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 頑張れ!女子サッカー 04/10/29 (金) <前へ次へindexへ>
岡山湯郷Belle、L1昇格決定!

 岡山湯郷、清水第八を降し、L1昇格を決定!
 L・リーグ2部 第14節 清水第八SC vs. 岡山湯郷Belle

 取材・文/西森彰
2004年10月24日(日)13:00キックオフ 裾野市陸上競技場 天候:晴
試合結果/清水第八SC1−5岡山湯郷Belle(前0−3、後1−2)
得点経過/[岡山湯郷]中田(20分)、宮間(21分、28分)、田中(46分、83分)、[清水第八]桑原(74分)


「うわー、サヤカ先輩、TASAKIに入ったんだー」
「すごいねー」

 ハーフタイム。私が座っている席の後ろでL・リーグの公式プログラム(ほとんどのクラブで売り切れているが、清水にはまだ在庫があるらしい)の選手データを見ながら、観戦に来ていた女の子たちが喋っていた。TASAKIペルーレFC・大石沙弥香の出身は清水FC女子。地元のサッカークラブの後輩なのだろう。

 我々が小学生の頃には「町に住んでいる人たち全員が、リフティングを100回以上できる」とまで噂されていたサッカー王国は、女子のトッププレイヤーも輩出してきた。その中の一人がこの日、L2優勝を賭けて裾野市陸上競技場に乗り込んできた岡山湯郷Belleの女性指揮官・本田美登里である。清水第八、読売ベレーザ(現・日テレ・ベレーザ)で選手としても活躍した彼女は、現役引退後、指導者としての道を選んだ。

 そして岡山県美作市の希望となる、新しいチームを離陸させた。「ここ一番で勝負弱かった」(本田美登里監督・岡山湯郷)若いチームは、昨年、目標としていたL1参入に失敗した。今年はアルビレックス新潟レディース、ASエルフェン狭山FCとの争いを制し「あとひとつ」まで漕ぎ着けている。

 これを迎え撃つ清水第八SCもサッカー王国・清水に拠点を置き、過去に全日本女子選手権を7連覇した名門。最近は不振が目立ち、今年もいまだにホームで勝ち星を挙げることができない。「やりたいことができてきている。ただ、最後のフィニッシュの精度が…。やる気もあるし、勢いもあるんですけれど、残念ですね」と東城薫監督(清水第八)も結果が出ない現状に歯噛みをしている。



 目の前での胴上げは阻みたい清水第八は、岡山湯郷のエース・宮間あやにマン・マークをつけてきた。「宮間さんと同年代の彼女をぶつけました。ライバル心に期待して」(東城監督)マーカーに起用されたのは丸本和美。深いタックルで激しく宮間に食らいついた。ゲームの流れを活かして、ハードコンタクトを流し気味にした深野悦子主審の笛は、戦う気持ちを前に出してプレーした清水第八に利するかに思えた。

 前回の対戦では、熱くなった宮間がイエローカードをもらい、警告の累積で狭山とのゲームを棒に振っている。「やる前から、相手の選手が激しく来るのは分かっていた。ケガも怖かったし、こっちがエキサイトしてもしょうがないと思って我慢しました。そうは言っても、最初はイライラしていたんですけれどね(笑)」と、辛抱強くプレーを続けた。

 そして20分、ボールキープから、直接フリーキックを奪う。ペナルティエリアの外であっても、ゴール正面からフリーで宮間にボールを蹴らせるのは、PKを与えるに等しい。左足から放たれたボールは右のポストに弾かれたが、リーディング・スコアラーの中田麻衣子が勘良く詰めて、先制に成功した。宮間は、1分後、自らドリブルで抜けて2点目を奪うと、28分には、またもや奪ったフリーキックを直接ゴールに放り込む。後半開始直後にも宮間のパスから田中静佳がゴールし、試合はワンサイドゲームになるかと思われた。



この日も火を噴いた宮間のFK。
 ところが、点差がいくら開いても清水第八の選手たちは諦めない。攻め疲れからか、徐々に間延びし始めた岡山湯郷の選手間を、スピードのあるパスがくぐり抜け、前線までボールがつながりだした。清水第八の攻勢を前に、岡山湯郷の本田監督は55分に福原理恵、泉紀子を送り出し、69分には3枚目のカードとして城地泰子をも入れ、相手に引導を渡そうとした。これが結果的には、本田監督が悔やんだ早仕掛けとなった。

 74分、清水第八の桑原沙緒莉が左サイドからペナルティボックスへドリブルで突っかけた。桑原に対応したのは交代出場したばかりの城地。桑原の足からややボールが離れ、先に触ろうとした2人は、スピードに乗った状態で衝突する。遠目にはどちらのファールか分からなかったが、深野主審は迷わずPKスポットを指差した。これを桑原自らがゴールの真ん中に決めて、清水第八に意地の1点が記された。

 ここから両チームは意地の張り合いで熱くなってしまった。「男子よりも女子のほうがギリギリの場面で無茶をする」とは、女子サッカーを指導する男性監督がよく口に出すセリフ。清水第八の東城監督が自軍の選手に「ラフプレーは止せ」と何度も声をかけ、岡山湯郷も経験豊富な藤井奈々が「落ち着いてゲームに集中しよう!」と呼びかけたが「ああなってしまうともうダメ。引いたら即負けですから」(本田監督)という状況になってしまっていた。

 競り合いの中で佐藤シェンネンが足首を負傷して退場。さらに先制点を奪った中田もピッチ外に運び出される。中田が戻ると今度は安田邦子がタッチライン外に転がり出る。交代枠が残っていない岡山湯郷は、苦しい状況に陥った。期せずして生まれた2人の数的優位を活かして攻める清水第八。だが、反撃もここまでだった。岡山湯郷はこの攻撃にもそれ以上の失点を許さず、逆に中田のシュート性のパスを田中が合わせて5点目。粘る清水第八を振り切った。



中田麻衣子(白・岡山湯郷)と杉浦華織(赤・清水第八)。清水第八の
選手は粘り強く喰らい付いた。
 清水第八の東城監督は「前回の対戦では(宮間への)マン・マークがある程度まで成功して、どうにか3点で凌げたけれども、今日はさらに相手が上でした。岡山さんは強かったですね、やっぱり」と完敗を認めた。具体的には「岡山さんはボールがきちんとフォワードまで回る。ウチは最後のところでスペースにしか出せない。それと私に年が近い選手(北岡幸子、藤井)が、きちんと若い子に自分の経験を伝えている。ウチは、若さと勢いだけで向かっていきましたが、そのあたりに違いがあるのでしょう」。

 それでも、シュート数で1本対12本と圧倒された前半から一転、後半は5本対7本まで押し戻した。L2クラスなら、もう少し結果が出ていてもおかしくないゲーム内容だった。「ウチはクラブチームなので、普段は市外で仕事をして、そこから練習に通ってくる選手たちがいる。今、ようやく、サッカーをやる環境が徐々に改善されてきたところなんです」と東城監督。クラブを取り巻く状況は好転しつつある。

「今年、18歳から25歳までの若い選手にチーム体制を切り替えて、ようやくここまで来ました。選手たちは本当にサッカーが好きなんだけれども、今一歩精度を欠いて結果が出せていない。前節の狭山戦も1対1で折り返して、熊本戦も…。最後は詰めの甘さですね。本来なら、きちんとスタートをして1年で結果を出さなければいけないんですけれども、歴史のあるチームから1年という期間をもらっています。続けていければ、もっと良くなると思います」(東城監督)

 芽生え始めた新しい力、そしてサッカー王国の誇りを胸に、最終戦、そして全日本選手権を戦う。



昇格を決めた本田美登里監督は「これでようやくスタートラインに立てる」。
 この日の勝利でL2優勝、つまり来期のL1昇格を決めた本田監督だったが、その嬉しさよりも、裏目に出た選手交代に悔しさを滲ませていた。「(城地を)使ってやりたくて早い時間帯で入れた。でも、あれで選手たちが『今日は勝ちゲームなんだ』と受身に立ってしまって…。しかも、城地が絡んだプレーで微妙なPKを与えて、本人としても気持ちの良いものじゃない。あれなら残り5分まで心を鬼にして我慢するんだった。ゲーム自体も、あのPKからおかしくなってケガ人まで出たし、全てはあの交代が原因です」。

 万歳三唱も、胴上げも行われず、選手から花束を手渡されて感極まった「フリ(笑)」(本田監督)だけ。L2昇格決定にもセレモニーはほとんど無かった。「昨日のミーティングでも『(勝っても)胴上げはしないよ。美作で皆さんの前でするんだから』って。ケガ人が出て後味が悪かったし、そんなに感慨はありません。早くL1で戦いたいと思って、1年間を戦ってきたんで、やっとスタートラインについたところ」と本田監督。シーズン前から大本命と目されていただけに、順当な結果なのだろう。しかし、他のクラブが楽々とL1への切符を与えたわけではなかった。

「(7月11日の)狭山に負けてから、次の新潟戦までの1週間は、この1年間で最もサッカーのことを考えていた。『余計なことを考えた時点で負けるんじゃないか』とまで思った。お笑い番組を見て笑っている自分に『いいの? こんなことで。この時間に試合のビデオを見なくて』とか問いかけて『笑っている場合じゃない』と。だから、あのアウェーでの勝ち点3は本当に大きかったし、その後も…」

 本田監督の口から感慨深げに漏れたこの言葉こそ、L2他クラブの選手・スタッフに贈られた、最高の勲章だったに違いない。


(清水第八SC) (岡山湯郷Belle)
GK: 吉田喜久美 GK: 福元美穂
DF: 遠山さゆり、金城若菜、西ヶ谷紀恵、杉浦華織 DF: 赤井歩(69分/城地泰子)、藤井奈々、佐藤シェンネン
MF: 長谷川絵梨(85分/山本輪)、丸本和美、伊井清乃、桜田真悠子、桑原沙緒莉 MF: 安田邦子、北岡幸子、高畑愛美(55分/福原理恵)、杉本あすか(55分/泉紀子)、宮間あや
FW: 中島未来 FW: 中田麻衣子、田中静佳
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