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 頑張れ!女子サッカー 05/06/09 (木) <前へ次へindexへ>

 気まぐれなサッカーの神様。意外な形で訪れた試合の幕切れ。
 2005L1リーグ 第8節 日テレ・ベレーザvs.TASAKIペルーレ

 取材・文/中倉一志
2005年6月5日(日)13:00キックオフ 平塚競技場 観衆:1200人 天候:晴
試合結果/日テレ・ベレーザ1−0TASAKIペルーレ(前0−0、後1−0)
得点経過/[日テレ]大野(89分)


 あらかじめ定められた一定のスペースを22人が奪い合うサッカーというスポーツでは、互いが全ての力を出し合うことはめったにない。どちらかが押せば、もう片方は引かざるを得ず、どちらかが特徴を出せば、もう一方は自分たちの特徴を消されてしまう。限られたパイを双方が奪い合う戦いでは、それは当然の流れでもある。しかし、幸運にも互いの力を全てぶつけ合う好ゲームにめぐり合うことがある。この日の試合がまさにそんな試合だった。

 ともに第1順目を5勝2分の無敗で駆け抜けた日テレ・ベレーザとTASAKIペルーレ。両チームの先発メンバーにはずらりと代表経験者の名前が並ぶ。まるでオールスターのような顔ぶれは、文字通り日本を代表するプレーヤーたちが力の限りをぶつけ合う試合だ。代表選手にとっては直前に行われたロシア遠征の疲労が心配されたが、「代表に行く前から、この試合が大事だということは分かっていた。気持ちの維持は出来ている」とは松田岳夫監督(日テレ)。それはTASAKIも同じ気持ちだろう。



 激しい主導権争いを経てボールを支配したのは日テレ。中盤の底で酒井と川上が出足鋭くボールをカット。そこから大きく素早くボールを動かしてリズムを刻む。中盤を自由に動き回る澤。最前線でターゲットになって起点を作る永里。そしてスペースにめがけて大野、伊藤が飛び出していく。右サイドを中心に攻め上がっておいて、機を見て左サイドから豊田が効果的なオーバーラップを仕掛ける。日テレらしい実に多彩な攻撃だ。

 しかし、TASAKIも日テレの自由にはさせていない。最終ラインを積極的に上げてコンパクトなゾーンを形成。伝統の走力を武器に、出し手と受け手に厳しくプレスをかけて自由を奪う。ボールを動かす日テレに決して決定的なパスを通させず、不用意にボールをキープすれば、あっという間に2、3人で囲い込んでボールを奪う。そして、早い攻守の切り替えから佐野が左サイドからスピードを生かして積極的に突破を図る。

 ともに持ち味を発揮し、狙い通りのサッカーを展開。そして、ともに最後のところは譲らない。高い集中力を発揮してギリギリの勝負を繰り返す両チーム。手に汗握る熱戦はあっという間に45分を終えた。「おもしろい」。思わず口から言葉が漏れる。敢えて言えば日テレの攻撃をシュート3本に抑える一方、6本のシュートを放ったTASAKIがやや有利か。ただし、日テレが誇る酒井、川上のダブルボランチもTASAKIにチャンスを与えなかった。



 後半、互いに決定的なシュートを放った後、試合の主導権を握ったのはTASAKIだった。右サイドにボールを集めると、高い位置を取る豊田の裏のスペースをついて攻撃を仕掛ける。62分には土橋を下げて甲斐を投入。さらに激しく右サイドから攻め立てた。その攻撃に対応できず、思わず相手にのしかかるようにしてボールを止める豊田。そしてホイッスルとともに、この日、2枚目のイエローカードが豊田に提示された。してやったりのTASAKI。大きく流れを引き寄せたかに見えた。

「後ろとボランチのところの枚数は減らしたくなかったので、つなぐサッカーは諦めて、前の2人にボールを拾わせることにした。隙あらば点を取りたかった」。松田監督は荒川の1トップから、荒川、大野の2トップに変更。川上を右SBに下げて、中盤は酒井を中央に澤と伊藤を並べる。そんな日テレをTASAKIは崩すことが出来ない。運動量が落ちたことも影響したのだろう。そして、荒川のパワー、大野のスピードが前がかりになることをためらわせたのかもしれない。

 ゴールが生まれないままに進む試合に、スタジアムには引き分けやむなしの雰囲気が流れ始めた。そんな中、思いもよらぬ形で決勝ゴールが生まれることになる。なんでもないルーズボールをTASAKIのGK秋山が右足でクリア。ボールは甲斐につながるはずだった。ところが、コントロールミスしたボールがつめてきた岩清水に当たってゴール前へ。そこに大野がいた。目の前に広がる無人のゴール。大野は右足で流し込むだけでよかった。手元のストップウォッチの表示は90分調度。素晴らしい攻防を見せた試合は意外な形で幕切れを迎えた。



「直接対戦する3回のうち、1回を取れたのはすごく大きい」(松田監督)。これでTASAKIとの対戦成績は1勝1分。互いに隙のないチームは、ともに取りこぼしは考えにくい。リーグ優勝は直接対決の結果が大きく左右するだけに、松田監督は満足げな表情を浮かべる。「人数が少なくなっても後ろが崩れなかったのが勝因。決勝点はツキだが、そのツキも選手が自分たちで呼び込んだツキ」。残りわずかな時間で、しっかりとゴール前に詰めていた岩清水と大野の動きがあったからこそ生まれた決勝ゴールだった。

「痛い星を落とした」。仲井監督はさすがに落胆の色を隠せない。全ては狙い通りだった。日テレの攻撃を封じ込め、数的有利という武器まで手に入れた。しかし、最後の最後でサッカーの神様は微笑んでくれなかった。「相手が退場になった時点で点を取りに行かなければ行けなかったが、そういう意識がどれだけあったのか・・・」。確かに失点の直接の原因はGKのミス。しかし、数的優位の時間帯に攻め切れていれば結果は違ったものになっただろう。日テレとの直接対決を1試合残しているが、得失点差で13の差が大きくのしかかる。

「この結果で、うちがいかに点を取っていくかという展開に変わった。直接対決に勝っても追いつけないようでは困る。これからは1点でも多く取ることが課題になる」。仲井監督は自らに言い聞かせるようにしてスタジアムを後にした。


(日テレ・ベレーザ) (TASAKIペルーレ)
GK: 小野寺志保 GK: 秋山智美
DF: 中地舞(66分/宇津木瑠美) 四方菜穂 須藤安紀子(70分/岩清水梓) 豊田奈夕葉(63分/退場) 川上直子 DF: 磯崎浩美 中岡麻衣子 下小鶴綾
MF: 酒井與惠 伊藤香菜子 澤穂希 MF: 佐野弘子 山本絵美 新甫まどか 柳田美幸 土橋優貴(62分/甲斐潤子)
FW: 大野忍 永里優季(HT/荒川恵理子) FW: 大谷未央 鈴木智子(85分/大石沙弥香)
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