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 頑張れ!女子サッカー 05/07/24 (日) <前へ次へindexへ>
初タイトルへ向けて、さあ出発。

 なでしこジャパン、「マチルダ」を逆転で降す。
 KIRIN WORLD CHALLENGE キリンチャレンジカップ2005 なでしこジャパンvs.オーストラリア女子代表

 取材・文/西森彰
2005年7月23日(土)15:00キックオフ 西が丘サッカー場 観衆:4,191人 天候:晴
試合結果/日本女子代表4−2オーストラリア女子代表(前3−2、後1−0)
得点経過/[日本]永里(27分、44分)、大野(43分)、酒井(67分)


 後半の残り15分くらいだったろうか。西が丘サッカー場は強い揺れに襲われた。4,191人が詰め掛けた観客席からはざわめきが起こる。しかし、ピッチ上にいるレフェリー、そして両チームの選手たちは震度5の地震の中でもプレーを続けた。

「地震? 気がついたよ。立っていてグラグラしていたもん。選手は『気がついていない』ってい言っていたけれども、俺は気がついていた。でもどうしようもないし。貴重な経験をしたね」

 試合後、ミックスゾーンで待ち受けた報道陣の前に姿を現した大橋浩司・なでしこジャパン監督は、笑いながら地震を振り返った。そしてこう続けた。「まあ、こんな試合もなかなか経験していなかったし」。侮れない相手であることは分かっていた。それでも自分たちのミスが原因で、早い時間帯に立て続けの失点を喫するとは、思ってもいなかったはずだ。



 FIFA女子ランキング12位の日本に対し、オーストラリアは15位。順位に開きはなく、通算対戦成績でも日本が負け越している。来る東アジア選手権へ向けて、これ以上ないスパーリング相手と言えよう。

 3月の遠征(1勝1敗)でオーストラリアと2試合をこなし、中心選手が通用することは既に把握している。そこで、大橋監督は若手に経験を積ませることを重視し、フレッシュな選手で守備陣を形成した。大学の必修科目試験を受けるために合宿合流が1日遅れた豊田奈夕葉が右SB。宇津木瑠美が左SB、福元美穂がゴールマウスに置かれた。前方は主力が揃った4-2-3-1のシステム。今日の先発選手の平均年齢は22.4歳。

 対するオーストラリアは、日本よりもさらに若い21.5歳。180センチのFW・キャスリン・ギルを始め、ズラリと長身の選手が揃ったオーストラリアは、先発メンバーの平均身長168.1センチ。日本の162.6センチと比べると5センチ以上の差がある。聳え立つような「マチルダ」(オーストラリア女子代表の愛称)は4-4-2。ボールを持ったなでしこに、激しいプレスで襲い掛かった。

 オーストラリアのプレッシャーにやや臆したか、日本の最終ラインがパス回しでミスを連発した。「お願いボール」を預けられた酒井與惠、柳田美幸のダブルボランチも、なかなか前を向けない。「2トップ、特に11番が速くて。早い時間帯に失点しないようにと思っていたんですけれども、ちょっとバタバタしてしまいました。1点目は私の判断ミスですけれども、早めにラインをもう少し下げるなり対応していれば2点目は防げていたかもしれません」(磯崎浩美)。

 開始14分の先制点は、磯崎の足元深くにボールが入ったところを、オーストラリアのFW・リサ・ディバンナが素早く詰めて奪ったもの。23分の2点目も中央から外に逃げる動きでロングボールを受けたディバンナが、日本DFに足をかけられて得たPK。長身選手揃いのオーストラリアの中で最も小さな156センチの小兵が、日本に2点のビハインドを背負わせた。



合宿の成果は、徐々に結実しつつある。
 ここで大橋監督が勝負に出た。左SBの宇津木を中盤に上げて4バックから3バックへシステムを変更したのだ。代表合宿でも見たことがなかった形なので、大橋監督と選手に確認したが、返ってきた答えは「やったことはない」。それでも指揮官と選手の意識は統一されていた。大橋監督が「『最後の手段として、そういうこともあるよ』と選手には伝えていた」し、選手も十分に理解していたからだ。

 フォーメーション変更に対応できる条件も備わっていた。この日、先発したフィールドプレーヤーのうち6人は、流動的なポジションチェンジがチームカラーの日テレ・ベレーザ所属。最終ラインの3人も最近、豊田はCBを務めることが多く、残りの磯崎、そして下小鶴綾のTASAKIペルーレFCは3バックだ。しかし、それらの好条件を差し引いても、この日のなでしこジャパンの選手たちが見せた対応力は素晴らしいものがあった。

「『相手によってシステムが変わる』というのは監督から聞いていたので、やり辛いということはありませんでした。周りと上手く連携ができてきたように思います」(安藤梢)

 攻撃面では、中盤にひとり増えたことで、パスの選択肢が格段に広がり、ポジションチェンジが容易になった。また、守備面では中央で相手の2トップに豊田と下小鶴がマンマークでつき、磯崎が余る形で仕事がハッキリした。トップ下からボランチ、そして両サイドまで顔を出す澤穂希を中心に、日本が輝きを取り戻す。



 オーストラリアに中国遠征で2戦していた疲労が出始め、試合の流れは一気に逆転した。安藤のFKを柳田が折り返して、永里優季が決めた1点目。DFに挟まれても倒れずに前進した永里のセンタリングを蹴りこんだ大野忍の2点目。そして、澤、大野、安藤らが右サイドを崩した後、中央で最後に詰めた永里の3点目。どれも素晴らしいゴールだった。

 前半にスコアをひっくり返した時点で、勝負はほとんど決していたが、大橋監督は慎重だった。「後半、頭から4バックへ戻すこともできたけれども、相手がどう来るか確認するためにまず3−5−2で行きました」。日本は四分六分の優勢を保ちながら、ゲームを進めていった。そして、67分、左右に振って翻弄した後、最後は中央にいた酒井が蹴り直しのシュートを決めて4点目。

 オーストラリアのトーマス・サーマンニ監督は6人の選手交代を行なったが、日本は本大会のレギュレーションを考えて3人まで。ドリブルで仕掛けられる丸山桂里奈、大谷未央。そして「間」を作れる宮間あや。4−2−3−1、3−4−1−2と移ったフォーメーションは、最後に宇津木を最終ラインに戻したボックス型の4−4−2に。日本は3つのフォーメーションを使い分け、見事な逆転勝利を飾った。



 台形の面積を求める計算式を教わっていなくても、応用力が備わっていれば、三角形の面積を総和し、答えを導き出せる。個人戦術の基本を繰り返し学習してきた大橋ジャパンは、この日、見事に応用問題を解いてみた。

「もともと、どんなシステムでもやれるようにはしてきているつもり。だから、やっているこっちとしては、どんなシステムにしても違和感は無いんですよ。(『個人戦術、ユニットを重視するトレーニングが生きましたね?』)はい。サッカーってそういうもんですからね」(大橋監督)

 一旦解散したチームは3日後に再集合。ディフェンス面の連携やゲームの入り方などの微調整を行なって、日本海を渡る。日本女子サッカー史上初めての公式タイトルは、すぐ手の届くところにある。


(日本女子代表) (オーストラリア女子代表)
GK: 福元美穂 GK: バービエリ
DF: 豊田奈夕葉、磯崎浩美、下小鶴綾、宇津木瑠美 DF: アラギチ、マクシェイ(70分/デービス)、ロイター、ガリオック
MF: 酒井與惠、柳田美幸、安藤梢(76分/宮間あや)、澤穂希、大野忍(65分/大谷未央) MF: ブレイニー(65分/ハーチ)、シェパード(60分/ファーガソン)、ピーターズ、マッカラム(84分/ムノース)
FW: 永里優季(84分/丸山桂里奈) FW: ディバンナ(69分/ウォルシュ)、ギル(87分/ミッチェル)
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