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 頑張れ!女子サッカー 03/09/16 (火) <前へ次へindexへ>
 スタジアム周辺の道路に何枚も貼り出された試合開催告知ポスター。

 相手にとって不足なし! 多彩な戦いを見せてくれたドイツ女子代表。


 取材・文/西森彰
女子ワールドカップ・ドイツ女子代表壮行試合 ドイツ女子代表vs.イングランド女子代表
2003年9月11日(木)14:00キックオフ ダルムシュタット 天候:晴 観衆:5,870人
試合結果/ドイツ女子代表4−0イングランド女子代表(前3−0、後1−0)
得点経過/[ドイツ]プリンツ(8分、16分)、リンゴア(35分)、ヴィーグマン(73分)


 キッカー誌を見てもビルト紙の別冊版を見ても、女子サッカーの詳細を見つけられない。ドルトムントのA代表戦で女性客に、来週から女子ワールドカップが始まることを知っているかを尋ねてみたがほとんど無反応。日本と同様、決して多くはない。

 当日は、寝坊してあわててケルンの駅で特急に飛び乗り、マインツで乗り換え。電車の乗り継ぎが奇跡的にうまくいったため、壮行試合の行なわれるダルムシュタットへは1時間前についた。中央駅から路面電車で30分弱。その道々、連続して街灯の下部に、この日の試合のポスターが貼り付けてある。「みんなで応援しようよ。ウチの町に国の代表が来るんだから」。サッカー協会とこの町の心意気が感じられる。車窓を眺めているうちに、スタジアムに到着。

 入場口でチケットが売られており、路面電車から降りた家族連れがそちらを目指して歩いていく。ちなみにチケットは2種類あって、メインスタンドの座席と、その他3面の自由席でどちらもブロック指定になっていて、各エリア内ならどこに座っても良い。値段はメインスタンドで7EURO。誤植ではなく、本当に1,000円で見られるのだ。

 ちなみにアーレンで行なわれたユース代表の試合が同じシステムだったが、メインで12EURO。前日、ドルトムントのフル代表戦で私が座った席がバックスタンド2階の2列目で55EUROだから、いかに安く設定されているかが分かる。そんなこともあってか、ダルムシュタットのスタンドは規模に応じて良く入り、5,870人の観客が見守る中、キックオフの笛が吹かれた。



 小さなスタジアムは一杯に埋まった。
 欧州では最強とも言える実績を残しているドイツ女子代表。本大会でもアメリカ他とチャンピオンを争うと思われるチームである。この日はイングランド女子代表を迎えての壮行試合だ。そのイングランド女子代表であるが、FIFAランキングでは13位。ちなみに同ランキングではカナダが12位で日本が14位だから、手ごろな物差しになる。

 本大会で初戦を戦うカナダと似たような体格で、強さもトントンなイングランドと戦うことで、手応えを確認するための最後の仕上げ。昨年、サウジアラビア代表と初戦を戦った男子A代表も、直前に中東の国とテストマッチを行なっており、このあたりの筋道が通ったブッキング能力には惚れ惚れする。日本も見習ってほしい。

 そのドイツのシステムは4−4−2気味の4−5−1。中盤はボックスタイプで中央の前後に2枚ずつ並び、ギャレフレケスが右サイドでウイング気味に高くポジションをとった。逆に左はほとんどがら空きになっている。1トップにエースストライカーのプリンツが張っている。指揮を執るメイヤー監督はタクティクスボードを持ってファン・ハールのように指示を送り、また大きな声で選手を鼓舞する姿を、オリンピックの放送でご覧になった方も多いはずだ。

 対するイングランド女子代表も、アメリカ大会の参加こそ逃したもののFIFAランキングどおり、出場権を争う圏内にあるヨーロッパの強国のひとつ。こちらは、未来へ目を向けた戦いのはずだ。システムはきちんとラインを3つ揃えた4−4−2。ドイツがスペースを空けている右サイドでヤンキーがどれくらい働けるかが鍵となってくるだろう。



 先制点はあっという間だった。8分、キックオフから一方的に攻めていたドイツが、GKロッテンベルグのキックで高く舞い上がったボールを追いかけて、イングランドの最終ラインとドイツのプリンツが駆けっこ。プリンツがこれを制すると、右足のシュートで豪快にイングランドのゴールネットを揺らした。

 得点後も12分、ヒングストからのロングボールをまたもや受けると、相手ゴールに迫ってシュート(これはイングランドDFがカット)。16分にも後方からのロブに競り勝つと再び、イングランドのゴールをこじ開ける2点目。競り負けない大きな体とスピード、そして右足のキック力。後ろからのロングボール一本が、すぐ得点機になるのだから、守る側はたまったものではない。

 ドイツの攻撃はこんな原始的(かつ有効であるのだが)なものだけではない。空けておいた左のスペースにヤンキーを引きずり込んでおいて、マイボールになるとブレゾニクが縦に物凄いスピードでオーバーラップする。33分に交代で起用されたフスもブレゾニクと同じように攻撃型のサイドバック。逆に右サイドのシュテーゲマンはきっちりと守備を優先させ、最終ラインは左に絞っている。

 そして右に寄った中盤の4人は2トップと絡みながら、細かいショートパスをつなぎながらボールを前に運び、最後の場面では必ず2列目以降の選手が最終ラインの裏を狙って飛び込んでいく。この試合でも何度かきれいに抜けながら、ゴールにはつながっていなかったが、34分、プリンツのポストからのスルーパスを、後ろから走ってきたヴィーグマンが受けて、レフェリーのミスジャッジを誘う転倒でPKを奪った。これをリンゴアが決めて3点目。あっさりと前半のうちにゲームは決まった。



 ドイツ女子代表がイングランド女子代表を圧倒!
 3−0とリードしたドイツは後半途中からはサブの選手を次々に使って、その動きを確認する。64分、一気に4枚の交代。最終ラインはヒングストの代わりにキュンツァーがそのまま入っただけだったが、中盤はボックスからラインにフォーメーションをチェンジ。右から交代で入ったシュミシェク、ヴンダーリッヒ、ヴィーグマンを挟んで、これも新たに入ったゴッチュリッヒと並び、左サイドハーフを務めていたメイナートはトップの位置に上がる。

 それまでの左が開いたボックスタイプから3ラインへのシステム変更にもスムーズに対応するあたり、完成したチームの強さが垣間見える。そして73分、メイナートのコーナーキックに、ニアサイドに飛び込んだヴィーグマンが頭であわせて4点目。プリンツと2人で100ゴール以上を挙げている、その得点力を見せつけた。

 この4点目の直後にも、メイナートをポーラース、プリンツをミュラーに交代。プリンツに比べると小柄なポーラースとミュラーの2人がトップに据えられた。終盤の起用とあって、この2人のスピードが他の選手よりも見栄えがするのは当然だが、ショートパスにあわせて裏へ抜け出るタイプのように見える。プリンツやヴィーグマンに比べるとキャリアの浅い2人だが、2試合に1試合は点を奪っている侮れないゴールゲッターである。

 多彩な攻めを見せるドイツ代表の前にイングランド代表は防戦一方。さらに3点目のPKを含め、必要以上にドイツに肩入れをしたレフェリーのジャッジもあって勝負にならなかった。帰りのバスに向かう途中でも、選手たちの顔には笑みが見えず、試合内容とあわせて納得はいっていない様子だった。



 ともあれ、ダルムシュタットの観衆が拍手を送る中、4−0の圧勝を収めたドイツ女子代表。圧倒的な攻撃力もあって、確かに強い。しかし、いくつかの癖も見つけることができた。

 まず、ゴールキックはロッテンベルグから、ペナルティエリアすぐ外のヒングストへのショートパスか、アバウトなロングキックの2パターンだ。この他のシーンでも常に一番近い味方に弱いキックで預けるか、プリンツの近くに放り込むだけのプレーを見せていた。前に出るスピードと正確なキャッチングを見せたロッテンベルグだが、足技には自信が無さそうである。

 また最終ラインでは、ヒングストがキープ力に絶対の自信を持っているようで、味方にボールをきちんと預けるまでボールを外に蹴りだそうとしない。安全第一のディフェンダーには珍しい、ブラジル代表のルシオのようなタイプだ。しかし、イングランドの2トップにプレッシャーをかけられ、一度は奪われ、一度はGKに厳しいボールを返していた。足技の苦手なGKと外に出さないセンターバック。フォアチェックを怠らなければ、何かが起きる可能性がある。

 攻撃に関しては右利きの選手が多いということ。フリーの場面ではわざわざ右足に持ち替える選手が多目立ち、この試合に限って言えば左足のシュートでゴールの枠を捉えたものは記憶にない。メイヤー監督が中盤から前の選手を右に寄せている理由のひとつが、これなのかもしれない。ワールドカップではこのあたりに注目してご覧いただければ、また楽しみが増えると思う。



 試合終了後、ファンとの交流を持つドイツ女子代表の選手たち。
 試合後にスタンドの柵から身を乗り出してサインを求める人々に、疲れた顔も見せずに気軽に応えてくれていた。Lリーグで見かける光景は、ここドイツでも大差はない。締め切りの都合なのか、金曜日に買ったキッカー誌には結果が掲載されず、土曜日に店頭にならんでいた女性誌では表紙の写真を飾っていた。正直、彼女たちにも勝たせてやりたい。だけど日本だって負けるわけにはいかない。

 写真を撮ったり、メモをしたり忙しそうにしていたので、私の隣に座った夫婦は迷惑だったかもしれない。しかし「日本から来たの?」と驚いて「ほら観客は何人だよ」とか、「何番アウトで何番インだね」と協力してくれた。「今まで3回負けているけど、今度はこっちの番だよ」。そう、肩に力を入れて挑戦する私に「セカンドラウンド、ゴー、トゥゲザー」と軽くウインクしてくれた。









(ドイツ女子代表) (イングランド女子代表)
GK: 1ロッテンベルグ GK: クープ
DF: 2シュテーゲマン、17ヒングスト(64分/4キュンツァー)、13ミナート、3ブレゾニク(33分/15フス) DF: チャンプ、ストーネイ、フィリップ、ユニット(87分/ヨルステン)
MF: 5ヨネス(64分/7ヴンダーリッヒ)、6リンゴア(64分/19ゴッチュリッヒ)、10ヴィーグマン、14メイナート(75分/20ポーラース) MF: ヤンキー、ウィリアムス(82分/エクセレイ)、チャップマン、スミス(62分/バーク)
FW: 18ギャレフレクス(64分/8シュミシェク)、9プリンツ(74分/11ミュラー) FW: ウォーカー(バー)、マクドゥガル(72分/スミス)
※ドイツ女子代表選手名の前の数字は背番号。本大会でも同じナンバーだと思われるのであえて記載した。
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