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 頑張れ!女子サッカー 05/07/08 (金) <前へ次へindexへ>
ケガもカードも乗り越えて、連続100試合出場達成。

 小さな選手の大記録。
 走り続ける新甫まどかの100試合

 取材・文/西森彰
「感想? 今日の試合についてですか?」

 記録達成のコメントを貰おうとすると、すぐにこの人らしいセリフが返ってきた。6月26日(日)、加古川陸上競技場で「L・リーグ100試合連続出場」という素晴らしい記録が生まれた。この偉業を達成したのはTASAKIペルーレFCの新甫まどか。今年、L・リーグ9年目の彼女は身長147cm、この大記録とは対照的な小柄な体の持ち主だ。真夏の日中でも90分間、危険なスペースに目を光らせ、ピッチ所狭しと走り回る彼女の姿は「新鋭駆逐艦」と呼ぶにふさわしい。

 ダブルボランチの一角としてTASAKIの舵を取る。相方の柳田美幸が攻撃型のボランチということもあり、彼女に求められるのは幅広い守備エリア。相手の攻撃時には、ワイパー役として危険地帯に急行する。今シーズンはゆったりとした攻撃も織り交ぜ始めたが、もともと縦に速いサッカーがTASAKIのチームカラー。同じボランチとしてのプレーでも、他チームより数割増しのスピードとスタミナが必要とされる。

 どちらかと言えば地味な役回りの新甫だが、三冠を達成した一昨年は表舞台での活躍も見せている。静岡県で行なわれた「わかふじ国体」では監督登録(選手を監督との兼務登録にしておいたほうが有利なため)され、実質上のキャプテンを務めた。そしてワールドカップ組の抜けたチームと宝塚バニーズレディースSCのメンバーを上手く融合させ、兵庫県成年女子代表を2年連続優勝に導いた。

 翌春に行なわれたシーズン最後の全日本女子サッカー選手権では、準決勝で虎の子の1点を奪っている。「あれは、たまたまですね。自分のところでマークがいなかったんで、本当に触れば良いだけだったので取れたような点です」とこれまたそっけないが、詳しいシチュエーションがスラスラ出てきたくらいだから、本人にとっても印象に残るゴールだったのだろう。

 結局、このゴールで決勝戦に駒を進めたTASAKIは、国立霞ヶ丘陸上競技場で日テレ・ベレーザをPK戦で破り、リーグ戦、国体とあわせて、シーズン三冠を達成している。



新甫のゴールが三冠街道を照らした(ピンク・右20番)。
「今回の記録については、まだ、そんなに実感はないです。毎試合、自分の仕事をこなそうとしてやってきたんですけれども、いつの間にか凄いことになっていて驚きました」。周りから見れば気が遠くなるような時間も、新甫にとっては一日一日の積み重ねから。この記録にしても、本人はもちろん、監督はじめチームの誰もが全く気付かず「シーズンの途中でサポーターの方から教えられて初めて気がついた」(仲井昇監督・TASAKI)という。

 夏場でも日中に試合を行なうL・リーグ。一社会人として昼過ぎまでの仕事をこなしつつ、コンディションをベストに保つことの難しさは言うまでもない。企業チームのTASAKIは登録選手数が限られているため、それぞれのポジションでなかなか替えが効かないところもある。一度レギュラーまで辿りつけば常時出場が叶う反面、少々のケガでは休むこともできない。

 ケガだけではなく、警告や退場などによる出場停止も連続出場の敵。自分よりふた回りほど大きな相手にも負けないハードマークは彼女の武器。そのエマージェンシータックルで毎年のように、累積のリーチはかかっていた。仲井監督も「毎年、シーズン終盤になると『あと1枚で出場停止だな』って計算しながら使っていたりしたんですよ」と綱渡りを認める。それでも新甫本人は、運を天に任せていつもどおりのプレーを続けた。

「カードは精神的に結構マイナスになるんですが、それでプレーが変わってしまったらチームのためにならないと思っているので」

 実際、この日の対戦相手である岡山湯郷Belleの2トップと宮間あやへのパスコースを消しまくり、大勝に貢献する一方で、試合終了間際の87分にイエローカードを貰っている。「あまり『100試合』っていうのばかりを意識しちゃって、自分のプレーができなくなっちゃってもまずいと思って。まあ、そう言いながらも、今日はデキが良くなかった(笑)」。新甫は「100標識」もマイペースで通過した。



両親にこれまでの感謝を込めて花束を贈る。
 埼玉栄高校2年の時に、全国高校女子サッカー選手権優勝も経験していた新甫だが、この頃から身長という壁が立ちはだかり始める。Sサイズの体が嫌われ、日本の最高峰であるL・リーグに挑戦しようとした彼女に声をかけるチームは皆無。わらをも掴む思いで受けたのが、夏に行なわれたTASAKIのセレクション。これに合格してようやく道が開けた。

 同じくらいの上背でサッカーをしていた少女時代は分からなかったが、L・リーグに入ってからは、まともに行っても体格差で負けることに気付かされた。必然的に新甫は頭を使うようになっていく。仲井監督は、頭脳的なプレーを身に付けた新甫の成長を認め、2年目の秋からレギュラーで起用するようになる。1998年10月18日。それがこの大記録のスタート地点だった。

 それから8年が経つ。試合後に行なわれた記録達成セレモニーでは、今のチームメイトだけではなく、たくさんの人たちが新甫を祝福した。昨シーズンでGKを引退し、今シーズンから、グッズ販売や試合運営などチームを裏から支えている大西めぐみ。OGとなっている同期生。わざわざTASAKIのユニフォームに着替えて顔を見せた岡山湯郷の北岡幸子。それぞれがそれぞれの立場で祝福の言葉をかけていく。

「今まで使ってくれた仲井(昇監督・TASAKIペルーレFC)さん。今まで支えてくれた私のサッカーに関係してきた方々。社長をはじめ会社の皆さん。そして、周りの選手たちにとても感謝しています」

 セレモニーの最後に姿を現したのは、埼玉から足を運んだ新甫の両親だった。「本当に親には感謝しています。こうやってサッカーをやらせてくれたのも親ですし、本音では大学に行って欲しかったと思うんですけれども、自分が『リーグでやりたい』と言ったら、それを理解してサッカーを続けさせてくれた」。高校卒業と同時に西へ巣立っていった娘は、この節目の日、感謝を込めて両親に花束を贈った。



 おりしも、日本サッカー協会は、世界で戦えるフィジカルを持った少女たちの英才教育「スーパー少女プロジェクト」をスタートさせた。実際に合宿でスキルアップできる参加者だけでなく、広く世間に向けたパブ効果を狙ったこのキャンペーン。日本人の平均身長そのものも一時代前よりワンサイズ大きくなっている。いずれは他の競技と同じように外国人と比しても見劣らない体格の持ち主が増えていくのだろう。

 しかし、どんなに体格に恵まれていてもハートが弱ければモノにはならないし、逆に、少々体格に恵まれていなくても、高いセンスと強い意志、そしてたゆまぬ努力が揃えば一流選手になる可能性は残されている。それを新甫がこうして証明してくれている。

「確かに国際試合などでは、身長の差も大きいのかも知れない。でもそれが全てではなくて『サッカーは頭を使ってやるものだ』ということを教えてくれる指導者にめぐり合えました。別に体の大きさがなくても何とかなる部分はいっぱいありますし、これからサッカーを始める小さな子供たちにも『体が小さくてもサッカーはできる』ということを伝えていきたいです」

 新甫まどか、身長147cm。リーグ戦101試合連続出場中(2005年7月3日終了現在)。
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