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 頑張れ!女子サッカー 04/08/11 (水) <前へ次へindexへ>

 得意のサイド攻撃で、スロースターターの出鼻を挫け!
 なでしこジャパンVSスウェーデン女子代表プレビュー(後編)

 文/西森彰
 前半からガンガン勝負する日本とは対照的に、「前半は様子見、後半勝負」がスウェーデンのひとつのパターンだ。女子ワールドカップでは、マリカ・ドマンスキ・リフォロス監督は、終始一貫した采配を振るっていた。勝負所にさしかかると、ダイヤモンドを形作る中盤の両端に攻撃型の選手を入れて、ここを起点に試合を決めにかかる。中盤を司るモストロームも押さえ気味にスタートし、後半から高い位置で勝負していた。

 どうしてもゴールが必要な場合は3−1−4−2とトップ下の2枚使いも試みていた。これに加えてノルウェー戦で試した4−3−3と幅広いバリエーションがある。日本はこの終盤の時間帯への対応策も考えながら、FWから最終ラインまでをコンパクトな間隔で保つ自分たちのサッカーを、90分間集中して持続する必要がある。

「左サイドの選手も左足が上手くない。2トップとトップ下が強力である」という上田栄治監督の言葉が独り歩きして「北朝鮮と似たようなタイプ」と捉えられている。だが、昨年の女子ワールドカップを見る限り、スウェーデン女子代表の特徴は、こと攻撃面において北朝鮮とは全くタイプが違う。

 北朝鮮は右サイドから中央にハイボールを上げ、これを2トップとトップ下のリ・クムスクに合わせる。そしてこぼれ球をボランチがミドルで狙う。高いフィジカルに物を言わせる戦いは、ボールの出所と行き先がほとんど限定されていたわけだ。これを逆手に取った上田監督の策が的中し、国立の圧勝劇となったのは北朝鮮戦のレポートhttp://www.2002world.com/column/women/2004/040425_nishimori.htmlで既に述べた。

 確かにスウェーデンもボールを奪うと、スヴェンション、リュングベリの2トップに預けて、攻撃がスタートする。しかし、この2人は北朝鮮のFWのように中央でドンと構えているタイプではなく、ラインの裏やサイドへ流れるスピードも兼ね備えている。フォローも速く、一旦、中盤に戻しておいて、また新たなスペースへ走りこむといったシーンも多い。どこに走り、どこに合わせてくるのか。守る側としてはポイントが非常に絞り辛い。

 上田監督はある程度のリスクを承知で、ラインを高く保てるよう、積極的な押し上げを求めている。引き過ぎてバイタルエリアに近づけてしまうよりも、ボールの出所をプレスで圧殺する選択だが、スピードのあるFWを相手にした時は勇気がいることだ。「みんなでしっかり上げる時は上げて、危ないと思った時は変に高くせず低く守るとか、本当に基本的なことだと思う」と分析する磯崎浩美のラインコントロールに注目したい。



 日本にも勝機は十分にある。

 今年に入ってからの対外戦績は五輪予選が3勝1敗。親善試合とトレーニングマッチが2勝1敗1分け。中国に2敗(非公開トレーニングマッチ、アジア予選決勝)を喫しているが、アメリカと引き分けて、北朝鮮とカナダには完勝。世界のトップクラスと戦い、結果を残すことで勢いをつけ、「親善試合では相手は本気になっていない」(大谷未央)とさらに貪欲な姿勢を見せている。伸びシロではこちらが上だ。

 澤穂希、山本絵美が負傷で仕上がりが遅れた一方、澤の穴を埋めた安藤梢、右から左にポジションを移した小林弥生が高いレベルのパフォーマンスを見せている。FW陣も好調だ。深い位置での勝負が際立つ荒川恵理子。最近、ゴールを量産体制に入った大谷。中盤のプレスでボールを奪い、2トップに渡して速い速攻。相手のお株を奪うサッカーが出来れば、経験値をベースに守るスウェーデンの4バックとて綻びを見いだせよう。

 日本はこれまでと同じように、敢えて空けた右のスペースで勝負を賭けたい。「サーキットやっても、長いところも、短いところも、みんながぶっちぎられる(笑)」(澤穂希)川上の怪物じみたスピードとスタミナ。そして酒井與惠の的確で献身的なポジショニング。FWが上手くチェイシングで追い込んでからが勝負だ。



 国内合宿で全治1週間の捻挫をして、オランダ戦をパスした矢野喬子の復帰もポイントになるだろう。オランダ女子代表戦では山岸が左サイドバックで先発した。右に川上、左に山岸の布陣は、左右どちらからでもサイド攻撃を仕掛けられる反面、試合終盤で両翼の足が同時に止まる危険性も孕んでいる。

 川上は「飛ばしていって最後まで90分持つと自分は思っていないし、きっと監督も『行けるとこまで行け!』と思っているはず」と語っている。つまり、ベンチに頼れる山岸靖代あってこそ、川上も後先を考えずに上下動を繰り返せる。オランダ戦の前半、押さえ気味のプレーに見えたのは「後続がいない」という意識があったのではないか?

 右サイドは大部由美、左サイドは柳田美幸へのリレーは考えられる。だが、大部はYKK APでは右に位置しているが、タテのボールに強いセンターバックタイプで、川上、山岸ほどのスピードは期待できない。柳田もどちらかと言えば攻撃型の選手で、DFとしてのポジショニングに一抹の不安が残る。スウェーデンのフレッシュなサイドアタッカーが出てくる前に試合を決めるつもりで、試合に入ってほしい。



 最終登録メンバー発表の記者会見から5日ほど経って上田監督に尋ねた。「最後まで迷っていたのはココのポジションですか?」。上田監督は笑顔で「さあ、そこまでは言えませんね。ご想像にお任せします」とはぐらかし、言葉を続けた。

「代表メンバーとバックアップメンバー、その他の候補の差っていうのは、本当に僅かなものなんです。私はボールを奪われた後に、それを奪い返そうとする闘志が見られたかどうか。そんな部分を代表合宿やL・リーグの試合の中で確認していました。本当は彼女自身なりに良くやっていて、それを私の方が理解してやれなかったのかも知れない。どんなに客観的に見ようとしても、私の目を通す以上、最後は私の主観ということになりますから」

 ピッチで一緒に戦う仲間に、その闘志が伝わるようなプレーを見せられるか。上田監督は最終的にそこを見ながら、この18人に絞り込んだ。「今の代表チームは『なでしこジャパン』というネーミングに相応しいと思っています。彼女たちは、本当にサッカーが好きで、純粋で、そしてひたむきにプレーするんです」と熱っぽく語った上田監督だが、そのような選手を選んだのも、彼自身なのである。強いハートを重視して選ばれた18人だ。必ず、自分たちの力を出し切ってくれるだろう。



 アテネ五輪の日本選手団の先陣を務めるなでしこジャパン。注目のスウェーデン女子代表戦は、日本時間の今晩24時にキックオフされる。純粋でひたむきに勝利を目指す、彼女たちの戦いを、ぜひ見届けてほしい。


<なでしこジャパン(日本女子五輪代表)メンバー> <スウェーデン女子五輪代表メンバー>
(ゴールキーパー) (ゴールキーパー)
1  山郷のぞみ  Yamago, Nozomi 1  ヨエンソン  Joensson, Caroline
18  小野寺志保  Onodera, Shiho 18  リンダール  Lindahl, Hedvig
(ディフェンダー) (ディフェンダー)
2  矢野喬子  Yano, Kyoko 2  ウェストベリ  Westberg, Karolina
3  磯崎浩美  Isozaki, Hiromi 3  トゥエルンクヴィスト  Toernqvist, Jane
4  大部由美  Obe, Yumi 4  マークルント  Marklund, Hanna
5  川上直子  Kawakami, Naoko 5  ベンクトソン  Bengtsson, Kristin
12  山岸靖代  Yamagishi, Yasuyo 7  ラーション  Larsson, Sara
13  下小鶴綾  Shimokozuru, Aya 8  エストベリ  Oestberg, Frida
(ミッドフィルダー) (ミッドフィルダー)
6  酒井與惠  Sakai ,Tomoe 6  モストローム  Mostroem, Malin
7  山本絵美  Yamamoto, Emi 9  アンデション  Andersson, Malin
8  宮本ともみ  Miyamoto, Tomomi 13  シェリン  Schelin, Lotta
15  柳田美幸  Yanagita, Miyuki 14  ファーゲストローム  Fagerstroem, Linda
16  小林弥生  Kobayashi, Yayoi 15  ショーグラン  Sjoegran, Therese
17  安藤梢  Ando, Kozue 17  ショーストローム  Sjoestroem, Anna
(フォワード) (フォワード)
9  荒川恵理子  Arakawa, Eriko 10  リュングベリ  Ljungberg, Hanna
10  澤穂希  Sawa Homare 11  スヴェンション  Svensson, Victoria
11  大谷未央  Otani, Mio 12  オクヴィスト   Oeqvist, Josefine
14  丸山桂里奈  Maruyama, Karina 16  オルソン  Olsson, Salina
(バックアップメンバー)
19  宮崎有香  Miyazaki, Yuka 19  ノルディン  Nordin, Frida
20  近賀ゆかり  Kinga, Yukari 20  ソフィア・エリクソン  Eriksson, Sofia
21  鈴木智子  Suzuki, Tomoko 21  アンナ・マリア・エリクソン  Eriksson, Anna-Maria
22  福元美穂  Fukumoto, Miho 22  アストローム   Astroem, Maja
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