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 頑張れ!女子サッカー 05/06/16 (木) <前へ次へindexへ>
前回よりももう一歩前に進みたい岡山湯郷だったが…。

 日テレ、パーフェクトゲームで貫禄を見せる。
 2005L1リーグ第9節 岡山湯郷Belle vs. 日テレ・ベレーザ

 取材・文/西森彰
2005年6月12日(日)11:00キックオフ 岡山県美作ラグビー・サッカー場 観衆:2,493人 天候:晴
試合結果/岡山湯郷Belle0−7日テレ・ベレーザ(前0−3、後0−4)
得点経過/[日テレ]大野(1分、52分、72分)、川上(14分)、澤(35分)、永里(64分、68分)


 8試合を消化して2勝6敗。L1初シーズンで苦戦中の岡山湯郷Belleだが、稲城でのゲームでは、優勝候補の日テレ・ベレーザを苦しめた。最終的に逆転されたもののスコアは1対2。本田美登里監督が良く口にする「サプライズ」の1歩手前だ。戦力差を考えれば、決して悲観する結果ではないと思えたが、岡山湯郷の本田美登里監督はこの結果を別の角度から捉えていた。

「リーグ戦で3回ずつ当たる中で、良いデキの時もあれば、状態が底の時もある。確かにベレーザとウチでは絶対的なチーム力の差が存在するわけだから『1対2、良くやったじゃない』で済ませて良いのかもしれない。でも、あの時のベレーザは、TASAKI、浦和と凄いプレッシャーのかかる相手が続いて、コンディションも最低だった。『それなら勝ち点3、悪くても1は取っておかなければいけなかったんじゃないか?』。しばらくすると、そう思えてきちゃったんですよね」

 一月前にそう語っていた本田監督。その見解は正しかった。本田監督とその教え子、そして岡山県美作ラグビー・サッカー場に集まった2,493人の観客は、本気を出した日テレの破壊的な強さを、目の当たりにすることになった。



岡山県高校総体決勝戦も後座試合に組まれ、メインスタンドは満員だった。
GKまで交わし、大野忍(9番・緑)、ハットトリックを達成!
 現在6勝2分けの勝ち点20。首位を走る日テレの松田岳夫監督は、前回の苦戦を教訓としてチームを引き締めてきた。「岡山湯郷の10番の宮間あやというのは非常に良い選手。彼女が前を向いてボールを向くと攻撃のパターンが増えるので、そこをきっちり防いでいこうと指示しました」(松田岳夫監督・日テレ)。須藤安紀子、豊田菜夕葉をケガと出場停止で欠く最終ラインは宇津木瑠美がセンター、岩清水梓が右で先発し、中地舞が左に回る。

 対する岡山湯郷も左サイドハーフの泉紀子が、ケガでスタンド観戦。本田監督は4−4−2の左サイドハーフにFW登録の中田麻衣子を起用してきた。「(日テレの)川上が右サイドに出てくるのは分かっていたので、そこをスピードのある中田に突かせたかった」(本田監督)。前節の伊賀FCくノ一戦で試合開始早々に失点していたことを踏まえ、「2度同じ失敗は繰り返すな」と念を押して、ロッカールームから選手たちを送り出した。

 試合開始早々、宮間がドリブルで仕掛けたところを川上直子がカットし、そこからパスを受けた伊藤香菜子が最終ライン裏にロブを落とす。タイミング良く抜け出した大野忍がこれを岡山湯郷ゴールに流し込んだ。手元の時計を慌てて確かめるとちょうど15秒。文字通りの「秒殺」だった。警戒していた形での失点。「試合の入り方が、今日の流れを決めてしまった」と本田監督。早くも明暗がくっきりと分かれた。

 2点目は個の力で生まれた。14分、右サイドでボールを持った川上が迷うことなく突っかけ、前方の佐藤シェンネン、横の中田麻衣子を持ち前のスピードで置き去りにする。そして、中央からカバーに来た城地泰子が寄せ切る前に強烈なシュートが福元を破った。ミスで奪われた1点目。個々の戦闘能力の違いで奪われた2点目。岡山湯郷の選手たちの気持ちが後手に回るのも仕方が無い。



 ゴールに気を良くした日テレのイレブンは、小気味良くボールをつなぐ。あらかじめ決められたエリアにいるのではなく、ひとりひとりがスペースに流れ、マーカーを引きつけては、また新たにできるスペースを生かす。「今日は相手のプレッシャーどうこうではなく、自分たちのリズムで余裕を持ってボールを回すことができました。良いタイミングでボールが受けられたり、ボールを持った選手が遠くまで見えていたので、ボールが良く動いていたと思います」と松田監督。

 変幻自在のポジションチェンジを繰り返す前方の先輩に負けじと、先発機会にアピールしたい岩清水と宇津木も正確なパスで攻撃の組み立てに絡む。「失点にはつながりませんでしたが、相手のスピードや高さに対する対応にまだまだ課題があります」と松田監督からは厳しい言葉が出たが、足元の正確さではレギュラー組を凌ぐだけの能力を持ったふたりは、岡山湯郷のフォアチェックを楽々と交わした。

 逆に岡山湯郷の選手たちは気持ちだけが先走ってしまう、典型的な悪いパターン。日テレのボールホルダーに一人ずつ当たりに行っては、パスでいなされ、切り返しで交わされる。前のボールを取れないなら、きっちりと後ろの選手を捕まえ、前線の選手の戻りを待つ。その基本さえもパニック状態の頭から抜け落ちてしまっている。



遠方から駆けつけた日テレのファンは、バックスタンドに陣取る。
 一方的にゲームとボールを支配し続ける日テレは35分、澤穂希が「この試合で決めたいと思っていたので嬉しい」というL・リーグ通算100ゴールをゲット。後半に入っても主導権を渡さず、52分に大野がこの日2点目を奪うと、代表で自信をつけて帰ってきた永里優季が64分、68分と連発。さらに72分に大野がハットトリックを達成する。3点目以降は、どれも相手の守備を完全に崩して挙げた得点だった。

「芝の状態が良く、ボールを思い通りにコントロールできるピッチコンディション。その中でベレーザが一番やりたいサッカーができたんじゃないでしょうか。ウチの子たちはあれだけボールを上手く回せるチームとやったことがなかった。だから、どう対処すれば良いのかも分からなかったと思います」

 時間を追うごとに戦況は悪化していく。本田監督にも、手の施す術が残されていなかった。スポーツというよりもアートに近い日テレの芸術的なサッカーは、試合終了の笛が鳴るまで、90分間続いた。最終スコアは0対7。



 勝った日テレ・ベレーザはこれで7勝2分け。着々と首位を固めている。前回の苦戦が嘘のような快勝を収めた松田監督は、口元に笑みを湛えながらも兜の緒を締めた。

「(「後は差を開くだけですか?」)いやいや、この先も毎試合、分からないですから。結果的には現在首位を走っていますけれども、1試合1試合きっちりやっていかなければいけない。リーグ戦は何が起こるか分かりませんので、課題をひとつずつクリアしていかなければいけません。それは選手も感じています」

 メモリアルゴールを挙げた澤も「チームの優勝が最大の目標なので、それに少しでも貢献できるように、この後も続けていきたい」。昨年たった一度の失敗で全てを失ったことを、良い経験にしている。またいっそう激化してきたポジション争いが、チーム内に緊張感をもたらしている。松田監督が言うように、何かを成し遂げたわけでも、何かを勝ち取ったわけでもない。ただ、リーグ優勝への最短距離にいることだけは間違いない。



スタジアムの出口は、日テレの選手たちからサインをもらおうと行列に。
 一方、チーム創設以来最悪の大敗を喫した岡山湯郷。本田監督は「ハラワタが煮えくり返っています」と地団太踏みながら、若い選手たちの課題を数え上げた。「私が目指すサッカーを相手にやられてしまいました。でも『サッカーってこんなに楽しいんだよ』『日本一になるためには、こういうチームに勝たなくちゃいけないんだよ』ということが、今日いらっしゃった大勢のお客さんに分かってもらえたと思います。そして、ウチの選手たちもそれを感じてくれたと思います」。

 こんな展開になれば真っ先に試合を投げてしまっていた宮間は、最後まで真摯にプレーを続けた。課題とされていたメンタル面の成長が、そこに垣間見える。「いやあ、敵ながらベレーザのやっているサッカーに、思わず顔がにやけてきちゃいましたよ。『ああ、こんなサッカーができたら本当に楽しいだろうな』って。試合中なのに」。そして、くすっと笑った後で「もう一回やれますからね」。

 木っ端微塵に吹っ飛ばされたチームは、100日後、どこまで食い下がれるのだろう。







(岡山湯郷Belle) (日テレ・ベレーザ)
GK: 福元美穂 GK: 小野寺志保
DF: 安田邦子、藤井奈々(80分/山崎由加)、城地泰子、佐藤シェンネン DF: 岩清水梓、宇津木瑠美、四方菜穂(39分/近賀ゆかり)、中地舞
MF: 福原理恵(57分/杉本あすか)、北岡幸子(72分/赤井歩)、中田麻衣子、宮間あや MF: 川上直子、酒井與惠、伊藤香菜子(82分/南山千明)、澤穂希
FW: 加戸由佳、田中静佳 FW: 永里優季(72分/泉美幸)、大野忍
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