボールを回しをチェイシングする姿は消えていった。これもチームスタイルとして確立するには、いま少しの時間が必要なようだ。


<<< 前ページへ(1/3)次ページへ(3/3) >>>
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送