topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 頑張れ!女子サッカー 04/12/31 (金) <前へ次へindexへ>

 雪の中の死闘!レイナス、PK戦を制して元旦の国立へ
 

 取材・文/中倉一志
第26回全日本女子サッカー選手権大会 準決勝 さいたまレイナスFCvs.伊賀FCくノ一
2004年12月29日(水)11:00キックオフ 国立スポーツ科学センター西が丘サッカー場 観衆:912人 天候:雪
試合結果/さいたまレイナスFC 1−1(PK4−3) 伊賀FCくノ一
得点経過/[さいたま]高橋(23分)、[伊賀]馬場(69分)


 真っ白に姿を変えた西が丘サッカー場。前日から雪の天気予報が出ていたとはいえ、その激しさは予想以上。試合前にライン上の雪をほうきで取り除いても、見る見るうちに雪がラインを消してしまう。すべる足元。視界をさえぎる激しい雪。そして凍てつくような寒さ。全日本女子サッカー選手権準決勝は、これ以上考えられない悪コンディションにみまわれた。しかし、これを克服したチームだけに元旦の国立に立つ権利が与えられるのだ。

 さて、準決勝の第1試合、雪の中をピッチに登場したのは、さいたまレイナスFCと伊賀FCくノ一。今年、大躍進を果たしたレイナスは、リーグ戦、国体と現在2冠。全日本女子選手権でも頂点に立って、国内タイトルの独占を目指す。対する伊賀はリーグ戦ではレイナスに2連敗と分が悪い。しかし、たとえレイナスが無敗を誇ろうとも、同じL1で戦う相手に負けっぱなしではシーズンは終われない。リーグ戦での借りを返すとともに3年ぶりの優勝を狙う。



 水分を吸って重たくなったボールは飛ばないどころか、雪が邪魔をして転がすこともできない。ボールコントロールもままならない試合は、必然的に局面でどれだけ頑張れるかが勝負になる。ボールを前に蹴りだして、高い位置でルーズになったボールに身体を張り、濡れることもいとわずにスライディングタックルで相手のボールを奪う。相手に対しての気後れとミスは致命傷。互いに高い集中力を発揮して激しく、そして丁寧にボールを扱う。

 そんな試合の主導権を握ったのはレイナス。ボール際の激しさと、ルーズボールに対するカバーリングの良さで伊賀を上回り、リズムを掴んだ。そして23分、木原、安藤と繋いでゴール前へボールを運び、相手のヘディングがペナルティエリア内にこぼれたホールに高橋が鋭く反応。右足から放ったシュートが見事に伊賀のゴールマウスを捕らえた。

 その後も試合の主導権を握るのはレイナス。しかし、伊賀は押し込まれながらも、この攻撃に耐えた。その原動力となったのは山岸、馬場の両CB。前からプレッシャーをかけてくる北本を落ちついてかわし、こぼれたボールを的確にカバーしあって最後の砦を守った。何が起こっても不思議ではないコンディションの中での安定した守り。そして、この頑張りが後半から始まる伊賀の猛反撃につながった。



「雪の中のゲームでボールが中々前に納まらなかった。まずは前線にターゲットが欲しかった」。江川監督(伊賀)は後半に入ると堤を下げて小野を投入。従来の4−4−2のフォーメーションから、小野を前線の中央に置く4−3−3に変更した。そして、この交代が功を奏す。高い位置にボールが収まるようになった伊賀は、小野を中心にして井坂、村岡が前に飛び出してはレイナスを慌てさせる。試合の流れは前半とは全く正反対になった。

 そして伊賀の同点弾は69分、FKがレイナスゴール前にこぼれたところを馬場が気持ちで押し込んだ。さらに伊賀は67分、井坂を下げて吉泉を投入し、そのタイミングで山岸を前線に上げる。山岸の個人の力を最大限に生かそうというのが狙いだ。前線でレイナスの守備を切り裂く山岸と、それをフォローする仲間たち。32分、そして33分には決定的なシュートを放つ。結局ゴールは割れずに試合は延長戦にもつれ込んだが、流れは完全に伊賀のものになっていた。

 その勢いは延長戦でも続く。しかし、さすがは2つのタイトルを獲得しているレイナス。伊賀の猛攻を凌ぎきると、延長後半に入って再び激しく前に出始めた。今度はレイナスが伊賀を押し込み、伊賀が粘り強く凌ぐ展開へと移っていく。押しては引き、引いては押す死闘は110分を終えても1−1。勝敗の行方はPK戦に持ち越された。そして双方が1本ずつ外して迎えた伊賀の5人目をGK山郷がセーブ。この瞬間、伊賀の決勝進出が決まった。



 昨年までのレイナスなら、同点に追いつかれた段階で腰が引けてしまい、そのままズルズルと逆転負けを喫していたことだろう。しかし、ここから見せた粘り腰こそが、レイナスをリーグチャンピオンに導いた。「フォローだとか、助けあいだとか、2人目だけじゃなく3人目、さらにもう一人多くやっていくということが徹底されてきた。それか僕たちの持ち味。それが今年レイナスが躍進できた一番大きな要因」(田口監督・レイナス)。レイナスは3冠獲得を目指して元旦の国立の舞台に立つ。

「いい流れで同点に追いついたが、そこで逆転が出来なかった。いい時間帯で、もう少し畳み込めれば良かった」とは江川監督の敗戦の弁。さぞかし悔しい思いをしたことだろう。しかし、内容では決して負けてはいなかった。2冠のレイナスにチャレンジャーとして挑み、難しいコンディションの中で大きなミスをすることのない逞しい精神力も見せた。そして江川監督も「良く戦った」と選手たちを讃える。この悔しさを晴らす舞台はL・リーグ。選手たちは少しの休息の後、雪辱を期して2005年シーズンへの準備を始める。






(さいたまレイナスFC) (伊賀FCくノ一)
GK: 山郷のぞみ GK: 瀬口江美
DF: 田代久美子 宮嶋由恵 西口柄早 永留かおる DF: 宮崎有香 馬場典子 山岸靖代 藤村智美
MF: 木原梢 岩倉三恵 高橋彩子 安藤梢 MF: 那須麻衣子 原歩 堤早希(HT/小野鈴香) 中川愛美
FW: 高橋唯(76分/若林エリ) 北本綾子(97分/笠井香織) FW: 井坂美都(67分/吉泉愛)、 村岡夏希(94分/小山美佳)
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送